2020年9月、長野県宮田村で、男性が拳銃で撃たれた未解決事件は、2月1日未明、急転直下の逮捕を迎えた。宮城県警と長野・愛知県警の合同捜査本部は、殺人未遂の疑いで全国に指名手配されていた暴力団幹部の55歳の男を、仙台市内で逮捕。事件発生から3年4カ月―。警察などへの取材をもとに、緊迫の1日を記録する。
“住宅街”を封鎖 拳銃使用の“凶悪犯”逮捕
2024年2月1日未明－。仙台市若林区沖野には、何台もの警察車両が集結していた。 “ただならぬ空気”が流れた、未明の住宅街。現場には規制線が張られ、一帯は封鎖。午前4時29分、一人の男が逮捕された。
若林警察署に入っていく、“長野県”ナンバーの車。
乗っていたとみられるのが、逮捕された指定暴力団「絆會」幹部で、金澤成樹こと金成行容疑者（55）だ。
事件が発生したのは、2020年9月28日午後4時45分ごろ。長野県宮田村で、当時48歳の男性が、脇腹を拳銃で撃たれた。この事件で、殺人未遂の疑いで全国に重要指名手配されていた人物が、金容疑者だ。
鳴り響いた爆発音…“まさか銃声”「パンパンと音がなった」
これは、1日午前4時ごろ、金容疑者が住む集合住宅近くの住民が撮影した写真。集合住宅は、捜査用の照明が照らされ、異様な光を放っていた。
警察によると、匿名で「金容疑者と似た人物を見かけた」との情報提供があり、1日午前4時29分、金容疑者が集合住宅に一人でいるところを逮捕した。
捜査関係者によると、結果的に、金容疑者は拳銃を所持していなかったが、最悪の場合、一般市民を人質にした“拳銃立てこもり事件”に発展する可能性もあったことから、他の部屋に住む人全員を事前に外に出したうえで、着手は慎重に行ったという。
集合住宅の近くに住む人たちは、当時の緊迫した様子について、次のように語った。
「パンパンって音が聞こえて、初めて聞いた音だった」「煙が上がっているのも見えた。」
男性が撃たれてから3年4カ月―。事件が動いた瞬間だった。
「2年前くらいに引っ越してきた」 着手前日“防護盾に守られ帰宅”の異様さ…
金容疑者が事件を起こした長野県宮田村と、今回逮捕された仙台市若林区沖野。距離にして、“約400キロ”もある。
金容疑者が住む集合住宅の関係者によると、金容疑者は部屋を借りる際、「金成行」でも、「金澤成樹」でもない名前で借りていたという。つまり、偽名を使った可能性があるということだ。
また、金容疑者が住んでいた部屋に、町内会費の回収に行ったことがある男性は、金容疑者について、「2年前くらいに引っ越してきた。スウェット姿のひょろっとした人」と話す。そして、この男性は、金容疑者が逮捕される前日、「1月31日」の様子も明かしてくれた。「（31日）昼過ぎごろ、金容疑者の部屋の前で、捜査員が『出てきてください』と話していた。」
その日、男性が仕事から帰宅しようとした時、周りには、防護盾を持った警察官が囲んだという。そして、逮捕当日となった1日は、ホテルに避難。不測の事態に備え、まさに、厳戒態勢だったことが分かる。
逃亡から3年4カ月…いくつもの「なぜ」？
警察は、金容疑者の認否について、捜査に支障が出るとして明らかにしていない。
長野県で事件を起こした金容疑者と仙台市を結びつけるものは？
全国に指名手配されながら、なぜ「逃亡」し続けることができたのか？
事件のいきさつは？ 事件に使用した拳銃はどこにあるのか？
長野県警組織犯罪対策課は、「情報を寄せてくれた人、捜査に協力してくれた皆さんに感謝申し上げたい」とのコメントを出した。
また、警察庁の露木康浩警察庁長官は、1日の会見で、事件について、「６代目山口組の分裂を背景として発生した」とした上で、「極めて殺傷能力の高い拳銃を用いて敢行された暴力団特有の事案で凶悪な犯罪」と述べた。その上で「今後、取り調べなどの捜査を徹底して、組織的な背景を含む事件の全容解明、対立抗争の解消に向けて努力してまいりたい」と強調した。
1日午後、金容疑者が潜伏していた部屋に、長野県警が家宅捜索に入った。
拳銃を使って人を殺害しようとした、極めて“凶悪”な事件…。事件の全容解明が急がれる。
（仙台放送）
