新潟県内の全市町村に導入されている軽度・中等度の難聴者に対する助成制度。導入率100%は全国唯一だ。
補聴器をつけることで日常生活が快適になるだけでなく、認知症の予防にもつながる。助成制度について医師に聞いた。
補聴器使用する人「聞こえないのは寂しい」
新潟市中央区の大滝耳鼻科クリニックを受診した70代の女性。2年前に購入した“補聴器”を調整していた。
この記事の画像(13枚)技能者:周りの音、もう少しザワザワとした音を抑えてくれる
患者:そうそう、それ。今、上げてくれた?
技能者:今、上がっていますよ。私の声、大きすぎるとかは?
患者:大きすぎることはない。聞こえやすくなった
大滝耳鼻科クリニックには、こうした補聴器の調整に年間1000人程の患者が訪れる。
補聴器を調整した70代の患者は「耳が聞こえなくなったと家族からも言われて、自分も感じていたので。(助成制度は)その時はなかったみたい…金額も金額だから。それでも聞こえないのは寂しいもの」と話す。
購入費用の助成 新潟県は全市町村で導入
今年7月から県内の30市町村全てで行われている軽度・中等度の難聴者に対する補聴器購入費用の助成。これにより、補聴器の購入を検討する患者が増えているという。
「難聴でどうも聞こえないみたいだからということで受診される人は明らかに増えている」こう話すのは、大滝耳鼻科クリニックの大滝一院長だ。
日本耳鼻咽喉科学会の県の理事も務める大滝院長が直接、県内の市町村へ行き、助成費導入を要望した。
「直接、市町村を回ってお願いしたのが大きかったのではないか。“新潟プロジェクト”が注目されて、秋田など、ほかのところでも新潟のように、直接お願いに行こうという方向に、全国的になっている」
全ての市町村で実施している都道府県は全国で新潟県のみ。10県では助成が始まっていない。
こうした中、大滝院長の取り組みは“新潟プロジェクト”として注目され、導入する市区町村が全国で1%台だった4年前から13%台まで増加している。
「やはり、難聴の人には早い段階で補聴器をつけてもらって、日常生活を快適に過ごしてもらうのと、あと認知症を予防していただきたい」
難聴は認知症などが進行する要因に…
大滝医師によると“加齢性の難聴”により、周囲の人との会話が減り疎遠になることで“認知症”や“うつ病”を進行させる要因になることも明らかになっていると言う。
「難聴が明らかに認知症のリスクがあることは証明されている。補聴器をつけることで発症を遅らせて、進行を遅らせる。最終的には認知症患者を減らすことにつながる」
身近な音が聞こえず… 命の危険も
初期の加齢性難聴になると、「ピー」という電子音のような高い音が聞こえにくくなる。
電化製品など身近にある様々な音に反応できなくなると火事を起こす、事故に巻き込まれるなど命の危険にもつながってしまう。
「聞き返す」「テレビの音量が…」 症状出たら受診を
50代から除々に増え、80代では7割以上がなる加齢性難聴。
「高齢になると、全体的に鼓膜の動き、耳小骨の動き、神経全体の機能が落ちるが、 “かぎゅう”という内耳の神経が壊れて起こるのが加齢性難聴で一番多い。内耳の神経が壊れて難聴になったパターンは残念ながら治療できない」
「会話をしている時に聞き返すことがある」「テレビの音量が大きいと言われる」といった症状が現れた時が耳鼻科を受診する目安だという。
「気付いたら早めに耳鼻科に行って、耳を診てもらう。耳垢の場合もあるし、処置をしてもらって良くなればいいけど、良くならない場合は聞こえの検査をきちんとしてほしい。今は助成額が2万~3万円。そんなに多い額ではないけど、助成を使って補聴器をつけてもらいたい。補聴器は15万~20万円。助成額が少ないということで、もう少しなんとかならないかと思っている」
助成制度利用し快適な日常を!
大滝医師は今後も補聴器による効果を伝え、助成額の増額や年齢制限の撤廃について呼びかけていく考えだ。
「ボーっとしていて認知症なんじゃないかというおじいちゃん・おばあちゃんも『補聴器をつけると聞こえた』と反応が全然違う。外にほとんど出かけなかったけど、買い物に自分から行くようになったとか、そういう声はたくさん聞くし、私たちも普段の診療でそういう方はたくさん見かける」
高齢になっても耳が遠いことを諦めるのではなく、楽しく日々を過ごすために…
大滝医師は「新潟県はすばらしい助成制度ができているので、それを使って補聴器をつけて快適な日常を送ってほしい」と呼びかけた。
(NST新潟総合テレビ)