リーグ2位で最終節を迎えながらも水戸に引き分け、自動昇格を逃した清水エスパルス。最後の最後でJ1昇格を手にした磐田のほか東京Vも勝利したため、エスパルスは最終的に4位でリーグ戦を終えた。

最後まで“らしさ”貫く覚悟

今シーズンは開幕からリーグ戦7試合連続未勝利と波に乗れなかったものの、秋葉忠宏 監督の就任を機に息を吹き返したエスパルス。

ただ、J1昇格を確実なものとできたであろう“ここぞ”の場面で勝ちきれなかったのも事実だ。

1つ目は第37節の藤枝戦。第15節で対戦した際は5対0と大勝していた相手に対し、ボールこそ支配していたものの堅い守備を崩せず、逆に鋭いカウンターとパスミスから2点を許し敗れた。

続いて第40節の熊本戦は、前半に中山のゴールで先制しながらも前半アディショナルタイムにセットプレーから追いつかれ、後半にはさらに2点を奪われ完敗を喫した。

さらに最終節の水戸戦。前半まさかのシュート0で試合を折り返すと、後半17分にはパスミスをきっかけに先制点を献上。終盤にサンタナのゴールで追いつくと、その後も何度か決定機が訪れるもあと1点が遠かった。

とはいえ、過ぎ去った時間は戻ってこないし、結果は変わらない以上、いま悔やんでも仕方ない。大切なのは、そこから“何を学ぶのか”である。

こうした中、指揮官は「勇気なき者に勝利なし」と言い切る。前述の3試合で共通するのはいずれもミスから失点で生まれたこと。「ミスをしないように」という消極的な姿勢が、逆にエスパルスの“アグレッシブさ”という特徴を抑えつける心理的な足かせになっていたのかもしれない。

エスパルスはここまで「超攻撃的」「超アグレッシブ」を貫いてきた。そして、この方向性はプレーオフを前にしても揺らぐことはない。だからこそ、秋葉監督はこれまで通りの戦い方を貫くことを誓い、「プレーオフ用ということは考えていない」と断言する。なぜなら、一発勝負で勝ち抜くためだけの戦い方ではJ1のステージで通用しないからだ。

一方で、正論を語っていてもプレーオフで敗れてしまえば元も子もないのは事実。

だが、今のエスパルスがあるのは秋葉監督の手腕によるところであることは誰の目にも明らかだ。オレンジサポーターは、最後まで“らしさ”と“覚悟”を持ってプレーオフに挑む秋葉エスパルスと歓喜の瞬間を分かち合えることを信じている。

秋葉監督「失敗おそれず勇気を持って」

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-現在のチーム状況は(11月17日取材)
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
今週は練度の高い練習をしてくれていたので今日は雨を見越してミーティングとした。長い時間(1時間45分)となったが「ミーティングもトレーニング」と前向きだった。攻守でこれまでやってきたことについて狙いや優先順位などを丁寧に振り返ったが、それだけ多かったんだと再認識した。

また、過去の映像を選手に見せて共有した。プレーオフの経験者は少ないが、海外でのビッグマッチやJ1での残留争いを経験している選手もいるので経験値で劣ることはない。

そして、難しい試合になるので勝つために必要な最大限の準備をするために話し合った。去年のゲームを見るとファウルまがいのプレーや熊本ですらロングボールを使うとか、これまでと違うゲームになる。そうした対策や心構え、悪くなった時の解決策を選手自身から引き出していて認識を合わせていて長くなった。

-これまの「超攻撃的」「超アグレッシブ」は変わらないか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
「超攻撃的」「攻守において超アグレッシブ」それは変わらない。しっかりと自分たちが積み上げてきたものや痛みから学んだことをしっかりと出したい。それが、J1でしっかり戦って勝つこととつながっている。プレーオフ用ということは考えていない。ブレることなくやり続けたい。

また「相手を見ながらフットボールをしろ」と言い続けてきた。前から来たら背後を取るし、背後を嫌がったら足下でボールを動かすし、相手を見て長いボールも短いボールも使えるのが我々。一辺倒では勝てない。常に相手を見て、相手の嫌がることをできなければならない。それをチームで意思統一して取り組むことが重要。今日のミーティングでも意思が合うようにということを入念にやった。

-ミーティングの成果は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
戦術的なことは言えないが「流れが悪くなってきたときにこうしよう」とか、「困ったときにどうする」とか確認できたが、そうならないのがベスト。

そして、まずは心の弱さを克服しないと。どんなことをしても、やろうとしない、ボールを受けない、前に行こうとしない、仕掛けようとしない、ボール受けようとしない、走らないなら、何をしてもダメ。まずは、ヒリついたゲームで戦えるメンタリティーを持ってやれること。

「ミスしたくない」「自分のせいで負けたくない」という気持ちを持たず、団体競技なので勝っても負けても全員のせい。「勇気なき者に勝利なし」と考えて、失敗をおそれずに勇気を持ってどんどんトライして欲しいということ。心の強さを持って、勇気を持って立ち向かうことこそ、今のチームに必要なことだと思っている。

(16日に行った)座禅では無になって、余計なことを考えずに、目の前のことに集中するなど、うまく精神統一できたと思う。これをやったから勝てるとは思っていないが、チームとして1つのことに取り組むという意味合いでもよかった。

