11月29日、鹿児島県の屋久島沖でアメリカ軍所属のオスプレイが墜落した。搭乗員1人の死亡が確認されたが、11月30日時点で残る7人の捜索は難航、長期化が予想される。突然起きた米軍機による事故は、国防の波が押し寄せる鹿児島に何を突きつけているのだろうか。

当初は「墜落事故」と発表も…

今回のオスプレイ墜落事故。
事故直後の現場海域上空には、別のオスプレイが飛行している様子も分かる。

事故直後、視聴者が撮影した映像の一部
事故直後、視聴者が撮影した映像の一部
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突然、降りかかった米軍機の事故に、関係各所は対応に追われた。捜索にあたる鹿児島市の第10管区海上保安本部には対策本部が設置され、職員が対応に追われた。

鹿児島県危機管理課にあるホワイトボードの情報も、次々に更新されていく。

墜落現場に近い屋久島空港には、別のオスプレイの乗組員とみられるアメリカ兵の姿もあった。

これまでも度々、鹿児島県内で緊急着陸を繰り返してきたオスプレイだが、県内で事故を起こしたのは今回が初めてだ。当初「墜落事故」と発表してきた10管は29日夜のタイミングで表現を変えた。墜落ではなく「不時着水」。

10管本部の担当者は「防衛省からそういう見解が出されたので、統一見解になり『不時着水』に修正した」と説明した。

その防衛省では29日夜、宮澤防衛副大臣が「最後の最後までパイロットが頑張っていたということですので『不時着水』という言葉でございます」と述べた。

2転、3転する情報

当時、船の上から事故の一部始終を見ていた人は、当時の状況をジェスチャーを交え証言した。

船上から事故を目撃・中島正道さん:
ぐるぐると3回転。横にぐるぐる回って、それからオレンジ色の光がパッと見えて、そのまま海に落ちていった

この状況は果たして墜落か、不時着水か。専門家の見解は…。

元運輸安全委員会・統括航空事故調査官 楠原利行さん:
墜落ですね。我々の世界では墜落ですよ。不時着というのはけが人も出ずに、機体の損傷もなく、水の上に接地する。今回の事故を不時着とは言わない。防衛省だから、日本の国民感情からしても、気を使ってああいう(不時着水という)表現になったと思いますね

一夜明けた30日の参議院外交防衛委員会。木原防衛相は今回の事故を「墜落」の表現に改めた。オスプレイ事故をめぐり2転、3転する情報。乗組員の数も当初の6人が、30日になって8人に訂正された。十分に公開されないアメリカの情報に国が翻弄(ほんろう)されていた。

事故の影響は他県にまでも

事故の影響は全国各地に広がっている。佐賀県ではオスプレイが絡む訓練が中止に。沖縄県の玉城知事は「オスプレイの危険性が非常に不安視されているということが、このような形で現実になってしまったのは非常に残念としか言いようがない」と述べた。

一方、事故が起きた鹿児島県の塩田知事。29日は「情報収集に努める」と書面でのコメントにとどめたが、30日になって、再発防止策が講じられるまではオスプレイの飛行を停止するよう国に申し入れた。

南西諸島の防衛を理由に、鹿児島県内でも存在感を増すアメリカ軍。大隅半島の海上自衛隊鹿屋航空基地に無人偵察機が一時配備され、今回、事故が起きた屋久島に近い馬毛島でもアメリカ軍の訓練を視野に入れた基地工事が進む。

今回の事故はアメリカ軍が実際に来るということの意味と、いつ、何が起きてもおかしくない現実を、鹿児島県民に突きつけている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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