晩秋に始まる有明海のノリ養殖。販売枚数、額ともに19年連続で日本一を達成してきた佐賀県産ノリだが、昨季は記録的な不作に苦しんだ。日本一奪還をめざす今季も深刻な色落ち被害がみられ漁の先行きは不透明だ。
この記事の画像(11枚)昨季は”色落ち”で記録的不作
10月27日、午前6時半を過ぎる頃、朝焼けに染まる有明海。佐賀県沖ではこの日、ノリの種付けが行われた。
販売枚数、販売額ともに19年連続で日本一を誇ってきた佐賀県産の養殖ノリ。しかし、昨季は記録的な不作となり、20年連続はかなわなかった。
昨季の記録的な不作の原因は、少雨とプランクトンの増殖による有明海の「栄養塩」の不足。ノリの質が低下する“色落ち”が広がったのだ。
日本一奪還をめざして始まった今季のノリ養殖だが、漁業者の不安は消えていない。
ノリ漁業者(白石地区)森慎二さん:
去年より厳しいです。去年は雨とかで助けられて(出来が)戻ったんですけどね。また最後は色落ちで終わったんですけど。今年はさらに厳しいです
“二枚貝”放流で赤潮を阻止
今年、養殖ノリの不作対策の1つとして行われたのが二枚貝の放流だ。
ノリの成長には海の栄養塩が欠かせない。しかしその栄養塩を食べるプランクトンが増殖し、いわゆる”赤潮”が発生すると、ノリの色落ちの原因となる。このノリの天敵とも言えるプランクトンの増殖を抑える効果が期待されているのが二枚貝。二枚貝はプランクトンを捕食する。
このため県はノリの種付け前の10月25日、1cmほどのサルボウガイ200万個を有明海に放流した。
種付けから約1カ月後の11月28日。二枚貝放流の効果があったのか、佐賀市川副町の漁場で摘み取られたノリは黒々とした上出来。漁業者も胸をなでおろす。
ノリ漁業者(南川副地区)佐々木涼太さん:
栄養塩も安定していて、そこまで(プランクトンの)影響なく育っていると思う。おいしいノリというか、味もあって色もあって、すくすく育っている
ノリの生育に“地域差”
12月8日、今季初めてのノリ入札会が開かれた。
1枚あたりの平均単価は33円90銭で、記録が残る約50年間で過去最高値を更新。販売総額は去年の1.8倍となる32億1600万円だった。
好調に思える入札結果だが、実は喜んでばかりはいられない。高値になった背景には、平成以降2番目に少ない出品枚数があるからだ。
出品枚数が少ないのは何故なのか。
入札会当日、佐賀県有明海漁協の深川辰巳参事は、その理由を“地域差”によるものだと説明した。
その現状を確認するため有明海の佐賀県西部に位置する白石町の漁場に向かった。
深刻な“色落ち”被害の漁場も
そこで目にしたのはノリの顕著な“色落ち”被害。佐賀市川副町など東部の漁場と比べると色の違いは明らかだ。この地区の漁場では過去にも色落ち被害はあったものの、今季は特に深刻だと漁業者は語る。
ノリ漁業者(白石地区)森慎二さん:
(以前は)ここまでひどくはなかったですね、正直。ここまでひどいのは(過去に)ないです
ノリの色落ちは海の「栄養塩」不足によるもの。プランクトンによる赤潮だけでなく、“少雨”も栄養塩不足の大きな要因となる。雨が降れば、栄養塩は川から海へ供給されるが、今年は、ノリ漁が始まった10月、そして11月の降水量は平年の半分以下だった。このため、河口から離れれば離れるほど色落ちの被害が大きい。
“恵みの雨”を祈る漁業者
白石地区だけでなく鹿島や太良など西南部地区の漁場でもノリの色落ち被害は深刻だ。
今季の養殖ノリが例年どおりの出来に復活できるかどうかは今後の天候に左右されると漁業者は語る。
佐賀県有明海漁協 深川辰巳参事:
雨次第で大きく変わってくると思いますので、雨が降ってくれたら色のある良いノリがとれると思っている
ノリ漁業者(白石地区)森慎二さん:
おいしいノリを届けたいんですけどね。雨次第じゃないですかね。しけて雨が降ってくれたら、いきなり戻ることもあるので。可能性は低いですけどね、ここまで来たら。どうにかして助けてくれるものがあればいいんですけど。海況が良かったらみんなやる気も出るだろうし
“恵みの雨”を祈る漁業者。先行きに不安を抱えながら今季のノリ漁は続く。
(サガテレビ)