京都の商店街でのごみ問題、鎌倉では写真を撮ろうと道路をふさぐ外国人観光客など全国的に問題となっている「オーバーツーリズム」。外国人観光客が増え、地域住民や自然環境などに影響が出ているようだが、宮崎県内ではどんな影響があるのか、県内有数の観光地・高千穂町を取材した。

タクシードライバー不足が顕著に

高千穂町では2023年夏ごろからインバウンドを含め観光客が増加し、現在はコロナ禍前の約8割まで回復している。

観光客でにぎわう高千穂町
観光客でにぎわう高千穂町
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コロナ禍前はアジアからのインバウンドが多かったが、最近は欧米やオーストラリアからも増加。京都や富士山など定番の国内観光スポットを巡った人たちが、新しい観光スポットを探して高千穂町に来ているようだ。

そんな中課題となっているのがタクシー不足。急激に増えた観光客への対応と運転手不足が重なり、配車が追い付かず地元住民の足にも影響が出ている。

タクシー運転手:
コロナ前の観光客の8割戻っている。最近はヨーロッパ系の観光客も多い。タクシー運転手は皆さん定年になるなど、この業界に入ってくる方が少なく慢性的に人が足りない状態が続いている。今後はシフトを変更するなどし、昼間に台数をそろえる形で対応したい。

地元住民の声:
なかなかタクシーがつかまらない。予約してもつかまらない。歩くことができないので重いものが持てない。そういう時は前の日から病院を予約する。

タクシードライバーの不足解消策として、経験者へ声をかけるなどの対策を講じているという。

すぐ満席に…飲食店はフル稼働

観光客増加による影響は飲食店にも及んでいた。高千穂町の蕎麦屋「おたに家」には平日・土日にかかわらず客が来ており、これまでスタッフ3人で対応できていたが、現在は厨房スタッフ5人がフル稼働しているという。

おたに家・今村康薦代表取締役:
開店と同時に一気に満席になるので、土日や祝祭日は1時間から1時間半待つ方がいらっしゃる。夏は暑いし冬は寒いから、そういう時に外で待っていただくのは心苦しい。

高千穂町では飲食店数の増減はないものの、東南アジアから個人の観光客が増加し、飲食店では行列ができている。

こうした中、高千穂町では新しい形態の観光の取り組みが始まっている。

「アドベンチャーツーリズム」って?

高千穂町で始まったのは「アドベンチャーツーリズム」。

高千穂アドベンチャーツーリズム協議会・福島優会長
高千穂アドベンチャーツーリズム協議会・福島優会長

東京出身の福島優さんが高千穂アドベンチャーツーリズム協議会を立ち上げ、自然や文化体験などを通して地元の魅力を発信するツアーを企画している。

福島優会長:
九州をいろいろ巡っている中で高千穂のこの風景が大好きになり、ここには絶対住みたいと思っていろんなアウトドアのアクティビティ造成をしている。

アドベンチャーツーリズムと呼んでいるのは、身体的な活動か自然体験か文化体験の3つのうち、2つが備わった旅行形態。

例えば「棚田駆け巡るEバイクツアー」は、高千穂の棚田の風景の中まで入って楽しめる、Eバイクツアーの目玉になっている。観光で普通にドライブに来た人だとなかなか入りづらいが、Eバイクだとスイスイと行くことができる。さらにガイドさんが面白い所に案内してくれるのだ。

「高千穂棚田キャンプ」
「高千穂棚田キャンプ」

この他にも農閑期の棚田でキャンプをし、収益の一部を棚田のオーナーに寄付する「高千穂棚田キャンプ」や、地元の宮司と一緒に天孫降臨の山、「二上山(ふたがみやま)」を登るトレッキングツアーなども企画している。

福島優会長:
高千穂峡以外にも高千穂のいろいろな良さを味わってもらえると思って取り組んでいる。地元の人たちの暮らしがあるからこそ田んぼの風景・棚田・森も守られている。そこを使わせてもらうのがアドベンチャーツーリズム。恩返しをするということを心掛けて地域の方々と連携している。

地域の暮らしや自然を大切にしながらその魅力を楽しむアドベンチャーツーリズム。新たな観光の形として注目される。

(テレビ宮崎)

テレビ宮崎
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