家族の愛に包まれ産声をあげた赤ちゃん。この誕生が、話題になっている。なぜなら…山間の小さな集落で生まれた、52年ぶりの命だから。地区の人たちに見守られ、すくすくと成長している。
冬は5世帯の小さな集落
福島県の奥会津・金山町。山間部にある太郎布(たらぶ)地区は、夏は8世帯、冬は雪の影響でさらに少ない5世帯が暮らす小さな集落だ。
この記事の画像(11枚)移住した青沼さん一家
お邪魔したのは、2020年に移住した青沼さん一家。山梨県出身、夫の大さんは元々田舎暮らしに憧れていたという。
移住先を見つけるため、大学を卒業後に全国を旅する中で金山町と出会った。大さんは「塩分と鉄分と炭酸泉が好きで、それ一か所で全部それが入っている温泉あるって聞いて」と話し、移住を決断する決め手となったのが、豊かな自然が生み出す「恵まれた泉質」だったという。
2023年11月女の子が誕生
さらに移住してすぐに妻の恵美子さんに出会い、2023年6月に結婚。11月には元気な女の子が誕生した。「玉來(たら)」と命名。大さんは「僕ら夫婦のもとにきてくれたというのはあるけど、この場所に来てくれたんだろうなというのもあって。それだったら太郎布というところから音を取って」と名前の由来を教えてくれた。
地区で52年ぶりの赤ちゃん
金山町役場によると、出生届けの保存期間が過ぎているため正式な記録はないものの、太郎布地区の出身者を調べると玉來ちゃんは52年ぶりに誕生した赤ちゃんだという。
自宅出産 地区の人も大喜び
「太郎布で産みたい。家で安心して産んでみたい」という恵美子さんの希望で、福島県外から助産師を呼び自宅で出産。地区は想像以上の喜びに包まれた。近所の人は「みんな喜んでいますよ。可愛い、この前も抱いて」と嬉しそうだ。
家族3人 自給自足
2人から3人の生活に変わっても、この場所での暮らし方は変わらない。青沼さんの自宅から、近くのスーパーやコンビニエンスストアまでは車で約40分かかる。そのため、ほとんどを自給自足で賄っている。風呂や洗い物など、生活用水にしているのは沢水だという。
店で買うのは醤油や豆腐など必要最低限のもので、それ以外は自分たちで育てた野菜や米を食べている。「床下とかに白菜とか大根をしまうといいぞって、近所のばあちゃんに教えてもらって」というように、近所の人たちから保存方法などを教えてもらい、生活の知恵としていかしている。
自宅も自らリフォーム
青沼さん一家が暮らす家。大工の手伝いもしている大さんが、ここ数年で腕を磨き空き家をリフォームした。材料は、大工の仕事で出た廃材を使ったという。
みんなに育ててもらっている
この家に生まれてきてくれた玉來ちゃん。近所の人から、おむつや肌着の差し入れが届くなど地区の温かみは増すばかりだという。
恵美子さんは「皆さんが気にかけてくれて、色々教えてくれたりして。みんなで育ててもらっている感じがして本当にありがたい」と話す。大さんは「家族全体でやりたいことをやりつつ、上手に暮らせたらそれが一番いいですね」と話した。
何でも揃う便利な世の中だからこそ、薄れつつある自給自足と地域の助け合い。金山町太郎布地区で半世紀ぶりに生まれた新たな命が、その大切さを教えてくれている。
(福島テレビ)