都内の一つのオフィスを手放した

IT企業「ラクスル」
IT企業「ラクスル」
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平日のお昼前にもかかわらず、がらりとしたオフィス。
ネット印刷などを手掛けるIT企業「ラクスル」は、都内に2つのオフィスを持っているが、コロナ禍でのリモートワーク体制を経て、この会社ではある決断を下していた。

以前は目黒オフィスに200人ほど、五反田オフィスに60人ほどが出社していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、この会社では3月からリモートワークを実施している。

その中で、業務への影響がほぼないことがわかったため、リモートをメインにし、出社は週1回程度にする態勢を10月まで試験的に実施することにした。

ラクスル・松本恭攝代表取締役社長CEO:
そうすると毎日出社しないので、このオフィスの中だけでも十分に人が収まるので解約しようと。

ラクスル・松本恭攝代表取締役社長CEO
ラクスル・松本恭攝代表取締役社長CEO

全社員が出社するスペースが必要ないため、五反田オフィスを解約することに決めた。
それにより、社員の通勤費とオフィス賃料、あわせて月700万円ほどが浮くことになった。

解約で浮いた金は社員に補助金

浮いた700万円の活用法というのが...。

ラクスル・松本代表取締役社長CEO:
半分の350万円分を“リモート手当”と“環境整備のための補助金”として活用する。

社員の生活に変化

リモートがメインになり、かつ、手当てが支給されたことで、ある社員の生活にはこんな変化が。

以前は会社へのアクセスを重視し、都内の6畳ほどの部屋に住んでいた谷香菜美さん。家について、「寝に帰るところ、カプセルホテルのように思っていた」と語っていたが、リモートワークが増えたことで在宅時間が増え、住まいへの考え方が変わったという。

ラクスル・谷 香菜美ん:
くつろげる空間・仕事できる空間もほしいし、寝るときは寝たいし、分けて考えるようになった。

谷さん海に近い神奈川県の逗子に引っ越し、家賃は都内の部屋と同じだが、広さが2.5倍の16畳になった。

ラクスル・谷香菜美さん:
海の近くに住みたいなって昔から思っていたが、会社に出勤するとなるとなかなか行けないので、このリモートワークになったのをいいきっかけに、その夢をかなえてみようと引っ越した。

ラスクル・谷香菜美さん
ラスクル・谷香菜美さん

リモートワーク補助金で環境整備

谷さんは机に大型のパソコンモニターを設置。
これは、オフィス解約にともない浮いた費用で新たに作られた補助金制度を利用し準備したもの。

リモートに必要な家電や家具の購入費が上限2万円まで支給される。
在宅時間が延びたことで気になる光熱費と通信費だが、これらに対してもリモートワーク補助として月5,000円が支給される。

ラクスル・谷さん:
手当出なかったら、エアコン絶対消します!

ラクスル・松本代表取締役社長CEO:
今後、リモートワークをベースにしていくと、デバイスのセキュリティーであったり、オンラインで働く環境作り、ソフトウエアに対する投資は増えていくので、積極的に働けるシステム投資をオフィスが浮いたお金でしていこうと考えている。

働き方が変化する今、新たなお金の活用方法が求められる。

リモートワークには“雑談”も大事

三田友梨佳キャスター:
このニュースについては社員全員がリモートワークで働く(株)キャスター取締役COOの石倉秀明さんに話を伺います。
コロナをきっかけに思い切ってオフィスを無くしてしまおうという大胆な試みですがどうご覧になりますか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
そうですね。周囲の会社でもオフィスの解約を検討している会社は少しずつ増えてきている印象があります。
このタイミングでやはりオフィスの役割を見直していくべきだと思っていて、オフィスで人が行き交うことで偶発的なコミュニケーションが起きることが大きな役割だったと思います。
リモートワークが増えることで、無意識にやってきたことをいかに意図的にできるようにするかが大きな分かれ目のポイントになるのではと思います。

三田友梨佳キャスター:
石倉さんの会社は全員がリモートワークですが、どうやってコミュニケーションをとっているんですか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
オフィスでのコミュニケーションは3種類あると思っていまして、1つは業務の連絡や報告2つ目はカジュアルな相談だったりブレスト3つ目は雑談などと思っています。

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
これがリモートワークになると、2つ目と3つ目の会話がなくなってくることが多くあります。我々も6年ほどリモートワークで働いてますけど、最初の1~2年は、2つ目と3つ目の会話があまり重視されることがなくてコミュニケーションがうまくいかないなということが結構ありました。
今となってはチャットやウェブ会議のツールをフル活用しながら雑談をするためのチャンネルをたくさん増やしたり、仕事以外の会話をするミーティングを増やすことによって工夫をしています。

三田友梨佳キャスター:
そういった工夫が求められるということですが、VTRにもあったような新たなお金の使い方というのはどうお考えですか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
今後は個人個人の働く環境を整える、そこに対して会社が負担していくというお金の流れは加速していくと思います。

三田友梨佳キャスター:
仕事においては先輩や上司の働き方を実際に見て学んだりとリアルな場で学ぶことも大切なことだと思うのですが、テレワークの普及が進むことでコミュニケーションにおける工夫やオフィスのあり方など様々な変化が訪れそうです。

(「Live News α」7月14日放送分)