2度目の冬を迎えた、ロシアとウクライナの戦い。終わりが見えない戦争が続く中、日本にも影を落とす新たな懸念が出てきた。

ロシアが“北のミサイル”使用 北朝鮮にとってのメリットは

この年末年始は攻防が激化。ロシア軍がミサイルやロケット弾で猛攻をしかけたのに対し、ウクライナはドローン攻撃の映像を公開した。

撃ち込まれたミサイルの残骸
撃ち込まれたミサイルの残骸
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こうした中、ウクライナ第2の都市ハルキウの検察庁が、年明けに撃ち込まれたミサイルの残骸についての分析を発表。「ロシアのイスカンデルか、そっくりなミサイル」としつつも、「ロシアなら責任の所在を示すため、工員の名字と部品に番号を書くが、どちらの特徴も一致せず、イスカンデルより直径で10mm大きい」としたうえで「北朝鮮のミサイルかもしれない」と結論づけた。

ハルキウ検察庁は「北朝鮮のミサイルかもしれない」と結論づけた
ハルキウ検察庁は「北朝鮮のミサイルかもしれない」と結論づけた

これに先立ち、アメリカ国防総省のカービー戦略広報調整官も4日、「北朝鮮は最近、ロシアに発射装置と数十発の弾道ミサイルを提供し、1月2日夜、ロシアは複数の北朝鮮の弾道ミサイルをウクライナに向けて発射した」と発表した。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
ロシアは、砲弾やロケット弾の不足を補うために2023年から北朝鮮に依存していると言われています。北朝鮮にとっては、ウクライナという戦場で、北朝鮮のミサイルが、兵器としてどれだけ有効か実戦を通して知ることができるメリットがあります。

「射程約900km」の脅威

今回の会見で、カービー戦略広報調整官は、発射されたミサイルについて「射程は約900km」だと言及。種類には言及しなかったが、説明ボードの画像の1つが、北朝鮮のKN-23短距離弾道ミサイルだった。

説明ボードの画像の1つは、KN-23短距離弾道ミサイルだった
説明ボードの画像の1つは、KN-23短距離弾道ミサイルだった

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
これまでKN-23は爆薬などを最大700kg積んだときの射程が500kmとされています。仮にKN-23を900kmも飛ばしたとすると、手段として考えられる一つが、ミサイルの積載量を減らして軽くして飛距離を延ばすことです。

火山31は、重量200kg以下になる可能性
火山31は、重量200kg以下になる可能性

KN-23については、北朝鮮が2023年3月に、新型の火山31戦術核弾頭の搭載ミサイルにする計画を発表した。火山31は、重量が200kg以下になる可能性が指摘されている。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
積載量を軽くして射程が500kmから900kmに伸びれば、北朝鮮からミサイルを発射した場合に物理的には西日本が届く範囲に入ってきます
。遠くウクライナでうごめく日本の安全保障環境を揺さぶりかねない事態に注目しています。
(「イット!」1月14日放送より)

能勢伸之
能勢伸之

情報は、広く集める。映像から情報を絞り出す。
フジテレビ報道局上席解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。