ひとつの単語から次々に連想
日々の会議の中、誰も発言しない時間が続いたり、話があらぬ方向に逸れてただの雑談になってしまったり…「これって、何の時間?」と思ってしまう瞬間は無いだろうか。
“働き方改革”の中でも「無駄な会議」の減らし方は注目されているだろうが、会議中にも無駄は存在してしまうもの。
以前、編集部では会議の会話がどれだけ盛り上がっているかを分析し、その結果に応じてご褒美がもらえる、というシステムを紹介したが、なかなか難しいのが議論をストップさせないこと。
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そんな時に便利かもしれない、「Inspiration Wall」というシステムが登場した。
この記事の画像(7枚)この「Inspiration Wall」は、株式会社BIRDMANが人工知能開発事業を営むデータアーティスト株式会社と共同で開発した「アイデア発想支援ツール」。
会議の会話をAIが分析し、内容に関連する画像やキーワードをピックアップしてスクリーン上に表示させるシステムだという。
例えば、「歌」という言葉をAIが聞き取ると、「歌」というキーワードから「個室」「パーティー」という言葉がわずか1秒ほどで連想されて表示。「個室」というワードからはさらに「カラオケ」「マイク」、「パーティー」からは「ジェンガ」「枝豆」などのワードがツリー状に広がっていく。
同時に、背景にはマイクを持つ人物の画像や、グラスを片手に「乾杯」をする人物などのイメージが表示される。
これらのテキストツリーや画像は時間とともに画面上から流れて消えていき、また次のキーワードが拾われ…と、会議中リアルタイムで提案され続ける。
途中、気になる言葉や画像を見つけた場合は連動させたスマートフォンから画面を一時止めたり、「お気に入り」に登録することも可能。
「Inspiration Wall」を終了すると、音声入力された会話の全テキストと、出席者からお気に入り登録された全ての画像が議事録として確認することができるようになる。
「Inspiration Wall」が役に立つのは、株式会社BIRDMANによる造語“ミーティング・サイレンス”の解消。
会議中、スクリーンに表示されたワードや画像がきっかけになったり、何気なく出た会話からもアイデアが広げやすくなったりすることで、何も思い浮かばず沈黙が続き、議論が止まってしまう“ミーティング・サイレンス”の状態を打開することができるのだ。
誰も発言しなくなった会議の気まずさは誰もが一度は経験したことがあるはず。
そんな中で話題を提供してくれそうな「Inspiration Wall」の仕組みや今後の展望について、お話を聞いた。
「雑談からアイデアに繋がる」体験を再現
――「Inspiration Wall」開発のきっかけは?
ブレストをしているとき、雑談で言った誰かの一言からアイデアに繋がるといったことがよくあります。そんな感じで何かを見たときや、聞いたときにパッとアイデアが閃くような感覚を常に作れないか?と思ったのがきっかけです。
会議が煮詰まっている時など、今までの会話を元にAIが勝手に何かを提案してくれたら面白いかな、と。
「Inspiration Wall」で表示される画像はストックフォトイメージなど、トレンドのデータベースはWeb記事検索エンジン「RUNDA」 とのAPI提携によってピックアップされる。
議論がストップしてしまうなど、音声入力がなくなった状態でも「Inspiration Wall」は機能し続け、日本国内で話題になっている・トレンドになっている出来事やキーワードを検出して画面上に流し続けることで、「新たな話題作り」もしてくれるのだ。
実際にデモ画面を見せていただいたところ、例えば「コロナ」や「オリンピック」といったニュース性の高いキーワードの他、注目のアニメ作品のタイトルなど、会議本来の議題とは遠いかもしれないが、話し始めるきっかけとなりそうな様々なジャンルのトレンドワードが表示された。
そして「Inspiration Wall」のポイントのひとつは、聞き取った会話からやみくもに単語を抽出して並べているのではない、ということ。
「歌」という単語からアイデアが広がる様子を例に挙げたが、「昨日、カラオケで家族と歌った」という会話を聞き取った場合、「昨日」「カラオケ」「家族」「歌った」といった単語の中から、「よりインスピレーションを受けやすいキーワードにつなげられる言葉」をピックアップしてくれるのだという。
――キーワードの抽出はどうやって?
そこがインスピレーションAIのアルゴリズムになります。つまり普通の会話から「なんのキーワードをピックアップするか」が鍵で、インスピレーションを受けやすいキーワードに繋げられそうなものをピックアップします。
アルゴリズムの内容は詳しくは言えませんが、「昨日」というキーワードよりも、「家族」「カラオケ」「歌」の方がイメージが出やすいというのはなんとなく分かると思いますが、現在ソーシャルメディアで話題になっていたり、イメージの画像が抽出しやすいなど、キーワードにポイントを付加して抽出しているイメージです。
将来的にはこのツールが使われている中でどのキーワードやイメージがピンされたかなどを機械学習し、よりAIの精度が上がっていく想定です。
リモート会議を盛り上げるアイテムにも
――今後、どのような活用が考えられる?
Inspiration WallをZoomやTeamsなどのリモート会議アプリと併用して使えるようにすることを考えています。具体的にはZoomなどのミーティングをしているときに、その中の1つの画面がこのInspiration Wallの画面になっていて、リモート会議の会話を元に会議を盛り上げる仕組みになっているような形です。もしかしたらInspiration Wallを相手に1人でブレストをすることも出来るようになるかもしれません。
「Inspiration Wall」は8月に「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」にて運用、実際の販売は11月を予定しているという。
出席者同士の“雑談”や、何気ないつぶやきが新たなアイデアを生むことはあるが、現在増えているオンラインサービスを使っての会議の場では、なかなかそのような「ちょっとした一言」が出にくいのも事実。
今後、「Inspiration Wall」がオンライン会議の場に進出することで、「退屈な会議」がまたひとつ減るかもしれない。
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