JAXAは無人探査機「SLIM」が、ピンポイント着陸に世界で初めて成功したことを発表した。月面着陸には民間企業の技術が多く活用され、宇宙ビジネスの中で日本が存在感を示す期待が高まる。

「100m精度のピンポイント軟着陸」

日本初となる月面着陸に成功した無人探査機「SLIM」について、JAXAはピンポイント着陸に世界で初めて成功したことを明らかにした。

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JAXA 国中均理事:
100m精度のピンポイント軟着陸に成功したことを確認しました。

これは1月20日未明、日本初となる月面着陸に成功した無人探査機「SLIM」を超小型の月面探査ロボット「SORA-Q」が撮影した画像。

JAXAは25日に会見を開き、SLIMが目標地点から55m付近に着陸し、ピンポイント着陸に世界で初めて成功したことを明らかにした。

ピンポイント着陸後に撮影された月面の画像
ピンポイント着陸後に撮影された月面の画像

また、その後に撮影した灰色の世界が広がる月面の画像も公開した。

宇宙開発は民間企業が手掛ける

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

海老原優香 キャスター:
今回の月面着陸、どうご覧になりますか。

早稲田大学ビジネススクール教授 長内厚さん:
SLIMは電力に問題はあったものの、これは新しい技術チャレンジのため、仕方ない部分もあるかと思います。なにより、世界初の誤差100m以内のピンポイント着陸に、約3~4mの誤差で成功したことは大きな成果といえます。

海老原優香 キャスター:
宇宙という舞台で、改めて日本のものづくりの力を示すことができたようにも思います。

早稲田大学ビジネススクール教授 長内厚さん:
ピンポイント着陸を成功させるためには、緻密な軌道計算をするコンピューターやカメラ、エンジン、電池など、様々な技術が高性能である必要があります。
例えば、SLIMに搭載されているコンピューターは三菱電機。カメラはIHIグループの観測機器メーカーの明星電気、エンジンは三菱重工とIHI、その他、太陽光パネルはシャープ、リチウムイオン電池は古河電池と、多くの技術を日本メーカーが手掛けています。

海老原優香 キャスター:
宇宙開発に、まさにオールジャパンで挑んだ訳ですね。

早稲田大学ビジネススクール教授 長内厚さん:
今回、SLIMに多くの日本の民間企業の技術が用いられただけでなく、SLIMを打ち上げたH2Aロケットも三菱重工が打ち上げを担当するなど、民間企業の活躍が増えてきています。かつてアメリカが「アポロ計画」で行った宇宙開発は、国家の威信をかけた大プロジェクトでした。それが今、民間企業が宇宙開発の主役を担う形に変わってきました。
今後、宇宙は単なる科学調査の場から、通信などのビジネスの場に移っていきます。ここで、日本企業が活躍できる余地は十分にあるかと思います。

強い技術で日本企業が輝ける宇宙市場

海老原優香 キャスター:
宇宙ビジネスという世界的な競争の中で、日本が存在感を示すことができるといいですね。

早稲田大学ビジネススクール教授 長内厚さん:
日本のエレクトロニクス産業は、失われた30年で存在感が薄くなったといわれています。それが、今回の月面着陸がそうであるように、まだまだ宇宙などの新しい市場で、強い技術を示すことができると思います。この技術の力に加えて、ビジネスの力をしっかりつけることで、宇宙ビジネス時代に日本企業が輝くことを期待したいです。

海老原優香 キャスター:
日本の技術力が、世界に認められるのは誇らしいと感じますし、大人だけではなく、子どもたちも科学や技術への興味をもったり、新しいことに挑戦する大切さに気付く、そんなきっかけになってくれそうです。
(「Live News α」1月25日放送分より)

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