宙組に所属する女性が急死し、その労働環境が問題視されている宝塚歌劇団。

労働基準監督署は、2021年と2023年11月の2度にわたり、立ち入り調査を行っているが、その実態について元歌劇団スタッフが証言した。

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2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
(労基に)言われたことだけは、ピンポイントで対処したかもしれないけど、それ以外は劇団として、問題に思わなかった感じはある。

イット!は、2年前に労基所が立ち入り調査を行った際に所属していた、元スタッフを追跡取材。なぜ、2年前の時点で、宝塚の労働環境が改善されなかったのかが見えてきた。

残業時間が100時間を超えることも…

2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
秋ぐらいに上司から労基が入ったみたいだという話を聞きまして。

労基署の立ち入り調査が行われる前に、宝塚側と元スタッフの男性が交わした雇用契約の契約書では、給与について「月額20万円」「昇給なし」とある。

また、その勤務時間については「専門業務型裁量労働制とし、労働者の決定に委ねる」と書かれている。

仕事のスケジュールを、自分で組むことができる裁量労働制。元スタッフの契約は残業代が出ないものだが、「就業規則、その他諸令達に従わなければならない」と記載されている。

中島経営法律事務所 中島茂弁護士
中島経営法律事務所 中島茂弁護士

中島経営法律事務所・中島茂弁護士:
少しおかしいですね、そこは。就業規則「その他諸令達」というのは、職場での命令のことだと思うのですが、「従わなければならない」というところが、これで裁量労働なのかというのは、ちょっと疑問が生じます。

労働契約にくわしい中島弁護士によると、契約書には、職場の上司などの指示に従うよう書かれていて、裁量労働制と矛盾しているという。

2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
劇団員の方は、若い方が対象で契約するので、そういうおかしな契約をされても、わからないなというのが事実かな。

しかし、こうした状況は2021年、宝塚に労基署が立ち入り、是正勧告を出したことで変わったという。

2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
総務部からさかのぼって、3カ月間の(超過分の)勤務時間の確認をするように、お達しがありまして。

初めて、残業時間を申告するよう言われた元スタッフ。記憶を頼りにさかのぼると、ひと月で100時間を超えていたという。

元スタッフ証言“全体として勤務を改善する姿勢は全くなかった”

しかし、宝塚の関係者によると、この是正勧告後も歌劇団内のSNSグループでは、以下の様なやりとりが確認されたという。

歌劇団内のSNSグループでのやりとり
歌劇団内のSNSグループでのやりとり

「(総務から)休みの日に演出助手を出勤させるな」
「『うんと言うまで帰さない』と言われました」
「『業務が立て込んでいて、休みの日に別の仕事をせざるを得ない』と、話し合いは平行線のまま終わりました」
「そもそも演出助手の働き方を変えるなら、ほかも変えないとダメだと思う」

現場サイドからは、業務の量は変わらず、働き方だけ変えろという会社に、不満が噴出したという。

2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
労基が入ったところ(のスタッフの勤務)はなんか改善したみたいなことはあると思うが、全体としてみんなの働き方を改善していこうっていうような姿勢は、全くないかなと思います。

死亡した劇団員女性の遺族側は、死亡した原因に1カ月277時間もの残業があるなど主張している。

中島経営法律事務所・中島茂弁護士:
3年間で2回(労基署による)調査が入ったというのは、やはり多いと思います。責任者は(阪急)電鉄会社ですから、運営責任者として説明すべきと考えます。
(「イット!」11月28日放送より)