業界ナンバーワンの店舗数を誇る焼き肉チェーン店「牛角」で、食べ放題を利用した男性21人が腹痛や下痢などの症状を訴え、8人から「ノロウイルス」が検出された。
ノロウイルスはどういうルートで感染し、どのような症状を引き起こすのか。
食品微生物センターの山口憲太代表に注意点と我々ができる対策を聞いた。
11月以降に流行るノロウイルス
ーーノロウイルスの特徴は?
ノロウイルスは統計的に11月以降に流行ることがわかっています。
ウイルスの特徴としては、高温よりも低温の冬の時期の方が長い間、感染力が維持されます。
また、空気が乾燥している方が空気中を漂う時間が長くなるので、夏よりも冬の方がより感染力が高くなり、そのため、ノロウイルスが原因の食中毒は冬の時期に増えます。

ーー牛角の集団食中毒で考えられる感染ルートは?
お肉が感染源の場合は、問題は2つあります。
1つは加熱不良。
もう1つは、生のお肉を扱うトングと焼き上がった肉を食べるお箸を分けなかったことです。

また、サラダやサンチュなど火を通さないものに元々ウイルスが付着していたことも考えられます。
一方、今回保健所は、海苔も検査していると思いますが、過去に刻み海苔などが食中毒の原因になったことがあります。
海苔は焼いているので、ウイルスや菌はほぼいないという考えでしたが、その時の感染は、海苔を刻む過程でウイルスが付着したことが原因でした。
こうしたこともあり、保健所は念のため検査を実施しているものと思われます。

ーー従業員からノロウイルスは検出されていないが?
保健所はこの店舗を営業禁止処分にしているので、この店自体に原因があったことは間違いないと思います。
ノロウイルスはトイレにもたくさんいるので、お店のトイレが感染源ならば、使用した人全員がかかっていてもおかしくありません。しかし従業員が陰性であるのなら、その可能性は除外できます。
トングと箸の“使い分け”
では今回のような食中毒はどのように防げるのか。
山口代表は、生肉を扱うトングと、焼き上がった肉をつかむお箸の使い分けがポイントだと話す。

ーー加熱すればノロウイルスは死滅する?
食材をしっかりと加熱すればウイルスは死滅します。
しかし、焼肉店では自分の好きな焼き加減で食べることができるので、いわゆる“生焼け”の状態で食べてしまうこともあります。
お店の人はそういったことがないように注意していたと思いますが、これだけ多くの方が感染したということは、注意喚起が足りなかったという判断になると思います。

ーートングとお箸の正しい使い方は?
ポイントは、生肉に触れたもので、焼き上がった肉をつかまないことです。
生のお肉はトングで扱い、焼き上がったらお箸でお皿に取り分けて食べましょう。
生肉にはたくさんの菌が付いているので、それらが口に入らないように、生肉はトングでつかみ、焼いている最中もトングで扱う。
そして、焼き上がったらお箸でとって食べるという風に、トングと箸の“使い分け”をすることが大事です。

焼いてる最中であれば、肉を裏返した時に菌が付いても、それは比較的すぐに熱で死んでしまうと考えられています。
しかし、焼き上がる直前に菌を付けてしまうと死滅しない危険性があるので、そろそろ食べるというタイミングからは箸を使うように切り替えましょう。

ーー店の管理責任は?
保健所の判断になりますが、提供している食品にノロウイルスが付着していたという時点でまず問題があります。
肉はしっかりと加熱すればこういった問題は解決するのですが、お店側がトングの使い方について十分な説明を行っていたのかどうか、また、お客さんがそれを守っていたのかがポイントになります。
手洗いと十分な加熱
ノロウイルスに感染すると、胃腸炎になったり、腹痛や嘔吐などの症状を引き起こし、最悪の場合、死亡するケースもある。
こうした事態を防ぐために我々は何を心掛ければ良いのか。

ーーノロウイルスの対策は?
1つは、自宅で調理する際は、事前によく手を洗い、殺菌することです。
また、食べる前にも手洗いをして口にウイルスや菌が入るリスクを減らすことが大切です。
2つ目は、お肉など火を通す食材はしっかりと加熱しましょう。
特に外食先で焼肉やお好み焼きなど自分で調理して食べる店に行った時は、しっかりと加熱して、中まで火が通っていることを確認してから食べることを心掛けてください。