派閥の“裏金疑惑”で揺れる自民党。「キックバックは派閥の指示だった」と安倍派の議員が明らかにしました。

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13日、衆院本会議後に記者団の元に姿を現したのは、自民党安倍派の議員で、“裏金疑惑”を受け、交代する見通しの宮澤博行防衛副大臣。

その口から語られたのは、裏金疑惑の“舞台裏”でした。

――報告書の記載について党からどのような指示が?
自民党安倍派 宮澤博行防衛副大臣:

派閥の方から、かつて、収支報告書に記載しなくてよい、という指示がございました。

――なぜ記載しなくてもよいという指示があったか理由は分かりますか?
それは全く分かりません。そういうものなのかな、としか思わなかったですね。正直申し上げまして。

記者団に対し、「キックバックを収支報告書に記載しなかったのは派閥からの指示だった」と説明。

自民党安倍派 宮澤博行防衛副大臣:
何度も申し上げますが、「不記載」ということはおわびしなければいけないかもしれませんけども、厳正に管理をしてきてこの結果(人事)ですか…。ということは、正直大変残念で悔しい思いです。

――どのような立場の人から指示があったのか?
それは分かりません。こういう指示ですということでしたので。私は、そうですか仕方ないなと判断したまでです。

具体的に指示した人の名前について明言しなかったものの、その後、語気を強めます。

自民党安倍派 宮澤博行防衛副大臣:
こうなった以上、正直申し上げます。大丈夫かなとは思いました。
大丈夫かなとは思いましたけどこれで長年やってきているんだったら、適法なのかなと。そういうふうに推測せざるを得ませんでしたので、それの指示に従ったわけです。
はっきり申し上げます。3年間で140万円です。推測でしかございませんが、多くの仲間も早く説明して、身の潔白を証明したいと思っていると私は推測します。

自民党安倍派 宮澤博行防衛副大臣:
ですけれども、はっきり申し上げます。「しゃべるな、しゃべるな」これですよ!多くの議員が多分適正に管理していたでありましょう。パーティー券なんですから。しっかり管理していた。やましいことなんか…不記載はありますけど、使途においてやましい思いで使っている人はいないはずです。ここに至った限りにおいては、もうしゃべるしかない。そう思って決断したわけであります。

――しゃべるなというのは誰から?総理ですか?
総理は違います。派閥の方からでございます。
もうしょうがないですね。ここまで私がしゃべってしまったのも、派閥から追い出されるかもしれませんけど、指示はございました。

もう各議員の判断で動く段階に来ているかもしれません。派閥がみんなそろって身の潔白を証明していこう。ちゃんと修正していこう。そういうリーダーシップを早くとっていただけたならば、私も仲間を早く裏切って説明することはなかったと思います。

「収支報告書不記載は派閥からの指示」だったと明かした宮澤氏。さらに、かん口令が敷かれていたことも明らかにしました。

自民党に激震が走る

「3年間で140万円」の不記載があったと発言した宮澤防衛副大臣。この発言には衝撃が走ったとフジテレビ解説委員の風間晋氏は話します。

風間晋氏:
おぉ…言ったね、と思いましたね。もちろん宮澤議員本人は彼なりの計算や思惑があって、このタイミングで言うことにしたんだと思いますが、他の議員や秘書なんかも、この発言を聞いて「俺はどうしようかな」と考えざるを得ないわけで。そこは身の振り方も関わってきますから、これは激震だと思います。

フジテレビ報道局編集長の平松秀敏解説委員は…。

平松秀敏氏:
特捜部ってすごく怖いんです、狙われたら。特に特捜検事は本当に怖いんです。これから特捜検事が自分の所に押し寄せてくるとなると、おそらく経験は無いでしょうから、あたふたしているというか、混乱しているというか。それが今派閥の中で起きているのではないかと。だからこそああいう発言になったりしているのではないかなというのが、私の率直な感想。

