主に夏に流行するとされる「プール熱」だが、この冬の季節でも感染者が増えている。さらに、「溶連菌」との同時流行の様相も見せていて、どちらも過去10年で最多の患者数となっている。 いったい何が起きているのか、取材した。

プール熱の感染者が増加

大阪・岸和田市にある「あぶみ小児科クリニック」では、連日発熱を訴える患者が後を絶たない。

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あぶみ小児科クリニック 鐙連太郎院長:
喉の様子から見るとアデノウイルスか溶連菌かどっちかだと思うんですけどね。

検査をする中で多いのがアデノウイルスが引き起こす咽頭結膜熱、いわゆる「プール熱」だ。

アデノウィルスと診断された子の保護者:
2週間前に(下の子が)アデノウイルスにかかって、目ヤニがすごくて、おかしいなって受診したらアデノ(プール熱)でしたね。

プール熱とは、アデノウイルスに感染することで起こる感染症で、急な発熱、喉の痛みに加え、眼の充血などの症状が見られる病気だ。いま、子供を中心にプール熱が流行していて、過去10年間で最も多い状況が続いている。主にプールの水などを介し流行することから、夏に多い感染症というイメージだが…街でもこんな声が聞かれた。

「この前職場の先輩がなっていた。子供さんから移ったと」「支援センターをよく利用していて、そこですごく聞く」「保育園の先生もはやっていると。この時期に『えーっ』って思いながら」

溶連菌も流行中

また、併せて流行しているのが「溶連菌(ようれんきん)」だ。

母親:
(子供が)こないだなりました。

ーーしんどかった?
子供:
うん。

母親:
同じ小学1年生でなったって聞いて。結構小さい子がなる病気ですよね。6歳でもなるんやなって思って。

主に子どもが感染するいわゆる「溶連菌」A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者も増加している。1医療機関あたりでは3.79人と過去10年間で最も多くなっている。

免疫がない子供はかかりやすい

異例の同時流行となっているプール熱と、溶連菌。その理由について医師は「3年間のコロナが大きかったのではないか」という。

あぶみ小児科クリニック 鐙連太郎院長:
普通にマスクなしで過ごすようになっている。今までだったらマスクしていたら移らなかったが、やはり普通に移るようになった。過去4年間かかっていなかった分、よりかかりやすくなっているというか、基礎免疫がないからかかってしまうのもあると思います。

生活様式の変化によって猛威を振るう病。今気を付けたいこととは何なのか?感染症の専門家、関西医科大学付属病院の宮下修行医師に聞いた。

宮下医師の病院でも、プール熱や溶連菌の患者さんは、増えているのだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
どちらかと言うと小児科の領域の患者さんですから、私自身はあまりみないんですけれども、小児科では非常に増えていますし、特に職員さんのお子さんがかかって困っているということを耳にします。

子どもに多いということだが、大人がかかることはないのだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
大人がかかることはあります。ただ免疫ができているので、かかりにくいだけです。特に心配なのは家庭内での感染ですね。

大人も気を付けないといけないということだ。

プール熱と溶連菌はどういうものなのか

プール熱は正式には、咽頭結膜熱と言うが、プールでのタオルの使いまわしなどで感染が広がったことから、通称「プール熱」と呼ばれている。

プール熱と溶連菌の症状は、高熱やのどの痛みなど共通するものが多いが、プール熱は「目の充血」、溶連菌は「赤い発疹」、この症状が特徴だ。

吉原キャスターの娘も昔、溶連菌に感染したことがあり、舌が真っ赤に腫れて「ものを飲むのも痛い」と言っていました経験があるそうだ。こういう症状も特徴なのだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
非常に特徴的な症状が「いちご舌」と言われるもので、舌が非常に腫れて、赤くなって、そしてぷつぷつとした白いものができるので、イチゴに似ているということから「いちご舌」と言われています。

同時にかかる可能性もある プール熱は予防が大切

プール熱と聞くと、夏のイメージがあるが、いま流行しているのはなぜだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
プール熱の原因はアデノウィルスというウイルスで、これは1年中あります。プール熱というのは、プールを介して、正確に言うとタオルの使いまわしによって、目が充血してしまう。塩素の入ったプールに入ると目が充血してしまうということもあるので、そのような由来から、「プール」という名前がついてしまって、夏のイメージがありますが、年中存在するウイルスと理解ください。

