1日に発生した能登半島地震では携帯電話の基地局が被災し、石川県などの一部で音声通話やデータ通信が利用できなくなり、緊急時の連絡に不安を残した。そんな時に活躍する「公衆電話」。13年前の東日本大震災をきっかけに、非常時に避難所ですぐ設置できるようになり、その役割は改めて見直されている。

便利で欠かせない一方で...

 保有率がいまや9割を超えたスマートフォン。便利な通信手段として生活に欠かせないものになっているが、1日に発生した能登半島地震では、石川県などで通信障害が発生するなど、緊急時の連絡に不安を残した。

公衆電話に並ぶ人たち(東日本大震災の発生当初)
公衆電話に並ぶ人たち(東日本大震災の発生当初)
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 実は2011年の東日本大震災でも携帯電話がつながらない状況が発生していた。そのときに市民が頼ったのが公衆電話だ。当時は地震発生から15時間以上が過ぎても、安否の連絡をしようと公衆電話に並ぶ人の姿は絶えなかった

「災害に強い」公衆電話 3つの特徴

NTT東日本によると、公衆電話には3つの特徴があるという。

「通信規制の対象外」であること。
 災害によって通信量が増えると、通信が渋滞する輻輳(ふくそう)という現象が起きる。そういった状況を防ぐため、大規模な災害時は発信規制がかかり一般電話からの通話はできなくなるが、公衆電話については110番や119番などの緊急通報と同様、優先電話として扱われ通信規制の対象外となる。

「停電しても通話できる」こと。
 公衆電話機にはNTTからのケーブルもつながっていて微弱だが電気が送られている。停電のとき、ディスプレイ表示は消えるものの、通話はできるという。ただ、スマートフォンのバッテリー残量がなくなると、通話したい相手の電話番号を確認することも難しくなるので、予め家族の電話番号などをメモして共有しておくことが大切になる。

「災害救助法が適用される大規模災害時には無料で通話ができる」こと。
 東日本大震災で初めて災害時無料化の措置が発動された。当時、岩手・宮城・福島では2011年3月11日から4月14日まで無料化されたほか、元日の能登半島地震でも石川県など対象地域で公衆電話無償化が実施された。

(NTT東日本・西日本)
(NTT東日本・西日本)

 このように、まさに「災害に強い」公衆電話だが、スマホなどモバイル端末の所持率の増加による公衆電話の利用機会の減少などで、街頭からは少しずつ姿を消している。2000年に全国でおよそ71万台あった公衆電話は、2021年には2割以下のおよそ14万台となった。

震災の経験から広がる「特設公衆電話」

 13年前、家族の安否を知るために必要不可欠だった公衆電話。通信手段は、食料や水と同じくらい大切なもので、この震災の経験をもとに設置が広がったのが、「特設公衆電話(災害時用公衆電話)」だ。

 松島町の指定避難所になっている松島中学校も、特設公衆電話を設置している場所の一つ。

松島中学校の「特設公衆電話」
松島中学校の「特設公衆電話」

 こちらでは通話線を格納しているボックスが、体育館の外に設置されている。使用までの手順は、脚立にのぼってボックスのカバーを開け、中にある通話線を体育館の中に引き込む。その後、体育館の中に移動して、電話機本体に電話線をつなぐ。

 たったこれだけの簡単な作業で災害時用の公衆電話として利用できるようになる。記者が実際に接続を体験してみると、10分かからずに作業が完了したという。

「街頭」から「避難所」へ 変わりつつある在り方

 特設公衆電話(災害時用公衆電話)は、東日本大震災を機に避難所に予め設置する形となり、13年前と比べて、回線数は全国で10倍近くに増えた。宮城県内には現在、1000カ所以上に設置され、誰でも避難所から安否確認ができるようになっている。

 街頭から避難所へと設置場所が変わりつつある公衆電話。どこにあるかはNTTのホームページで確認することができる。公衆電話が災害時に果たす役割はこれからも大きなままだ。

(仙台放送)

仙台放送
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