白崎選手「自信持ってやることが大事」

清水エスパルス・白崎凌兵 選手:
水戸戦は自分たちが望む結果を得られずに残念。まだ幸いに2試合勝って昇格するチャンスがあるので、そこをポジティブに捉えたい。

もう一度、自分たち一人一人が何をしなければならないのかを整理してチームのために結果を残したい。

今週は試合がないのでボリュームある練習をした。一人一人がイメージを持ってこだわることが大事。リアリティを持ってやることで変わるから大事にしたい。一発勝負のプレーオフで勝つため、何が起きるかわからないし、自分たちがシーズン通してやってきたことに自信を持ってやることが大事。何があっても自分たちの力でしかないし、それを信じたい。

山形は特徴あるチーム。はっきりしているところが多い。お互いにわかっている相手のストロングポイントをどう抑えるのかが重要。現実的なことを求められるだろうが、跳ね返すパワー、自信を、整理してやるしかない。

サポーターを悲しませたが終わったわけではない。最後に勝って笑顔で終われること。そこだけにフォーカスして乗り越えたいと思う。

乾選手「自分たちのリズムを作りたい」

清水エスパルス・乾貴士 選手:
まだ、しっかりと切り替えはできていないが、あと2試合しっかり勝つしかない。ただ、全員とは言えないが切り替えられていないところもある。それではいけない。明日からもっとしっかりやりたい。練習場の横断幕を見て、みんな同じなんだと思った。悲しい思いをさせた。最後は自分も笑って終わりたい。一生懸命やりたい。

山形は攻撃的な選手がいるいいチーム。前は強い。我々は引き分けでもいいので、アドバンテージを考えながら戦いたい。だが、先制点は取らせず、自分たちが取りたい。

一発勝負の経験は少ないのであまりわからないが、最終節の悪い試合にしないように、やってきたことを出せいるように、自分がもっとボールを受けて、自分たちのリズムを作りたい。

(練習後に秋葉監督や権田選手と)いろいろなことを話した。最終戦やトレーニング、ミーティングについて意見交換した。4位でプレーオフになったのは自分の責任。みなさんを喜ばせるように、あと2試合で払拭するために全力で頑張りたい。

岸本選手「これからは結果がすべて」

清水エスパルス・岸本武流 選手:
チームの中で選手の契約の違いなどが様々あり、1つにまとまるためにその状況はあまりよくない。

プレーオフは経験があるが、どれだけチームが1つになれるかがポイント。秋葉監督もそれを重々承知していて「座禅に行こう」と言ってくれた。選手が同じ方向を向くために、それは素晴らしいことだと思った。そういうことに対して選手は「絶対応えないといけない」という風にならなければならない。

今さら上手くならない。やることを明確にしてチームが1つになることが大事。これからは結果がすべて。負けたら終わり。自分は超アグレッシブに、「鬼」どころか「神」くらいにならなければダメだなと思う。ポジティブシンキングが必要。

山形はリーグ戦で連勝してきて、自分たちとは逆のメンタルだと思う。そんなチームには自分たちもまとまらなければならないと思う。試合に出ても、出なくても、ゴールを目指して全力でプレーしたい。

高橋選手「プレーオフは気持ちの勝負」

清水エスパルス・高橋祐治 選手:
水戸戦は自分のパスミスで失点し責任を感じている。みんなには申し訳ない。これまで全員で勝ち取ってきた順位だったので、それを失ってしまったし、自分のしてしまった責任を感じている。それでもJ1昇格の可能性は残されているので頑張りたいし、取り返すしか道はないと思っている。

プレーオフは負けたら終わりのこれまでとまったく違うステージ。チームというか、人間がむき出しになるステージで、みんな人生かけて戦ってくるので、もう目が違う。気持ちの勝負となる。

山形は5連勝して勢いがあるし、個人技もすばらしい。こちらも本当に準備してかからないと勝てない。気を引き締めて当たりたい。また、「引き分けはOK」で戦うのは、そんなに甘くはない。先制点を取る気持ちが大事。セットプレーは「自分がとってやる」という気持ちで入っているので、しっかり決めたい。

吉田選手「勝負強さが大事になる」

清水エスパルス・吉田豊 選手:
水戸戦は出場選手が固かった。メンタルの問題もあったのではないか。そうなった時の打開策を持っておくべきだった。

特に前半は負の方向もあったが耐え忍ぶことはできたし、後半はしっかりできた。どんなゲームも難しいが、結果、昇格できなかったことを踏まえると対策は誰もが持っておくべき。特にベテラン選手が負けないチームになるためには必要だし、考え方を共有しておくべき。

今、足りないものがあるとしたら勝負強さ。相手全部に勝てるわけはないが、引き分けるとか、連敗しないとか、何かの変化を与える勝負強さが必要。自分はその変化を起こすベテランの立場だと思っている。

プレーオフは簡単ではないが、勝負強さが大事になる。水戸戦の結果はいい教訓となる。いきなり上手くなるはずはない。この3週間の積み上げが必要。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

テレビ静岡
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外岡哲
外岡哲

テレビ静岡 報道部スポーツ業務推進役(清水エスパルス担当)。
1984年テレビ静岡入社。
1987年~1994年(主に社会部や掛川支局駐在)
2000年~2002年(主に県政担当やニュースデスク)
2021年~現在(スポーツ担当)
ドキュメンタリー番組「幻の甲子園」「産廃が街にやってくる」「空白域・東海地震に備えて」などを制作。
清水東高校時代はサッカー部に所属し、高校3年時には全国高校サッカー選手権静岡県大会でベスト11。
J2・熊本の大木武 監督は高校時代の同級生。