最大震度7を観測した能登半島地震。

予期せぬ大規模地震災害に我々はどう備えれば良いのか。
緊急地震速報が発表された時に取るべき行動について、防災システム研究所の山村武彦所長に聞いた。

「玄関」が1つの安全ゾーン

ーー緊急地震速報や揺れを感じたら、どう行動する?

第1は、自分のいる場所がどんな場所なのかを瞬時に判断して、身の安全を図ることです。

自宅にいる場合は、目の前に火を使ってるストーブやコンロがあればすぐに消しましょう。
少し離れていたら、わざわざ消しに行く必要はなく、揺れが収まってから消せば良いです。
揺れている時に無理に動くとケガをする危険性があります。

防災システム研究所・山村武彦氏
防災システム研究所・山村武彦氏
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まずは自分の身の安全が優先です。
転倒・落下物が少なく、ガラスから離れた、閉じ込められない、家の中の“安全ゾーン”に移動しましょう。

私が勧めるのは、「玄関」が1つの安全ゾーンです。
あまりモノが置いてなくて、いざという時にはドアを開ければ避難経路が確保できる場所です。

閉じ込められないようにすることが大事で、万が一に備えて「我が家の防災ルール」を決めておくと良いです。出来れば、非常持ち出し袋やヘルメットを玄関に用意しておくことも大事です。

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そして、とにかく靴を履くことです。
地震の後は、ガラスが飛び散っている危険性が高く、多くの人が足にケガをして歩けなくなってしまいます。

そういうことがないように、まず靴を履く。

夜間の寝ている時の地震に備えて、ベッドの近くにスリッパやスニーカーなどを置いておき、それを履いて脱出することも大事です。

そして、ベッドやドアの周りには極力モノを置かないこと。

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ーー外にいる場合は?

例えば、電車のホームやコンコースなどでは電光掲示板や照明器具などの落下物に注意が必要です。

できれば丈夫な太い柱の陰でしゃがんで様子を見て、次の大きな揺れに備えて今より少しでも安全な場所に移動することも大事です。

大揺れになってからだと、動けない、歩けない状態になり、動こうとするとかえって危ない場合があります。

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電車に乗っている場合は、つり革や手すりにしっかり捕まって、できれば体を低くして、大きな揺れが来るのに備えます。

立っているよりもしゃがんでいる方がケガをする確率は低いです。
そしてできればガラスから離れてください。

こうした行動を普段からシミュレーションして、「ここで地震があったらどうするか?」「地下鉄に乗っている時はどうするか?」を考えておくと、自ずと答えが見つかります。

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ーーしゃがんでいる方がケガをするリスクが低い?

家の中でも外でも同じですが、人間は表面積を小さくすればそれだけ負傷する確率が低くなります。

モノが落下してきた時に標的である自分が小さくなっていれば、当たる確率が低くなるわけです。

また、列車が暴走してくる可能性もあるので、ホームであれば線路側から少しでも離れた場所で、落下物の少ない所を選んで身を小さくしてかがみ、バッグなどで首筋や頭を守ることが大事です。

阪神淡路大震災 約87%が下敷きに

こうした中、これまで地震と言えば「机の下に隠れる」が常識とされてきたが、木造家屋など状況によっては違った行動をとる必要があると山村所長は話す。

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ーー家の中だと机の下に避難するのが有効?

昔から学校などでは避難訓練で、「地震=机の下」というのが1つの反復行動で行われていますが、それは“絶対”ではないです。

安全な建物の中であれば、机の下に身を隠すのも良いですが、耐震性の低い木造の古い建物の1階に居る場合は、机ごと潰される可能性があるので、脱出した方が安全です。

建物の耐震性の強度に応じて、小さな揺れの段階で行動が起こせるように、各家庭で緊急地震速報が鳴ったらどうするかのルールを決めて、“我が家の防災訓練”を定期的に行うのが良いと思います。

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ーー昔の常識が変わってきている?

関東大震災を教訓に、「机の下」や「家具の近く」への非難を推奨していますが、昔の常識は今は絶対とは言えません。

阪神淡路大震災では、亡くなった人の約87%が建物の下敷きで犠牲になっています。

熊本地震でも、古い木造家屋の1階が倒壊して亡くなっているケースが多く、その人たちは家の外にいれば助かった可能性があります。

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首都直下型地震が発生した場合には、阪神淡路大震災や熊本地震と同じような激しい揺れが襲う可能性があります。

そうすると、古い木造家屋の1階は非常に危険です。机の下に潜っても家が潰れれば終わりです。

一方、建物が安全であれば、机の下に潜るのも良く、全てはケースバイケースです。

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ーー外に避難する時の注意点は?

瓦やガラス、看板などの落下物でケガをすることがあるため、ヘルメットをかぶったり、クッションで頭や首筋を守りながら避難することが大事です。

頭と首筋は、人間の1番のウィークポイントです。
頸動脈が切れると出血多量で死にますし、頸椎が折れたりすると重傷を負いますので、そうならないように少しでもクッションなどで衝撃を和らげることが大事です。

「地震が起きたらどう動く?」をルール化

万が一の備えについて山村所長は、家具の固定化からスマホの充電場所などを含め、「すべての防災対策は事前対策」だと強調する。

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ーー日ごろから心掛けたいことは?

生活している場所や行動している場所について、普段から「地震が起きたら自分はどう動いたら安全なのか」をシミュレーションしてほしいです。

心の中で反芻して、書き出してみると、緊急地震速報が鳴った時にすぐに行動できます。

人間は何か突発的なことが起こると、それが地震だとわかっていても、何をして良いのかがわからなくなってしまいます。
ほとんど茫然自失状態になってしまう可能性があるのです。

そうならないためには、普段から心の中で自分の行動ルールを決めておくといいと思います。

ガラス飛散防止フィルム(イメージ)
ガラス飛散防止フィルム(イメージ)

ーーマンションでの対策は?

耐震性の高いマンションであれば、マンションそのものが倒壊する危険性はないと思いますが、ドアが変形して閉じ込められる危険性はあります。

ですから小さな地震の揺れを感じたら、玄関のドアを開けて避難路を確保しておくことは大事だと思います。

すべての防災対策は事前対策です。
家具をしっかり固定したり、ガラスには「ガラス飛散防止フィルム」を貼ること。

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そして枕元には防災セットを置いておく。
スマホを机の上で充電していたら地震の揺れで吹っ飛んでしまい、そこに物が落下したり停電になれば探せません。

一番大事なスマホや携帯電話が使えないと困りますから、箱の中に入れて充電し、そこには懐中電灯や財布、家や車のカギなどを入れておけば、いざという時にそれを持って脱出できます。

そういう工夫を事前の準備として行うことが大事です。