「リトルベビー」とは1,500g未満で生まれた赤ちゃんのこと。手のひらに載りそうなほど小さな体を見て「大きく成長できるのか…」と不安を感じる母親は多い。そんな母親の気持ちに寄り添う活動を取材した。

小さく生まれた赤ちゃんたちの物語

広島県に10カ所ある周産期母子医療センター。そこには、まだ自分の力だけでは生きられない小さな赤ちゃんがいる。広島県の2022年度の出生数は、年間1万7,903人。その1割にあたる1,753人が2,500g未満。うち140人は「リトルベビー」と呼ばれる1,500g未満の赤ちゃんだった。

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早産などで、小さなわが子を前に自分を責める母親も…。そんなママに寄り添い、気持ちを軽くすることをテーマに活動する団体がある。リトルベビーのママたちの交流サークル「しずくの木」だ。

早産児・低体重児・未熟児のママ交流サークル「しずくの木」
早産児・低体重児・未熟児のママ交流サークル「しずくの木」

11月上旬、広島市西区民文化センターで開かれた月一度の集まり。机の上には、完成したばかりの冊子が積まれていた。“未来のリトルベビーママ”へ向け、自分たちの体験をまとめたエピソード集を作成したのだ。

リトルベビーの母親たちが手記をつづったエピソード集
リトルベビーの母親たちが手記をつづったエピソード集

しずくの木 代表・漆畑希望さん:
突然の早産ですごくショックを受けているお母さんに「いろんな出産があって、その子たちもみんな元気に大きくなっているよ」と伝えたくて。 今、NICU(新生児集中治療室)にいるお母さんたちやご家族に勇気を与えられるんじゃないかなと思って、このエピソード集を作りました

しずくの木 代表・漆畑希望さん
しずくの木 代表・漆畑希望さん

同じ境遇のママがいると知ってほしい

エピソード集に登場する「なゆちゃん」。5年前、1,838gで生まれた。

予定日2カ月前の突然の出産だった。母親は当時の心境を「あの時の私は心身ともにボロボロでした」と、つづっている。

なゆちゃんのママ・小谷田菜未さん:
本当に先が見えなくて、不安で取り残された感じ

そんな、なゆちゃんも5歳。元気でおませな女の子に成長した。

なゆちゃんのママ・小谷田菜未さん:
絶対に成長する時は来るというか、笑い話にできる日が来るので…。その日を信じて「同じ経験をしたママがいるよ」ということだけ知ってもらえたらうれしいかなと

また、妊娠中に病気がわかり、妊娠34週に早産で生まれた「こうちゃん」。生後4カ月で心臓の手術を受けた。

エピソード集には「5歳までに5回の入院を経験。わが子はゆっくりたくましく成長中です」とあり、元気に育った写真が掲載されている。

こうちゃんのママ・鋤田真樹子さん:
本当に生まれてきてくれてありがとうという気持ちでいっぱいです。今悩んでいるお母さんたちが希望を持てたらな、という思いはあります。仲間がいてくれたことですごく救われたので、不安な気持ちを共有する場はやっぱり大事だというのを伝えたいです

こうちゃんのママ・鋤田真樹子さん
こうちゃんのママ・鋤田真樹子さん

このエピソード集を、出産直後の不安なお母さんたちのもとへ早く届けたい。メンバーたちの思いが詰まった冊子は県内すべての周産期母子医療センターへ送られた。

「何カ月?」 何気ない言葉がつらい

この会に初めて参加した親子がいる。

初めて参加・北川友美さん:
最初はなかなか連れ出せず…。すぐ風邪をひくんです。保育園児のお姉ちゃんがいて、お姉ちゃんは鼻水で済む風邪でもこの子は熱が出て

初めて参加した北川さん(左)の話を聞く漆畑さん(右)
初めて参加した北川さん(左)の話を聞く漆畑さん(右)

しずくの木 代表・漆畑希望さん:
すぐ熱を出すよね。そんなだったー

初めて参加したママの話を親身に聞き、一言一言、寄り添うように言葉を返していく。
取材中、記者が何気なく聞いてしまったことがあった。

記者:
お子さんのお名前は?

初めて参加・北川友美さん:
あおいです

記者:
今、何カ月ですか?

初めて参加・北川友美さん:
もう1歳になるんです

何気ない会話の中に、小さく生まれた子どもの母親だから気付ける気持ちがあった。

しずくの木 代表・漆畑希望さん:
もうすでに1歳を超えていたり、もしくは2歳を超えているような子のお母さんにとっては「何カ月?」って言われるのはすごくつらいことで…。私は「今、どれぐらいなんですか?」って聞いてくれる世の中になったらいいなって思っています

しずくの木 代表・漆畑希望さん
しずくの木 代表・漆畑希望さん

早産児の成長を紹介する写真展開催

寄り添う気持ち、それは社会全体に求められている。社会にもっと「リトルベビー」のことを知ってもらうため、毎年、サークル主催の「世界早産児デー写真展」を開催。6回目となる2023年は11月17日から3日間開催され、エピソード集も配布された。

広島市西区民文化センターで開催された「世界早産児デー写真展」
広島市西区民文化センターで開催された「世界早産児デー写真展」

会場の壁に展示されていたのは、大人の手に包まれてしまいそうなほど小さな赤ちゃんの写真。その赤ちゃんたちがゆっくりと着実に成長していく様子を紹介していた。

代表の漆畑さん自身も、次男の「あっくん」を妊娠28週の時に1,128gで出産。現在、9歳の「あっくん」は活発なスポーツ少年に。

エピソード集につづられている漆畑さんの手記
エピソード集につづられている漆畑さんの手記

エピソード集の最後に、漆畑さんはこんな思いを添えている。
「今は、次男が小さく生まれたから出会えた人がいて、広がった世界があり、私自身が成長できたと思えます。早産を経験したり、赤ちゃんを小さく産んだママたちがそんなふうに思えるようになったらいいな…と願っています」

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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