年明けに街を襲った北九州市小倉北区の鳥町食道街での大規模火災。軒を連ねる飲食店など36店舗、約2,900平方メートルを焼き、通報から40時間以上もかかって鎮火に至った。身近にある木造店舗の密集エリア。地域を取材すると防火対策の難しさと複雑な問題が浮き彫りになってきた。

木造店舗密集の危険性

鳥町食道街と同じ小倉北区の旦過市場で起きた2度の大規模火災を受け2022年、消防庁は木造の建物が密集し、大規模な火災につながる可能性が高い地域を「重点防火指導対象地域」に指定するよう全国の消防本部に通知。

しかし鳥町食道街のエリアは、防火性の高いビルに囲まれていることなどから対象地域に指定されていなかった。

火災があった現場 鳥町食道街の一角だけが焼け落ちている
火災があった現場 鳥町食道街の一角だけが焼け落ちている
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一度、火の手が上がると一気に燃え広がる危険性を持つ木造建物の密集地域。福岡県内では、重点防火指導対象地域に指定されている地域だけでも226カ所に上り、相次ぐ大規模火災に不安の声は広がっている。

飲食店街「三角市場」でも募る危機感

福岡市中央区の西鉄薬院駅の近くにある飲食店街「三角市場」。狭い敷地に30ほどの飲食店が軒を連ねている。

火災に見舞われた北九州市の鳥町食道街と同じく、戦後の闇市がルーツ。70年以上に渡り、多くの人に愛されてきた。木造店舗が密集し、天井はアーケードでつながっている。

「肉大将」松尾淳也店長:
鳥町食道街の火災は自分たちにも起こり得ることなので、「やっぱり怖いな」というのが正直な感想でした。消火器を使ったり、あとは市場に防災のベルとかもあるので、それを使って一刻も早く避難できるようにというのを意識しています

三角市場の組合長を務める老舗バーの店主、板東武士さんは相次ぐ大規模火災に危機感を強めている。

「三角市場協同組合」板東武士組合長:
身近に感じますよね、ああいう建物は、特にね。アーケードのなかで密集してるじゃないですか。例えばここで火が出たからって、ここだけでは済まないからね。「だーっ」と火は屋根を走りますから

各店舗はもちろん、市場の通路にも消火器や火災報知器を設置しているが、一度火の手が上がれば延焼は避けられないと考えている。これまで大きな火事は起きていないが、調理場以外にもタバコの不始末や漏電など火災につながリスクは少なくない。

また、市場全体で防火意識を共有するにも営業時間が夕方から深夜にかかる店舗も多く、日中は休んでいたり仕入れに出たりと、店主が時間を合わせられないこともままある。そのため、まとまって話し合いをする時間を設けることが難しく、協同組合の板東組合長、自ら各店舗を回り、消火器の確認をするという。

「三角市場協同組合」板東武士組合長:
明るい時間は銘々いらっしゃらないしね。開店時間帯になるとお客さんも入ってあるし、なかなかそういう話はね、しにくいですしね。銘々が気をつけてもらわないと、当たり前のことですけどね、速く消火作業できる体制をとっておかないとね

一方で、火災に見舞われた商店街が直面するのが再建の難しさだ。

大規模火災で消滅した商店街

2008年4月、福岡・飯塚市の中心地にある飲食店街「樽屋町」の空き店舗から火が出た。

アーケードのある商店街から1本入った通りで火事は起きた
アーケードのある商店街から1本入った通りで火事は起きた

隣接する商店街の店舗などに延焼し、合わせて10棟33軒、約4,000平方メートルが焼ける大規模火災となった。樽屋町も木造の建物が密集する昔ながらの飲食店街だった。当時の被災者・小畠満さんは、樽屋町で本格的なイギリス式のパブを営んでいた。

火災から16年…店舗などはほとんどない
火災から16年…店舗などはほとんどない

「パブ・コーヒーエン」小畠満さん:
うちの店舗はこの辺にありました…、この家は当時、なかったですね。この家はなかった。通りに煙が充満して、真っ黒な状態で消防車も入れない状態だったから

店は全焼したが、常連客らの助けもあって、火災から4カ月後に元の店の近くで再開し、いまも営業を続けている。

火災後、飯塚市は焼けた樽屋町周辺を24億円かけて再開発したが、ほとんどの店が同じ場所での再建を断念。樽屋町だけでなく、隣接する商店街ひとつが結果的に消滅してしまったのだ。

「パブ・コーヒーエン」小畠満さん:
時計と記録の碑を作って何かこう、「火災を記憶に残さないかん」と。小さい土地が集合していた場所ですから、まとまりがなかなかつかなくてね。なかなかこうまとめて、こんなに形ができるまで時間がかかったけど、難しいと思いますよ

地域のにぎわいを取り戻すためにも再開発は必要だったと小畠さんは考えているが、地域の顔がなくなってしまったことについては、寂しさもにじませる。

「パブ・コーヒーエン」小畠満さん:
本当に残念ですよね。いままでやっていたところが、やめられるっていうのはね。ましてや樽屋町は、筑豊地区で一番古い繁華街で、結構、有名なクラブとかもやめられましたからね。残念でしたけど、それも仕方ないのかな

小さな火が瞬く間にその地域全体を飲み込み、消滅させてしまう危険性を持つ木造店舗の密集地域。風情を残しつつ、対策をどう進めればいいのか。地域住民の苦悩は続く。

(テレビ西日本)

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