プロ職人の動画を見ながら練習

日本の伝統的な家づくりに欠かせない“左官”。

職人の高齢化や担い手不足が叫ばれる中、定着率が大幅に上がった取り組みがあった。
教えているのは動画。

原田左官工業所・原田宗亮社長:
完全にまねをさせることで、いち早く左官の技術の入り口をつかめるようにする。

原田左官工業所・原田宗亮社長

住宅の建設現場で行われている壁塗りの作業。
作業をしているのは、この道40年以上、ベテラン左官職人の中島文夫さんと、入社2年目の見習い西泊智尋さん(19)。

ベテラン職人・中島さん:
そんなに音がするのは、塗り圧が少し薄いから。

見習い・西泊さん:
すみません。

ベテランの中島さんにサポートしてもらいながら、作業を進める。

1人で現場を任されるようになるには、まだまだ修行が必要なようだが、新人の見習いがコテを持って現場の壁を塗ることは、まれなことだという。

『見て覚える仕事の覚え方』

これを可能にしたのは、原田左官工業所などが取り入れている、ある訓練方法。
それは、プロの職人が作業する動画を見ながら練習をする、モデリング訓練。

左官 見習い・西泊さん:
ビデオを見ながら、平らに塗る基礎基本の練習をしていました。

ただ動画を見ているだけのように見えるが、背中で覚える職人の世界では意表を突く取り組みだった。

原田左官工業所・原田社長:
われわれの業界は『見て覚える』ことが全てで、全く教えない業界だった。自分でつかんでいくしかない。(しかし)自分がコテを持って、会社の中だけでも塗った経験があると、先輩について行って仕事を教わる段階のとき、見る目線が違う。『見て覚えるってこういうことなんだよ』と、『見て覚える仕事の覚え方』を知ってもらいたい。

原田左官工業所・原田社長

入社すぐに左官職人の仕事を体験することで、見て覚える目線を学び、上達のスピードも上がったという。

左官 見習い・西泊さん:
現場に行く前までは、養生とか掃除とかに一生懸命になっていたけど、今は、職人のコテの持ち方とか体の動かし方とか、塗る順番とか、意識して見るように変わりました。

定着率が30%未満から90%に大幅増

また、この会社では、終了する期間がばらばらだった一人前の職人になるための見習い期間を一律4年にする独自のシステムを採用
見える目標が、モチベーションや責任感の向上につながる。

この取り組みは、リクナビNEXTが毎年行っている、よりよい働く場を提供する企業を表彰する「GOOD ACTION アワード」を受賞した。

職人の高齢化が進み、若手の職人が不足している「左官業界」。
原田左官工業所では、このような取り組みで、20年前は30%にも満たなかった定着率が、現在では80%から90%になるなど大幅に上がった

原田左官工業所・原田社長:
雰囲気に入り込めないと、技術をつかめないで挫折してしまう子が多かった。
それを、今は会社でちょっと手助けをしてあげている。
そうすると、ベテランの職員たちと20代の若い職人たちとの間がちょっと埋められることになって、若手の人たちが左官の世界にどんどん深く入れるようになっているかなと思う。

テクノロジー使って人材確保と技術継承

三田友梨佳キャスター:
ベテランの背中を見せるのではなくて動画を見せるこの取り組みを石倉さんはどうご覧になりますか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
数年前から例えば数ヶ月で寿司職人になれる「寿司アカデミー」というものが人気になっていましたが、どの産業でももともと言語化が難しかったスキルというものを言語化して誰でもできるノウハウだったりマニュアルにする動きが加速していると思います。

この背景にはもちろんテクノロジーの進化というものがあると思いますが、やはり人手不足というのが非常の大きいと思います。総務省が出している調査を見ても、建設業の現場で34歳以下で働いている人は18.6%しかいなくて、非常に高齢化が進んでいます。
なので技術の継承もそうですし、人をどう確保するかはどの会社においても課題としては大きいのでそういった背景に非常に合ったんだと思います。

三田友梨佳キャスター:
そういった人手不足の中で、若手が早く育つ環境、あとは良い人材をすぐに確保できるというのは会社にとってもいいことですよね。

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
そうですね。職人芸というのはなかなか身につかないと思われてきたわけですが、今回のような取り組みによって多くの人が実は身につけられるとなれば、なり手も増えると思いますし、定着する人も増えてくると思います。

会社としても今回のようなテクノロジーを使ってしっかりと手に職を付けることができるとPRすることによって人材確保もそうですし、技術の継承に繋がっていくと思います。

三田友梨佳キャスター:
そうですね。映像を使うと言葉では表現しきれない動きやコツを伝えることができたり、時間や場所を選ぶことなく予習や復習をできることも大きなメリットですね。伝統の技を次世代に繋ぐこうした取り組みが広がっていくことを期待したいと思います。

(「Live News α」7月20日放送分)