新年を迎え2024年は「辰年」。十二支の中で唯一実在しない生き物の干支となる。この竜のイメージが強い辰年に、“タツノオトシゴ”を連想する人も少なくないだろう。

しかし、水族館などで展示されているのは見たことがあったとしても、その生態などは詳しく知らなかったりする。

そんな中で東京・池袋にあるサンシャイン水族館では1月1日から1月8日まで「サンシャイン水族館のお正月2024」を開催。干支の「辰」をテーマに“タツノオトシゴ”の仲間や正月をイメージした生き物を飼育スタッフが選び、こだわった水族館ならではの特別水槽で紹介するとのことだ。

提供:サンシャイン水族館
提供:サンシャイン水族館
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水族館を訪れて学ぶのもいいが、今すぐ生態などを知りたいと思う人もいることだろう。名前の由来や種類はどれくらいいる?体の構造や泳ぎ方は?

タツノオトシゴの気になる疑問をサンシャイン水族館に聞いた。

仲間が全世界に50~60種類

ーーまず生態を教えて

タツノオトシゴの仲間は、熱帯、温帯の海に生息している海水魚。「トゲウオ(小さなトゲを持った魚)」という種類の仲間です。トゲウオの仲間の多くは細長い体をしているものが多く、ヨウジウオやヘラヤガラなどの海水魚やイトヨ、トミヨなどの淡水魚もこのトゲウオの仲間に分類されます。

種類によりますが、熱帯~温帯地域、浅瀬の岩場や海藻が生えているエリアで見られます。寿命は、個体差、生息(飼育)環境にもよりますが、おおよその個体が3年前後です。

タツノオトシゴ「オオウミウマ」(提供:サンシャイン水族館)
タツノオトシゴ「オオウミウマ」(提供:サンシャイン水族館)

ーーどうして「タツノオトシゴ」という名前なの?

タツノオトシゴが属するヨウジウオ科タツノオトシゴ属の学名は、Hippocampus(ヒポカンパス)。語源はギリシャ語のHippos(馬)、Campos(海の怪物)が由来とされています。

日本ではタツノオトシゴの姿が「竜」を連想させることから「竜の落し子(タツノオトシゴ)」と呼ばれています。中国語では海馬(かいま・かいば)、英語ではシーホース(Seahorse)と呼ばれ、よく馬に連想されます。

また、「タツノオトシゴ」はタツノオトシゴ属(Hippocampus)として総称で呼ぶ場合もありますが、タツノオトシゴという種類もいます(Hippocampus coronatus)。

種としてのタツノオトシゴでしたら和名としては正式名称ですが、タツノオトシゴ属の仲間たちであれば正式名称ではなくそれぞれの和名が存在します(例:クロウミウマ、タイガーテールシーホースなど)。

クロウミウマ(提供:サンシャイン水族館)
クロウミウマ(提供:サンシャイン水族館)

ーーどのくらいの種類がいるの?

特徴的な見た目から広く「タツノオトシゴ」という名前は知られていますが、全世界には50~60種類のタツノオトシゴの仲間がいます。

日本で見られる種類は、
タツノオトシゴ
タカクラタツ
エンシュウタツ
オオウミウマ
ピグミーシーホース
サンゴタツ
イバラタツなどです。

左:イバラタツ 右:オオウミウマ(提供:サンシャイン水族館)
左:イバラタツ 右:オオウミウマ(提供:サンシャイン水族館)

ーー大きさはどのくらい?

種類によりさまざまです。ピグミーシーホースは約2センチ、ポットベリーシーホースは約30センチで、多くの種類は10~15センチ程度です。

メスが産み落とした卵をオスが保管

ーー体の構造はどうなっているの?

細長い体をしており尾ビレを持たず、尾を使い海中の海藻やサンゴなどに捕まって生息しています。体表は硬い外骨格になっています。魚類の多くは背骨(脊椎骨)に対し水平に頭部が向くのに対し、タツノオトシゴの仲間は脊椎骨に対し垂直に向くことが多いです。

クロウミウマ(提供:サンシャイン水族館)
クロウミウマ(提供:サンシャイン水族館)

ーーどうやって泳いでいる?

一般的な魚類にある腹ビレ・尾ビレは、進化の過程で退化し、タツノオトシゴには付いていません。一般的な魚が推進力を得るのに最もよく使うヒレは尾ビレですが、タツノオトシゴの最も目立つヒレは尾ビレではなく背ビレです。

この形態は、長距離を速く移動するのには適しませんが、藻や海藻が入り組んだ環境で小回りが利く利点があり、遊泳能力は低いですが、主に胸ビレ、背ビレを使ってふわりふわりと泳ぎます。泳ぐ速度は速くありません。首が約90度に曲がっているため、直立した状態であっても顔は進行方向正面を向いています。

オオウミウマ(提供:サンシャイン水族館)
オオウミウマ(提供:サンシャイン水族館)

ーー出産はオスがするの?

タツノオトシゴの仲間は、他の多くの魚類と同じく卵生で繁殖を行うため卵を産み落とします。この「卵を産む」のはメスが行います。オスは腹部に育児嚢という袋状の構造を持ち、メスが産んだ卵をここに収納します。

オスは、この卵が孵化するまで育児嚢に卵を保管し続けるため、孵化した際にはオスの育児嚢から稚魚が飛び出します。

「出産」をどう定義するかによりますが、卵生の生物は体外に卵を産むことを「出産」と表現しているのを見ると「タツノオトシゴはメスが出産し孵化までオスが保管する」というのが正確な表現です。

エサを追いかけて吸い込む瞬間に注目

ーータツノオトシゴを見る時は、どこに注目するといい?

エサを見て追いかける姿、吸い込む瞬間をぜひ見てほしいです。自分もおちょぼ口になっている時があります。

オオウミウマ(提供:サンシャイン水族館)
オオウミウマ(提供:サンシャイン水族館)

ーー何を食べるの?

水族館では1センチほどのプランクトン(イサザアミやアルテミアノープリウスなど)をあげており、目で追いかけて吸い込むように食べます。


ーーどの種類が、一番「竜」に似ていると思う?

タツノオトシゴやタツノオトシゴの仲間では、カリビアンシーホースとタイガーテールシーホースです。

カリビアンシーホース(提供:サンシャイン水族館)
カリビアンシーホース(提供:サンシャイン水族館)

サンシャイン水族館では常設展示で「ウィーディーシードラゴン」「タイガーテール シーホース」「カリビアンシーホース」を見ることができるほか、1日からの干支水槽で「クロウミウマ」を特別展示している。

この機会に水族館で「タツノオトシゴ」について学ぶのも楽しそうだ。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。