約1年ぶりとなる米中首脳会談を終え、両国間の安定化に向けた道筋をつけた米バイデン大統領は、20日、1年に1度の“節目”の日を迎える。

「多くの人が私の年齢に焦点を当てているようだ。信じてほしい、私は誰よりもそれを理解している」(9月)。「年寄りに見えないでしょ?ちょうど103歳の少し下だから」(6月)。自らの年齢について、演説で笑いを誘いながらこう語ってきたバイデン氏は、20日、81歳を迎える。

77歳で退任したレーガン元大統領
77歳で退任したレーガン元大統領
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バイデン氏に次ぐ高齢の大統領だったのが、1989年に77歳で退任したレーガン氏だった。2期目を目指す大統領選の討論会で、司会者が「大統領の職務を果たせるのか」と、レーガン氏を問う場面があった。これに対し、レーガン氏は「気にしない。私は、相手(候補)の若さと経験のなさを政治的に利用するつもりはない」と一蹴し、会場の笑いも誘った。

エアフォースワンに搭乗する際、タラップでつまずくバイデン氏
エアフォースワンに搭乗する際、タラップでつまずくバイデン氏

しかし、バイデン氏の状況は、レーガン氏とは少し異なる。自転車で転倒したり、演説を終えて転んだりする姿は繰り返し放送されてきた。演説中の言い間違えも少なくなく、咳き込む姿もよく見られる。その姿は、最高権力者として常にエネルギッシュに行動することが求められる大統領職を今後も務められるのかどうかを国民に問いかけている。再選を目指す2024年11月の大統領選が近づくにつれ、気力や体力、精神力の評価の目は、一層厳しさを増す。

定着した「年齢」の争点と増大する不安

18歳から64歳を対象に行われた11月の世論調査(Yahoo!News/YouGov)では、バイデン氏の年齢を不安視する有権者は64%に上り、少し不安があると答えた人を含めると83%になった。民主党支持層に限っても39%(少し不安があるを含めると69%)となる。

「年齢」は、米メディア等の世論調査で聞かれる「問い」として定着している。二期目を目指すバイデン氏にとっては、歴史的に低い失業率や雇用の回復など明るい点もあるが、移民政策や長引くインフレ、イスラエル支援に伴うアラブ系支持層離れなど、内外の多くの政策課題に加え、年齢に関する不安が常につきまとう。

対立する共和党はすでに、バイデン氏が転倒する姿や演説後にどこに行けばいいのか戸惑う姿などをSNSで拡散させ、ネガティブキャンペーンの格好の“餌食“ともなっている。米大統領として歴代最高齢記録を更新し続ける前人未踏の領域への挑戦だけに、一つの”ミス“が国民の不安を増幅させることになる。

政治家にとって年齢は、時に知恵と経験が伴う大きな“資産”となる。しかし、バイデン氏にとっては今、資産よりも“負債”が色濃く見られる状況だ。

“つまずき”防止へ バイデン氏の秘策

政府関係者からは、「毎日元気なのか不安も覚える」との声も挙がるが、大統領選を前にバイデン氏に“つまずかせない”対策も進められている。

エアフォースワンに続く階段の上からカメラに向かって立ち、手を振る最高司令官の姿は、アメリカ大統領の象徴的なイメージの一つだ。しかし、背の高い階段で何度もつまずくバイデン氏は、階段が少なく、低いタラップから乗り降りするようになったという。

米メディアによると転倒防止のために、テニスシューズを多用し、理学療法士の指導も受けているという。2023年8月の休暇時には、ピラティスにも通い、体力の維持、回復、体調管理に一層気を遣う様子もうかがえた。

専門家「リスクを冒さず、年を重ねた戦略も見いだしている」

歴史学が専門で大統領職を研究する、テキサス大学のヘンリー・ブランズ教授(70)は、取材に対し「大統領という職種は激務で過大なストレスが伴うが、バイデン氏は、年を重ねて無理をせず、自分のペースで職務をこなすことを学んだ」と話す。

「若くて元気な大統領は、できるだけ外に出て、その若さと元気を誇示したいと思うだろう。最年少で大統領に選出されたジョン・F・ケネディ元大統領は、凍てつく厳しい寒さの中、コートも帽子もかぶらずに就任式に出席した。そして、彼は、天候が彼に投げかけるものが何であれ、それに耐えることを示した。バイデン氏は、そんなことはしない」

大統領職を研究する、テキサス大学のヘンリー・ブランズ教授
大統領職を研究する、テキサス大学のヘンリー・ブランズ教授

「ロナルド・レーガン元大統領は、(二期目の)大統領職に就いていたとき、多くの証言によれば、アルツハイマー病の初期症状が出ていた。その中で彼は、自分のペースを守った。勤務の開始時間は遅くなり、勤務を終える時間も早くなった。記憶力が衰え始めている兆候はあったが、いざとなれば、彼はエネルギーと注意を喚起し、やるべきことに集中した。2期目のバイデン大統領なら、そうするのではないだろうか。例えば、一般教書演説のような大きな演説をする際、十分な休息と準備を取り、備えるだろう。
なので、リスクを冒さず、彼が以前より年を重ね、その年齢だからこそ成し遂げられることに国民が気づく可能性に賭けているのだと思う。実際、彼は80代であり、80代にはある種の懸念がある。その年齢には良い面と悪い面がある。彼は、話しが長いことで有名だったが、年を重ねてそれを学び、そうではなくなっている。長く話せば、話すほど、失言のリスクもあり、後悔するようなことを言うに違いない。しかし、彼は、以前のように長々と、また感情的に話すことはなくなった。だからこの場合、年齢を重ねたことが少しは有利に働くかもしれない」

1996年、50歳で二期目を目指した民主党のビル・クリントン元大統領と対戦した共和党のボブ・ドール氏(当時73)は、選挙戦中に転倒した。その姿は、若さあふれるクリントン氏と比較され、大きな“失点”となったと言われている。

81歳を迎えたバイデン氏は、大統領としての激務をこなしながら全米を飛び回る長く険しい大統領選に、様々なリスクを抱えながら臨むことになる。

(FNNワシントン支局 千田淳一)

千田淳一
千田淳一

FNNワシントン支局長。
1974年岩手県生まれ。福島テレビ・報道番組キャスター、県政キャップ、編集長を務めた。東日本大震災の発災後には、福島第一原発事故の現地取材・報道を指揮する。
フジテレビ入社後には熊本地震を現地取材したほか、報道局政治部への配属以降は、菅官房長官担当を始め、首相官邸、自民党担当、野党キャップなどを担当する。
記者歴は25年。2022年からワシントン支局長。現在は2024年米国大統領選挙に向けた取材や、中国の影響力が強まる国際社会情勢の分析や、安全保障政策などをフィールドワークにしている。