スリップや脱輪、立ち往生、そして、バッテリー上がりと冬は車のトラブルが増える。そうした時に頼りになるのがJAF・日本自動車連盟のロードサービス。JAFの隊員の出動に密着、注意点なども取材した。
一年で最も忙しい時期を迎えているJAFのロードサービス。
JAF長野支部ロードサービス隊・小宮一樹隊員:
「側溝か何かですか?」
作業が終わると、次の出動要請の電話。JAF長野支部の小宮一樹さんはレッカー車で次の現場へ向かう。
小宮一樹隊員:
「ご自宅で踏み外して、車落としちゃったっていう依頼ですね、あとは行ってみないと」

出動①雪でよく見えず脱輪(落輪)
到着したのは長野市戸隠。こちらの家に住む男性が朝、ゴミ出しに行こうと軽トラックを車庫からバックで出したところ、左の後ろタイヤが道幅を越え「落輪」してしまった。
住民:
「(雪で)よく確認できなかったから、もうすこし降りてゆっくり慎重にやればよかったな」

フックにロープを結んでゆっくり牽引。
小宮隊員:
「はい、引っ張ります」
30分後、軽トラックは段差を乗り越えた。
住民:
「けさは、たんと降ってなかったからそのまま出ちゃったから。油断だな。(境目に)ポール立てて気を付けるようにします」

小宮隊員:
「どうもすみません、失礼します」
住民:
「どうもいろいろありがとうございました」
翌16日は朝から雪。JAF長野基地に出動要請が相次いだ。
小宮隊員:
「ご自宅の駐車場だと思うんですけど、雪と砂利が含んだ路面で車が出られなくなってしまったということですね。市内あちこち。ちょっとぐちゃぐちゃしています」

出動②タイヤがスリップ、抜け出せなくなる
向かったのは長野市川中島町。
小宮隊員:
「お待たせしました、これ頭から入っていかれますかね?」
30代の男性が出勤しようと車を発進させたところ、枕木と枕木の間でタイヤがスリップ、下の砂利をかき出して、抜け出せなくなった。

小宮隊員:
「私が引っ張りますと言ったらハンドルを右に、ブレーキと言ったらブレーキかけてください」「引っ張りまーす」
レッカー車で牽引して無事脱出。
小宮隊員:
「あ、枕木、横に入ってるんですね」
依頼した男性:
「ちょうどタイヤとタイヤの間隔ピッタリになっちゃってて、それがよくないと思うんですよ、バックもできなくて」
小宮隊員:
「本当は枕木、縦につけてもらえれば、タイヤの下だけあればいいですよね」
その後も…
小宮隊員:
「どんどん、ご依頼が立て続けに入って、たまってる状態」
出動③坂でスリップし上れず
次に向かったのは長野市戸隠。坂で車がスリップして動けないという内容。
坂の途中、いったんバックして上ろうとしたところ…
出動を依頼した女性(72):
「もう滑って滑って。(雪には)慣れてるんですけど、ここまで滑ったのは初めて」
勾配や道幅から、レッカー車による牽引は難しく、女性の車に積んであったチェーンを巻いて脱出することにした。

この日は風も強く、「ホワイトアウト」状態。吹雪の中、チェーンをつけて…。
小宮隊員:
「これで行ってみましょう」
無事、上り切ることができた。
小宮隊員:
「下るときも、ギア落としてゆっくり下りましょう」
女性(72):
「ありがとうございました」
出動④吹雪で視界不良、縁石に乗り上げる
大きな事故になりかねないケースも。須坂市の県道で、コンビニ店に立ち寄ろうとした車が縁石に乗り上げ、動けなくなっていた。
出動を依頼した男性(54):
「吹雪で見通しが全然つかない状況で。視界が真っ白けだったので、こちらの入り口と縁石の境目がはっきり認識できなくて、それで間違えて乗り上げてしまった」

小宮隊員:
「いきまーす」
タイヤの下にスロープを置いて、ゆっくりと牽引。車は道路へ戻った。
小宮隊員:
「対向車とか、自転車とか、人がいたとかじゃなかったですから(よかったのでは)」
男性(54):
「本当に良かったです」
「焦ったのかもしんないですけど、不注意でしたね。悪天候の時でも慌てないで、自分自身も心がけていきたい」
出動⑤冬、最も多い出動要請…バッテリー上がり
冬の出動要請で一番多いのは雪道のトラブル…ではなく、実は「バッテリー上がり」。
こちらの長野市の男性の車も。
小宮隊員:
「エンジンを始動して、雪かきしてたみたいなんですよね。で、気づいたらエンジンが止まってたというもんですから」
バッテリーの残量を調べてみると、通常12.5ボルト必要なところ、3ボルトしかなかった。
小宮隊員:
「もしかしたらエンジンをかけたつもりが、かけてなくONになってたのかもしれないですね、イグニッションのほうが」
最近の車は音が静か。エンジンがかかったと思い込んでしまったのだろうか。
ジャンプスターターという機械でバッテリーに電気を供給すると…エンジン始動!

小宮隊員:
「このままかけっ放ししてください」
依頼した男性(75):
「運転しちゃって大丈夫?」
小宮さん:
「そうですね、走らせたほうがいいです」
男性(75):
「今となっては…。こちらも早く雪かきしないといけないと思い、(エンジン始動の)確認はそんなにしなかった気がします」
「チョイ乗り」もバッテリー上がりの一因
冬は寒さでバッテリーの容量が減る他、ヒーターの使用などで必要な電気が増える。このため、半ドアやライトの消し忘れで「バッテリー上がり」が起きやすくなる。
さらに…
小宮隊員:
「最近多い『チョイ乗り』ですかね、少しエンジンをかけてすぐに止めてしまう。この時期あるのが、ゴミ出し。ちょっと寒くて量あるので、数メートル、ゴミ収集所までチョイ乗りして上がってしまう」
走行距離が短かったり、長期間、運転しなかったりすると、バッテリー上がりを起こしやすく、1週間から2週間に一度は30分ほど車を運転し、発電するのが良いという。

大雪の際は「立ち往生」に注意
大雪の際は立ち往生にも注意が必要。今季一番の寒気が襲来した1月24日、岐阜県の名神高速道では大雪のため車が立ち往生し、解消まで18時間がかかった。
長野県内でも2014年2月、豪雪により軽井沢町の国道で一時約400台が立ち往生。解消まで3日余りかかりった。
JAFは降雪地域では万が一に備えて防寒具や長靴、手袋、ロープ、非常食などを車に常備するよう呼び掛けている。また停車中は、排気ガスの車内流入で一酸化炭素中毒にならないよう、マフラー周りを除雪し、排気ガスの逃げ道をつくる必要があるとしている。

トラブルを回避するには…
信州の長い冬。
最後にトラブル回避のアドバイスを小宮さんにしてもらった。
JAF長野基地ロードサービス隊・小宮一樹隊員:
「やっぱり皆さん急ぐのは、朝の出勤時、また帰りも早くという気持ちがあると思うが、心にゆとりを持って、運転も速度を出さない、慌てないというのが非常に大事だと思います。『急がば回れ』ということわざは非常に重要だと。日々運転をしていて作業をしていて感じます」

(長野放送)