瀬戸内の魚をメインに展示している広島・廿日市市の宮島水族館。中でも、生きたタチウオを見られる水族館は全国でも数少ない。ところが、美しい立ち泳ぎ姿で来館者を魅了してきたタチウオの展示を中断する事態に…

“刀”のように立ち泳ぐ姿で来館者を魅了

宮島水族館である異変が起きている。スナメリと並ぶシンボルとして力を入れてきた「タチウオ」の展示が一時中断されているのだ。

宮島水族館 飼育総括・御薬袋聡さん:
タチウオには、うろこがない。魚はうろこで体を守っているので、うろこがないということは傷つきやすい。飼育自体も難しいですが、生きたまま運んでくるのが難しい魚です

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非常にデリケートな反面、薄暗い水槽の中で、背びれをヒラヒラとさせ立ち泳ぐ“刀”のような姿を見られるのは全国でも数少なく、多くの来館者を魅了してきた。

2017年頃から漁獲量が激減

しかし、ここ数年、瀬戸内海の異変が水族館にも影響を及ぼしている。

宮島水族館 飼育総括・御薬袋聡さん:
2016年までは1回採集に行けば100匹ほど捕れていたが、2017年頃から減ってきて、2023年は漁師さんと漁に出ても、10匹なんとか捕れるかなという状況ですね

瀬戸内海でタチウオの生息数が減少。農林水産省の統計からも、広島におけるタチウオの漁獲量は、2012年~2021年の10年間で、約10分の1まで激減していることがわかる。

広島市中央卸売市場 吉文・曽我敬一さん:
もう絶滅危惧種ですよね。近海のタチウオが入ったら珍しい。「わあ、地物じゃ」という感じで

“入手困難”で展示を一時中断

宮島水族館では、タチウオを1年中見られる“周年展示”をウリにしてきたが、入手困難で2023年に一時中断を余儀なくされ、2024年も再び中断する深刻な状況だ。

宮島水族館 飼育総括・御薬袋聡さん:
漁場にタチウオが入り次第になりますが、5月頃に戻ってきてくれれば捕りに行こうかという話をしています。タチウオはすごくきれいな魚ですし、広島が誇る魚の1つですので、生きた姿を見ていただきたいというのが望みですね

一方、タチウオがいなくなった水槽にはアオリイカを展示。

加藤雅也 キャスター:
泳ぐイカの姿を見ることも珍しいですから、これはこれで新鮮ですね

水族館では珍しいイカの周年展示にも力を入れており、当面の間はアオリイカが優雅に泳ぐ姿を見てほしいということだ。

(テレビ新広島)

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