プール熱と溶連菌、両方同時に感染することはあるだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
感染原因となる微生物が全く異なりますので、当然ながら同時に感染することはありえます。

感染した場合の治療を確認すると、 プール熱は対症療法で咳止めや解熱剤などで治療をして行く。 溶連菌は咳止め・解熱剤は共通していますが抗生物質でやっつけるということだ。

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
溶連菌とプール熱の大きな違いは、細菌かウイルスということです。溶連菌の原因は細菌ですので、細菌に対しては、抗生剤が効きます。抗ウイルス薬が効くのは、今はコロナやインフルエンザです。風邪のウイルスであるプール熱のアデノウイルスに対しては、ワクチンや薬がないというのが現状です。

どちらにも有効な、咳止めなどの薬が不足しているという話もあるが、これは大丈夫なのだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
感染症の基本というのは、早期発見・早期治療です。例えば溶連菌だと薬がありますので、早く見つけて、早く治療してあげると、さほど咳は続きません。ただし、プール熱は抗ウイルス薬がありませんので、やはり予防を重視しなければならないということになります。

プール熱の対策 アルコールは効果が弱い

感染しないことが大事ということで、対策をまとめた。

手洗い、うがい、マスク、換気は基本として、
「溶連菌」にはアルコール消毒が有効だ。
「プール熱」はアルコール消毒は効果がなく、次亜塩素酸での消毒が有効だ。

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
今までコロナ対応でとにかくアルコール使ってきました。一般的な微生物にはアルコールは有効ですが、一部の、特にプール熱のアデノウイルスにはアルコールの効果が弱いということがわかっています。その他には、これから流行するノロウイルス、胃腸系のウイルスですが、これも実はアルコールの効果が弱い。この2つは覚えておいていただきたいです。ただし次亜塩素酸は直に付けることができませんので、触ったところを拭くという対策を行っていただきたいです。

特に力をいれた方がいい対策などあるだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
コロナやインフルエンザは飛沫感染ですから、マスクの着用やソーシャルディスタンスというのが一番効果的です。しかしプール熱、溶連菌どちらも接触感染がメインになります。そのため、こまめに石鹸で手洗いを行うことが重要です。子供というのはどうしても顔に手を持っていってしまいますので、マスクも必要になります。手洗いをいかに徹底させるか、それからうがいです。親御さんは、子どもが外出先から帰ってきたときに手洗いを徹底させる。これは重要になってくると思います。

今後はマイコプラズマにも注意が必要

今は、インフルエンザ、プール熱や溶連菌が流行しているが、次に気を付けるべき病気が、中国で非常に大流行している「マイコプラズマ」だという。

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
これは子供を中心に広がる病気ですので、特に学校で広がりやすいというような病気です。これは細菌に分類されますので、適切に診断ができれば抗菌薬がありますので、これは容易に治すことは可能です。マイコプラズマの一番の特徴が咳です。咳が本当に強くて、私も呼吸器外来をやってますので、咳で本当に肋骨が折れるんですね。それぐらいしんどい咳がでるのがマイコプラズマの特徴です。

日本でも、中国のように感染者が増えるおそれは?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
まず日本と中国のやったコロナ政策の大きな違いというのは、中国はゼロコロナ政策をしました。ゼロコロナというのは、感染制御の面からすると、最も優れた効果があります。が、一方で、全く外界との接触が立たれますので、ほかの微生物への免疫がなくなってしまいました。日本はそうではなく、マスクをしながら行動しましょうという考え方でしたので、中国ほど爆発的に流行するということは、ちょっと考えにくいかなと思います。

とにかくこまめに拭き掃除を

家族間で移らないようにする対策を聞いた。

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
コロナのときはゾーニングということが重要でした。これは、いわゆる飛沫感染、ソーシャルディスタンスというのが大切でしたけれども、アデノウィルスや溶連菌に関しては接触ですから、とにかくこまめに掃除をする。または子供が触ったところを拭く。これと手洗いが一番重要になります。

子供が2回、溶連菌にかかると、菌は何種類もあるのだろうか?

関西医科大学付属病院 宮下修行医師:
菌は実は何種類もありますけれども、1回で免疫ができない方は2回、3回もかかります。これは子供の体質にもよってきますけれども、1回かかったから安全だという考え方は、やめていただきたいと思います

寒さも厳しくなる季節、皆さんも体調管理にはくれぐれもご注意いただきたい。

(関西テレビ「newsランナー」2023年12月1日放送)

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