ひな人形は、時代とともに進化している。3月の節句を前に広島でひな人形の販売展示会が開かれた。新たなデザインのひな人形を生み出す、その過程を追った。

「雛博」でオリジナルの人形を披露

広島で開かれたひな人形の販売展示会は、その名も「雛博(ひなはく)」。

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販売されているひな人形は、ここ数年で大きく変化している。

2023年、大人気だったひな人形は、なんと顔を描かないスタイル。これは、家のインテリアに溶け込むようにわざと顔を描かないのだそう。

他に人気なのは、伝統的なひな人形と比べると小顔で鼻が高く、鼻筋が通ったイケメン顔のものだという。

この販売展示会、会場の演出を担当するのは広島のギフト専門店「大進」の田村雅紀さん。

2023年からイベントの名前を「雛博」にし、会場の演出も大きく変更した。

大進・田村雅紀さん:
今のお客さんがライフスタイルにあう物を買いたいというときに、昭和感がある中で買うのかと言われてしまうと、それではモチベーションが上がらないと思う

田村さんには、さらに先を行く構想があった。

大進・田村雅紀さん:
素材からどういった色合いにするかとか、どういった色とのコンビネーションにするとか。戦略的に、最終的にどういった雰囲気の商品を作るかまでを考えて動いています

大進・田村雅紀さん
大進・田村雅紀さん

海外の生地でこれまでの常識を覆す

「オリジナルのひな人形を作りたい」という田村さんの計画は、2023年のイベントが終わった直後からスタートした。

大進・田村雅紀さん:
2023年に人形を選んで台びょうぶをうちでセットアップしたものが、初日から飛ぶように売れた。あれをちょっと目指したい

着物は表の生地と重ねの部分に分かれていて、田村さんは外国製の生地を使おうと決めた。

Q:外国の生地を使うことは、これまであったのか?
大進・田村雅紀さん:
たぶん人形師的にはタブーだと思います。買い求める人たちは、特に若いママさんたちは伝統的な柄でなければいけないという発想もないですし、こうでなければいけないという置き方もしない

田村さんが作りたいのは、これまでになかった全く新しいひな人形だという。
大進・田村雅紀さん:
作りながらもまだ売れるかどうか未知数なので
Q:心配ですよね?
もちろんすごく心配ですよね

今までの節句業界には一切ない商品

人形が完成に近づいたのは、2023年7月の上旬。発注していた人形のパーツが出来上がってきたが、田村さんの表情が冴えない。

着物の柄や色と人形の後の生地の色が、合わないことが気になっていた。

大進・田村雅紀さん:
こっちから色を決めて送った方がよさそうですね

1つの作品として、全体的のバランスをどう取っていくのか?人形を乗せる台やびょうぶの色や質感も大切なポイント。改善が必要な点はすぐにスタッフを呼んで確認する。

スタッフ:
この間、安っぽいという指摘を受けたので、ホワイトアッシュ2色のツキ板を見に行ってもらっています

人形の顔は「頭師(かしらし)」という専門家が作る。国内有数の名人に顔をお願いした。

大進・田村雅紀さん:
頭師さんなので何千通りという顔があるんです。その中でイメージした顔を選ばせてもらった。

細面に鼻筋の通った今風のイケメン。

大進・田村雅紀さん:
次の段階で今回指摘した部分が修正されれば、ほぼ最終形には近くなってくるかな。今までの節句業界には一切ない商品になってくると思う

1月5日、全国から500点以上の作品が集まった展示即売会「ひな博」が初日を迎えた。

田村さんが気にしていた、ひな人形の背中の色バランスも改善された。

大進・田村雅紀さん:
今まで節句業界になかったものを作りたいという中で、業界で初めてというくらいのものを作っています

オリジナルひな人形は好評

お客さんが田村さんの作品に興味を示した。

客:
すごくさっきから気になっていて、着物でも、4種類どれもいい良さがあって迷いますね。和もありつつ、着物が他のものとちょっと違う気がします。最初に会場に入って来た時に母がいいなと言ったのがこれでした

大進・田村雅紀さん:
親子そろって気に入っていただいてありがたいです

田村さんの挑戦は今、実を結び始めている。

Q:お客の反応がたのしみですね?
大進・田村雅紀さん:
我々は他にはないオリジナルのもので、みなさんにお届けできるように今回準備していますので、期待を込めて来ていただければと思います

時代の変化とともに姿を変えるひな人形。顔や服、台びょうぶまでのデザイン、色彩をどうアレンジするか、そのプロデュース力でオリジナルのものを生み出す挑戦が続く。

(テレビ新広島)

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