千葉ロッテマリーンズの本拠地・ZOZOマリンスタジアムの場内アナウンスを33年間務め、今季限りで卒業する谷保恵美(たにほ・えみ)さん(57)。アナウンス人生の中で印象に残っている試合を教えてもらった。

“幕張の奇跡” 球史に残る同点アーチ
「やっぱり、CSファイナルステージ進出を決めた試合ですね」
2023年10月16日クライマックスシリーズのファーストステージ、ソフトバンクとの第3戦。ロッテは3点を追う延長10回ウラ、先頭の角中勝也が追い込まれながらも粘って粘って10球目をセンターへ弾き返し出塁、さらに続く荻野貴司が内野安打で、ランナー2塁1塁に。
本塁打が出れば同点の場面で、打席には藤岡裕大。初球を振り抜いた当たりはライトスタンドへ一直線、まさかの起死回生の同点スリーランが生まれた。
さらに奇跡は続く。ホームランの余韻が冷めやらぬ中、最後は安田尚憲のタイムリーで、ロッテは劇的な逆転勝利。ファイナルステージ進出を決めた。
「ファンの応援もすごく熱くて、その中で最後に逆転勝利をして。チームはもちろん、ファンの皆さんの笑顔、全員の笑顔が見られたという共有感が印象的で忘れられないです。歓喜ってものではなかったです(笑)」
佐々木朗希 プロ野球史上最年少で完全試合達成
「もう1つは、去年の佐々木朗希選手の完全試合ですね」
2022年4月10日オリックス戦で、令和の怪物・佐々木朗希が史上最年少(20歳5カ月)で完全試合達成。さらに13者連続三振、1試合19奪三振など記録ずくめとなった日。
現場は慌ただしかったようで、当時をこう振り返る。
「佐々木投手がとにかく三振を取っていたので、とてもスピーディな試合だったんです。なので『これって新記録じゃないの!?』って話す暇もなく、スタッフみんなでバタバタしました(笑)。最後、佐々木投手が杉本(裕太郎)選手を三振に仕留めた瞬間の、球場の熱気は忘れられないです」
俺たちの福浦和也 通算2000安打達成
「あとは、福浦選手の2000安打がマリンで達成だったので、とても印象に残っています」
現・ヘッドコーチ兼打撃コーチを務める福浦和也さんは、2018年9月22日の西武戦で通算2000安打を達成した。
「みんなで福浦選手の2000安打をあと3本、2本、1本とカウントダウンしていました。FUKU-METERというものを作って何十本も前からカウントダウンしていました。いよいよラスト1本になってホームの試合でマリーンズファンの前で達成したのは印象的でした。福浦選手のプロ入り初ヒットもマリンだったんですけど、1本目も2000本目もマリンで見られたのがすごく感慨深かったです」
鳥に占拠されたZOZOマリン
「ハプニング的な意味で印象に残っているのは、去年の渡り鳥(笑)」
それはまさに大珍事。2022年9月20日のオリックス戦で鳥の群れが球場内に飛来したため、試合が21分間中断となった。
数十匹の群れがスタジアム内を飛び回り、グラウンドに降り立った。照明を落とし、音響装置で鳥の鳴き声やバズーカ音を流す対応を取ったが効果はなし。しかし、角中勝也がバットを片手に追いかけ回すと、鳥はすぐさま退散していった。
「審判さんが来て、どうする?どうする?ってなって、とりあえず球場の電気を消すとところから始まって、それがダメで…。大きな音や鳥の鳴き声の音を出してもダメで…。そんな中、角中選手が登場しただけで渡り鳥が居なくなって(笑)。20分くらいの中断でしたが、とても長く感じました(笑)」
ウグイス嬢・谷保さんの心に残る、ロッテの試合の数々。来季は、ロッテからどんな名場面が生まれるのだろうか。
