年明け2024年1月に開幕する全日本バレーボール高等学校選手権大会、いわゆる「春の高校バレー」。その全国大会行きの切符と県最強の称号をかけて、熱戦が繰り広げられた。2023年長崎県大会では、これまで見られなかった状況が起きていた。
小浜と上対馬の合同チーム
温泉の温度が全国一高い“湯のまち”として知られる雲仙市・小浜町。町内にある長崎県立小浜高校の男子バレーボール部の部員の人数は、現在5人。プレーするのに最低限必要な6人が揃っていないため、大会に出場することはできない。
この記事の画像(13枚)昭和の最盛期、部員は20人を超え県高総体で準優勝したこともあったが、少子化で生徒数が減る中、バレー部は活動と休止を繰り返すようになっている。
小浜高校バレーボール部 キャプテン 川添仁さん(2年):
3年生が抜けたときにこの人数でやっていました。1年生を入れて単独チームを作ろうという気持ちだったが 1年生が1人しか入らず単独チームができなくて、合同チームになると聞いて不安でした
小浜が選んだのは合同チームで出場する道だった。県高総体は島原高校と組んだが、3年生が引退して活動できなくなったため、春高は部員2人の上対馬高校と出ることになった。
小浜・上対馬 合同チーム 木寺雄希監督:
お互いの関係性や隣の選手との関係、ブロック、レシーブの関係、きのうときょうしか集まる機会はないからよりしゃべってやらなきゃ
県高総体の後にチームを結成し、一緒に練習できたのはこの日でようやく3回目だ。エースは小浜のキャプテン川添。
そして身長180cmの上対馬の原田だ。時間差や速攻などコンビを組み立てる練習時間を確保できないので、サイドからの攻撃がチームの軸になる。
上対馬高校バレーボール部 原田虎太朗選手:
高校が違うということは、先生も違う。その分多くの意見や課題が見つかるのが強みだと思う
小浜高校バレーボール部 キャプテン 川添仁選手(2年):
普段は練習していないけど、結構上対馬と合ってるかなと思う
小・中学生にバレーの“種まき”
春高・長崎県大会は節目を迎えている。2023年、大会史上初めて男女両方で合同チームが出場することになった。
出場校数は年々減っていてこの20年で男子が4割、女子が3割も減った。
県勢は男女ともに日本一をとったことがあり、高校バレー界でも“強豪県”として名を馳せてきた。しかし最近では全国優勝から遠ざかっている。競技力の低下にもつながる競技人口の減少は長崎バレー界の課題だ。
長崎県バレーボール協会 山口哲司理事長:
競技人口が少しずつ減っている現状があって 高校のチーム数も少しずつ減っているのが今の現状だと考えています
単独チームを作れなくなった小浜もバレーを盛り上げ、部を存続しようと動いている。この日、地元の小中学校のクラブや部のメンバーを集め練習会を開催。指導役は小浜の選手たちだ。小中学生と一緒にボールを追って汗を流した。
「地元でバレーをする楽しさを改めて感じてもらい、高校でも競技を続けてほしい」。小浜の選手たちはその思いが部の維持にもつながると信じて、小中学生と向き合っている。
小学生の保護者:
バレーをしたいとなると島原半島の外にでる子が多い。こういう機会を増やしてもらって、子どもたちに地元の高校とかで集まって進学しようかという気になってもらえたらいいと思う
練習会に参加した中学生:
地元の高校で一生懸命やっている先輩がいるから自分たちも頑張らないと思う。やっぱりかっこいい
人数が少ないけど最後のバレーを
3年生にとっては春高が高校生活最後の大会。合同チームという形であっても出場を決めたのはチームを途切れさせたくない、そして、ともに過ごした仲間とバレーを全うしたいという思いがあるからだ。
小浜高校バレーボール部 関智哉さん(3年):
人数が少ないけれども最後のバレーを後輩と楽しみたかった。中途半端に終わらないようにしっかりと練習して 最後の試合は負けても勝ってもいい試合にしたい
小浜と上対馬の合同チームは、県立佐世保南高校と初戦(10月28日)を戦ったが、佐世保南に2-0のストレート負けを喫し、全国への切符を手にすることはできなかった。
しかしチームを途切れさせたくないという高校生たちの熱き思いは地元の後輩たちにも引き継がれている。
春高バレー長崎県大会の決勝は11月4日に行われ、男子は大村工業、女子は純心女子が全国への切符を手にした。
(テレビ長崎)