能登半島地震の被災地では、17日から中学生だけの「集団避難」が始まります。故郷に残るか、離れるか…それぞれの決断です。

離れる決断をした中学生「またここに戻ってきて、ここで生活したい」

16日朝、石川県珠洲市の最低気温は氷点下1.2度を観測しました。屋根に降り積もった雪が強い風に吹かれて、空に舞っています。被災地に、無情の雪です。

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元日の能登半島地震から半月、死者はこれまでに222人。今も1万6000人以上が避難生活を余儀なくされています。

輪島市の中学3年生、小住優太さん(こすみ・ゆうた 15)は、17日からの集団避難に向けて、勉強道具や日用品をカバンに詰めていました。

小住優太さんの父親:
お守り。後で家族の写真もスマホに送るから。頑張ってこいよ

小住優太さん:
行ったことのない所に行くというドキドキと、家族と離れるという不安、いろいろあります。こんなに長く離れるのは初めてです

輪島市では、学校の再開の見通しが立たないことから、希望した生徒の集団避難を決定しました。市内の中学生401人のうち保護者が同意した250人が、17日から約2カ月間、白山市の施設で共同生活を送ります。

小住優太さん:
ここ(輪島)よりも落ち着いて(勉強が)できそうなので。輪島高校に行きたいです。またここに戻ってきて、もう一度ここで生活したいなって

小住優太さんの父親:
勉強はもちろんなんですけど、団体生活とかも身に付けて、今後の生きる力になってくれれば私はいいかなと考えています。こんな状態なので、一緒に暮らしたい気持ちはあります。だけど本人も勉強したいという話もあったので、今回行かせるにあたって嫁とも話して、笑って送り出してやろうと

被災地に「残る」決断をした中学生もいます。

珠洲市内の中学3年生・山元浩花さん(やまもと・ひろか 15)で、将来は看護師を目指しています。

山元浩花さん:
生物の勉強をしています。難しいです。今まで学校に行って当たり前のように質問とかできていたんですけど、この状況になって塾も行けない状態で、質問する人がいないので難しいなと

第一志望の試験日は1月30日。受験勉強は今が大詰めですが、浩花さんの通う中学校は避難所になっていて、授業は再開されていません。

自宅の電気は復旧したものの断水は今も続いていて、川の水を毎朝くんでトイレに使っています。

珠洲市では、自宅の倒壊などで学習が困難な中学生を集団避難させることを計画していて、保護者へのアンケートを行っています。

入試まであと半月、浩花さん親子も決断を迫られました。

山元浩花さんの母親:
(受験の)力をつけていく時期なのに、それができないから。親としてはこの子にストレスを与えないように、ただ勉強できる環境を整えてあげて。この子ならやってくれると思って、それを信じて

話し合いの末、浩花さんが出した答えは…。

山元浩花さん:
私は行かない方に決めました。家族のサポートがあってこそ、今の自分が勉強できているのもあるし、家族といることが自分の一番の今の幸せなので。震災の心の傷は消えませんけど、家族の存在で補っているという感じですね。叔父が11月15日に亡くなったんですけど、叔父の願いが私の看護師姿が見たいという願いだった。天国の叔父にも恥ずかしくないように、立派な看護師になりたいなと思いました

故郷に残るのか、離れるのか…。1人1人が難しい決断を迫られています。

(東海テレビ)

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