ジャーナリスト 岩田明子氏:
これまでの間も「ちょっとこれおかしいでしょと。本当にこれは不記載でいいですか?」と(派閥に)何度も問い合わせたのに、無回答だったり、あるいは不記載のままで良いという指示を得ていて自分はおかしいと思っていた、という議員や秘書もいるわけです。
そういう状況の中で、派閥からはひたすら「しゃべるなしゃべるな」と言われていて。
最初塩谷座長がうっかり「キックバックはあったと思う」と言って、5時間後に撤回したじゃないですか。あのときもやっぱり、幹部が止めたわけです、撤回しろと。
そういう派閥の運営に対して、非常に不満。国会が閉会した後、地元でどう説明するのか、その統一見解というのも全く示されないで、非常に不満は高まっていますね。だから出て行きたいなという動きもちらほらみられますね。

禁錮刑の裁判にかけられる可能性も?基準“1億円”の理由

宮澤防衛副大臣とその関係者は、今後捜査によってどうなるのか。若狭弁護士によると、まず不記載の額が140万円と少額のため、宮澤防衛副大臣自身は不起訴になる可能性が高いといいます。

逆に、安倍派の事務総長は、不記載が1億円以上あり、指示した証拠があれば、起訴の可能性。会計責任者も、不記載が1億円以上あれば起訴の可能性があります。

元東京地検特捜部副部長で元自民党衆議院議員の若狭勝弁護士は、この“1億円”という金額についてこう説明します。

――不記載が1億円未満だった場合は、逮捕されないということでしょうか?
若狭勝弁護士:

まず、逮捕されるかという問題と、処罰されるかどうかというのは別枠なんですけども、処罰されるかどうかということで言うと、1億円以上とか未満というのは、今までの特捜部の内部的な基準であって、法律で決まっているわけではもちろんないので。
多分もっと悪質性とか、常習性があると、1億円に至らなくても、禁錮刑の裁判にかけられ、起訴されるという可能性はあると思う。国民が今回の案件で、例えば2千万3千万を記載しなかったってだけでも、「それはとんでもないじゃないの」という声が結構多いんですよね。そうすると、今までは1億円以上が禁錮刑の起訴だということで、一応やってきたけれど、国民の声を聞いて特捜部がもっと金額を下げていくと、だから、7千万8千万でも禁錮刑の裁判を求めて起訴するという可能性が、あり得ると。

――宮澤防衛副大臣は立件される可能性は低い?
若狭勝弁護士:
宮澤さんは140万円なので、どう考えてもこれは罰金にもならないと私は思います。
不記載の修正で、一応は書類送検されて起訴猶予という形になるかもしれませんが、いずれにしても罰金にはならないです。

――金額が高い方が、常習性・悪質性があるという考え方は?
若狭勝弁護士:

そもそも収支報告書の不記載というのは、少し形式犯と言われていて、要するに絶対悪では無いんです。記載してさえいれば、何の罪にもならない、犯罪にもならない、そういう性質のものなので、仮にキックバックを受けたお金を本当に政治資金・活動費として使っているとしたら、結局誰も被害を受けていないんです。例えば脱税や何かは、税金をごまかすということになると、税金の収入がそれだけ減るということなので、国民が被害を受けるということなんです。
その意味において、私も特捜部でやっていたときは、収支報告書の不記載というのは、贈収賄とかの実質的な犯罪、悪い犯罪とはグレードが違うという意識でいて、それでも、処罰しなくてはいけないのは、不記載が横行してくるとやがては贈収賄だとか、あるいは選挙買収だとかに使われるから、そういうことを防ぐためにあくまでも収支報告書の不記載を厳しくしましょうという立て付けでやっていたんです。

ですから、金額が多額にならないと。検察が100万円でも200万円でも絶対にダメだと処罰に乗り出してしまうと、結局、政治というものに対して検察が介入して、世直しみたいな。検察権力をどんどん政治に及ぼすというのは、やはり行き過ぎだから、それはよくないという立て付けで特捜部は考えていると思います。
(めざまし8 12月14日放送より)