感染すると手足の壊死を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもある「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」。30%という高い致死率から通称“人食いバクテリア”とも呼ばれるこの病気が、今、急増しているといいます。
この記事の画像(14枚)国立感染症研究所によると、2023年の国内患者数が941人となり、1999年の調査開始以降、過去最多となりました。
長崎大学 森内浩幸教授:
命に関わる確率が非常に高い。そして、悪くなるそのスピードがものすごく速い、そこがやはり怖いところだと思います。
軽いけがのはずが「右脚切断」に
約8年前に “人食いバクテリア”に感染したという、和歌山県田辺市に住む、加藤恵子さん (60)。そのときの経緯を伺いました。
加藤恵子さん:
(バイクで)右に行こうと思って、蹴って発進したらそのまま転んで。大きな事故じゃないんです。打撲で(病院に)行くのは恥ずかしいと思って、我慢してたんですよ。
仕事中にバイクで転倒した加藤さん。すね周辺から出血はあったものの、痛みはそれほどなかったといいます。しかし、けがから3日痛みが消えず、4日目になると…。
加藤恵子さん:
もう歩くのも痛い。脚も曲げられない。パンパンで腫れて、(その次の日に)自分の部屋2階なんですけど、2階から階段降りられない。足つくのも痛いって感じで。
不安になった加藤さんは、けがから5日目にして初めて病院へ行きますが、検査の結果「打撲」と診断されました。
そのとき撮影した写真を見ると、ふくらはぎが腫れ上がり、内出血もしているように見えます。加藤さんの症状はさらに悪化、この翌日、けがから6日目には病院に搬送される事態に。
加藤恵子さん:
朝から嘔吐と下痢とではいながら、トイレに行っても座っていられないんです。お昼くらいに母に「救急車呼んでほしい」って言って、そこから意識ないんですよ。
次に加藤さんが目を覚ましたのは、けがから8日目のこと。
加藤恵子さん:
先生に起こされて「このままだと命がなくなるよ。でも、右脚を切断したら助かるかもしれないけどどうする?」って言われて、ちょうどそのときに足下に娘がいて、泣いて「お母さん脚なくなってもいいから生きていて」って言われたのが聞こえて、先生に「脚切断してください」って私が決めたので。目が覚めたらここから(太ももから先)なかったんです。
加藤さんは現在、義足で生活。約8年たった今でも、週2回、リハビリを続けているといいます。
患者増加の理由は?有効な対策
初期症状による診断が非常に難しく、感染経路もまだ明確にわかっていないという “人食いバクテリア”。どのように対策すればいいのでしょうか。
人食いバクテリアの感染者の治療にあたった経験もある、長崎大学の森内浩幸教授は、昨今患者件数が増えている理由について、こう推察します。
長崎大学 森内浩幸教授:
昔に比べてこのような病気の認識が高まって、診断がきちんとつくようになったということはあるかもしれません。また溶連菌(溶血性レンサ球菌)の中でも、劇症化を起こすものが知らず知らずのうちに、増えている可能性もあるかもしれません。それから、そういうばい菌に私たちが強く反応しすぎるような、そういうような免疫反応をする人が増えてきたのかもしれませんけど、実際の所はよく分かっていません。
――けがをしたときに気をつけることや対策は?
長崎大学 森内浩幸教授:
けがをしたときというのは、溶連菌に限らず、破傷風であれ、なんであれ気をつけないといけないことがあります。傷口は清潔に保つ、それから喉に入ってくる場合、他にも色々な感染症と同じように、マスクをしたり手洗いうがいをしたりという対策が、全てのことに有効に働くと思います。
(「めざまし8」1月23日放送)