近年、大麻所持などで検挙される若者が急増している。
去年、日本大学アメリカンフットボール部で複数の部員が大麻を所持したり、譲り受けたとして逮捕。
さらには大麻に似た成分を含むグミ、いわゆる「大麻グミ」で体調不良を訴える人が続出するなど、大麻関連のニュースが世間を騒がせた。
以前から大麻については「体への害」や「依存性」などについてさまざまな主張がなされ、情報が錯綜してきたが、何が本当なのだろうか。
法科学研究センター所長の雨宮正欣さんと、薬物依存者の支援をする木津川ダルク代表の加藤武士さんが「大麻とは何なのか?若者に広がる理由」について語った。
大麻とは?大麻に含まれる有害物質
――そもそも大麻とはどういうものなのか。
大麻とは「大麻草」という植物から作られるもので、種子や成熟した茎は規制対象外ですが、花穂、葉っぱ、根などは麻薬取締法により規制されています。この区別されている部分は、どういうことなのでしょうか。

雨宮正欣さん:
いわゆる有用な部分、危険な成分が含まれていない部分で、例えば七味唐辛子に入っている種であったり、麻の製品を作るための繊維ということで、茎や種などの部分は除外されている。

――七味唐辛子に入っている大きな粒というのは大麻草の種子なのですね。
雨宮さん:
そうですね。鳥の餌にもよく麻の実が入っていますよね。同じものが七味唐辛子にも入っています。
――摂取方法として、乾燥したものの煙を吸引する「巻きたばこ」は、一般的に知られているかと思いますが、最近はクッキー、チョコレートなどお菓子に大麻成分を入れるという場合もあります。
加藤武士さん:
海外に旅行へ行かれた方で、チョコレートやクッキーを買って来て、その中にTHC(テトラヒドロカンナビノール:大麻に含まれる有害成分)が入っていることもあって、何年か前に事件がありました。

――ニュースになった「大麻グミ」もこの同じ大麻草から取られているものなのでしょうか。
雨宮さん:
「大麻グミ」と言っても、従来流通していたもの、これはCBD(カンナビジオール:大麻草に含まれる成分だが幻覚作用を有さない。
抗不安作用を有するといわれCBD成分を含む商品も販売されている)という成分が入っているグミなのですが、これは大麻そのもの由来で、落ち着かせる、リラックス、そういう目的で使われていた。

最近、話題になっているHHCHは、大麻の中に入っている成分を化学的にちょっと変えて合成したものです。
――植物の大麻ではなく、化学合成してそういう成分にしているのでしょうか。
雨宮さん:
そうです。ですから、名前だけ「大麻グミ」ということが先行していますが、実際の中身は全然違う。もう危険ドラッグになってしまうということ。
THC(テトラヒドロカンナビノール:大麻に含まれる有害成分)という物質は麻薬になっていて非常に害があるが、実はそれよりも30倍とか強い作用を持つと言われている危険な物質です。
加藤さん:
今、サプリメントや食品として流通している、CBDの入ったグミと分けてきちんと見ないといけない。
ごっちゃになってしまっているので、そこがまた余計危険になってしまうというところもある。
大麻が若者に広がる理由とは?
――特に手を出しやすいという意味でも、若者の検挙数が増えている。
「大麻の検挙人数」は、警察庁によると、平成28年は2536人だったのが、令和4年になると5342人と、2倍以上に。
中でも20歳未満の検挙人数を見てみると、210人だった平成28年から、令和4年は912人と、4倍以上に増えています。

加藤さん:
大麻が諸外国で非犯罪化なり合法化されているという、その1点だけの情報をもって、何かしら安全であると思って使おうとする若者が増えてきている。
もう一つはコロナ禍で外国人の往来も減って、同時に(違法薬物の)密輸なんかも減ったんじゃないかなと思うんです。
そこで目を付けられたのが大麻。大麻は国内でも違法に生産・栽培・流通ができてしまう。そういった中で若者が大麻を使い出すことが増えているのではないかと思っています。
雨宮さん:
覚醒剤は一般的に注射を打って使うもの。一方、大麻はたばこの感覚で吸えるなど、ちょっと格好いい感じでハードルが全然違うと思うんです。
決して褒められることではないけども、そういった若者文化になってしまったということも、考えられると思います。
――そして最近大きなニュースになりましたが、運動部での不正な使用が大きな問題になりました。アスリートが使用するということは、どういった目的があるのでしょうか。
雨宮さん:
プレッシャーがうんとかかるようなスポーツ、もしくはそういう選手。
リラックスというか、精神を落ち着かせるために、ということもあったかなと思います。
――運動部の場合は一人が使っていると広がりやすい要素なるのではないかと思うのですが。
雨宮さん:
やはり閉鎖空間ですから、目に届かない。その仲間内だけで秘密にしていればバレないという感覚。
それから先輩と後輩の上下関係で、先輩から勧められたものをなかなか断れないということは当然ありますね。
――どうやって大麻を手に入れているのかは、本当に疑問です。
加藤さん:
多分使ったこともない、知ったこともない人にとっては、全然別の世界なのかと思いますが、一度大麻を使っている人と知り合いになれば、その日から大麻はいつでも手に入るドラッグになっていく。
それ以外にも大麻を使っている人の周りには覚醒剤を使っている人たちもいたり、そんなところでいろいろな薬物が広がっていく、覚えていくことになる。
――昔と比べて今はネット社会というのも関係しているのでしょうか。
加藤さん:
実際、SNSで“あるキーワード”を検索すれば、薬物を手に入れるコンタクトは取れます。その決済方法もネット決済で簡単にできる。
宅配のシステムも非常に便利になっていますから、簡単に手に入れることは、できるようになってきたと思います。
(「週刊フジテレビ批評」12月16日放送より
聞き手:渡辺和洋アナウンサー、新美有加アナウンサー)