先輩劇団員による「パワハラ」や「いじめ」は本当にあったのか…。

宝塚歌劇団による会見(兵庫・宝塚市 14日午後4時すぎ)
宝塚歌劇団による会見(兵庫・宝塚市 14日午後4時すぎ)
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25歳のタカラジェンヌが自宅マンションから転落死した問題で、14日午後4時から、宝塚歌劇団が記者会見を開いた。

報告書「いじめ・ハラスメントは認められない」

その冒頭、宝塚歌劇団の木場理事長は、急死した25歳団員の遺族らにお詫びの言葉を述べた。

宝塚歌劇団 木場健之理事長:
このたびの宙組の急逝につきまして、謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆様には大切なご家族を守れなかったこと、心より深くお詫び申し上げます。また、宝塚ファンの皆様ならびに関係者の皆様に、多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます

しかし、その後、歌劇団が報道陣に配布した調査報告書には、劇団や上級生のパワハラやいじめが直接死につながったという記述はなかった。

宝塚歌劇団 木場健之理事長:
この報告書には、故人に対するいじめやハラスメントは認められないという風に記載されております

「過密スケジュールで精神的余裕が失われていた」

1998年に発足し、宝塚に存在する5つの組の中で最も歴史の浅い宙組。

亡くなった女性団員は入団七年目の25歳で、下級生の取りまとめ役として本公演と新人公演の準備などにあたっていたという。

そして2023年9月、この女性は兵庫県宝塚市内の自宅マンション内で転落死しているのが発見された。

警察が自殺と見ているこの女性の急死の背景について、宝塚歌劇団側は当初、劇団内のいじめはなかったなどと説明。

しかし先週末、事態は大きく動いた。

遺族側の弁護士が会見を開き、長時間労働や上級生からのパワハラが死亡の原因につながったと訴えたのだ。さらに女性の遺族も次のように訴えた。

遺族側のコメント:
劇団は娘が何度も何度も真実を訴え、助けを求めたにも関わらず、それを無視し、捏造隠蔽を繰り返しました。その責任を認め、謝罪することを求めます。

そして14日、外部の弁護士ら調査チームがまとめた報告書の中身を明らかにした歌劇団側。

亡くなった女性団員の当時の労働時間は一日15時間に達し、睡眠時間はわずか3時間、時間外労働は実に250時間を超えていたと遺族側が主張していた長時間労働について、歌劇団側の調査結果は…

宝塚歌劇団 木場健之理事長:
やはり今、公演のスケジュールがかなり過密なものになっておりまして、精神的な余裕が失われた、そういう状況の中で、心的な負荷というのはかなり強くなってきているという風に考えております

過密なスケジュールが一因にあったことを認めた一方、他の劇団員も経験してきたこととも言及。そして、もう一つの焦点だった上級生によるパワハラやいじめがあったのか…。

遺族側の訴えとは異なる調査結果…記者から質問が相次ぐ

遺族側の訴えによると、急死した女性劇団員は上級生から「前髪を巻いてあげる」とヘアアイロンを額に押し付けられ、やけどをしたとある。

歌劇団側は14日、その事実関係を認めた上で、“故意ではない”と調査結果を発表。

宝塚歌劇団 理事・制作部長 井塲睦之氏:
ヘアアイロンでやけどをすることは、劇団内では日常的にあることであり、宙組プロデューサーの報告メモには、母親が(死亡した女性劇団員が)やけどしたのは事実であるが、(一部週刊誌の)記事のように故意にヘアアイロンをあてられたとか親族は激怒したとか、ありもしないことを書かれるのは非常に心外だと(言ったことになっている)。報告メモとご遺族の供述との間に食い違いが見られる。

さらに上級生から「下級生の失敗は、すべてあんたのせいや」「うそつき野郎!」などの暴言・パワハラがあったとされる点についても、報告書は遺族側の訴えとは異なるものだった。

宝塚歌劇団 理事・制作部長 井塲睦之氏:
A(上級生)との関係性はヒアリングにおいては、故人がAからいじめられていたとする供述はなかった。故人とAのラインでのやりとりが確認できており、故人が質問をしているのに対し、自身が気をつけていることや、実践している練習方法などを丁寧に回答していた。さらに新人公演前日には、「大丈夫よ」といったような故人を気遣う言葉をかけている

ヒアリングやラインのやり取りからは「上級生からは通常の指導を行っていて、いじめの痕跡はなかった」と言及する歌劇団側。

宝塚歌劇団 理事・制作部長 井塲睦之氏:
指導内容・方法については、社会通念に照らして、不当とは言えない。故人が参加しているライングループや、個別チャットにおいて、ハラスメントに該当するようなやりとりは見当たらず、遺族からもそのような情報提供はなく、故人へのラインでのいじめやハラスメントという事実は、確認できなかった。またその他、故人に対するいじめや、ハラスメントも確認できなかったということでございます

遺族側の訴えとは異なる「いじめやパワハラはなかった」という調査結果。

記者からは質問が相次いだ。

――遺族と意見が食い違うところがあるんじゃないと思うが、この調査報告書上がってきて、どういう風な意見を持たれたか?

宝塚歌劇団 木場健之理事長:
本人がそういう精神的な負荷があった状態で指導を受けたこと、それによって心理的な負荷がかかってしまったという風に認識しておりますので、ご遺族の方とは丁寧にお話をさせていただいて、対応していきたいと考えております

――見て見ぬふりをしていたというメッセージはすごく強いものだと思うが、抜本的に大きく変えていくという心持ちはあるのか?

宝塚歌劇団 木場健之理事長:
見て見ぬふりをしていたというご批判については、真摯に受け止めたいと思っておりまして。我々として、生徒それぞれの気持ちとか、あるいは持っている悩みとかをうまく吸い上げる仕組み、意見を吸い上げる仕組みというのが、不十分だったというふうな反省はしております

報告書について「納得できない」 遺族側弁護士が会見

宝塚歌劇団の会見が続く中、その調査報告を受ける形で、亡くなった女性の遺族側弁護士が15日午後5時過ぎから会見に応じた。

遺族側の代理人弁護士:
いわゆるヘアアイロン事件に関する一連の経過、上級生による被災者に対するパワハラの存否に関する問題に関しては、報告書の事実認定と評価は失当であり、劇団と上級生の責任を否定する方向に誘導している。これらの部分については遺族側は納得することはできない

いじめやパワハラがなかったとする報告書について、納得できないとした上で、さらに遺族側が劇団や上級生の謝罪を求めていた点についても、次のように指摘した。

遺族側の代理人弁護士:
遺族側が事実に基づき、劇団とパワハラ行為者に対する謝罪を求め、適切な被害補償を求めておりますが、この点については、報告書は一切言及していない

このように話した上で、事実関係について再度の検証を求めた。
(「イット!」11月14日放送より)