街の人も「高い。これから鍋やるのに…」「量は少ない」と実感しているネギの価格高騰。大量に使う中華料理店では、外国産に切り替えるなどの動きも。しかし見方を変えてみると、出荷注文が増えた生産者にとっては明るい動きでもあるという。ネギの価格を巡る明と暗を取材した。
中華料理に欠かせないネギ
福島県郡山市の「中国名菜姑娘飯店」で話を聞くと「去年より1.5倍か2倍くらい上がってるので、ちょっと厳しい」という。ネギはエビチリやチャーハンなど中華料理に欠かせない食材。

しかし店で仕入れる国産の太ネギの価格は、2022年の同じ時期の倍以上に。国産の細ネギも、約2倍に上がっている。

中国産で代用も…徐々に高騰
そこで、国産の3分の1ほどの価格で仕入れることができる中国産を代用。ただ、中国産も徐々に価格が上がっていて、野菜の仕入れにかかる費用は8月以降3万円から4万円ほど増えた。

ネギだけを変えて…営業努力
それでも店では商品の価格は据え置き、メニューによっては他の食材で代用して出費を抑えるなど、営業努力を続けている。客からは「高いながらもやりくりしてもらえて、こちらとしてはありがたい」との声も。

中国名菜姑娘飯店の引地健料理長は「お客様には迷惑かからないように、味と値段はそのままにして、ネギだけ変えている」と話した。

ネギ生産者は売上アップ
飲食店だけでなく、ネギは食卓に欠かせない。価格の高騰は、消費者にとって家計への痛手になり、買うのをためらう人も出てきそう。一方で、立場を変えてこの状況を見てみると、販売店からは「他の産地でとれない」「細くてもよい」と福島県内の生産者は、ネギの注文が増えたことで売り上げが上がっているという。

猛暑の影響で細いネギ
福島県内のスーパーや飲食店などに、ネギを卸している福島県三春町の「ふぁーむ・わたなべ」。代表取締役の渡辺俊史さんは「暑いせいで、細いサイズのものが多かった。ネギは気温が27℃を上回ると、生育が止まってしまう」と話す。

お盆を過ぎても気温が高い日が続いたことで、2023年の夏場は太さが通常の3分の1のネギが例年より多い傾向だった。

他産地でとれず注文増加
最近になり、太さが1センチ以上のものが収穫できるようになったというが、全体の流通量が減っている分、販売価格は上がっている。

渡辺さんは「暑さの影響で他のところでネギがとれない。”どんどんネギを出してほしい””細くてもかまわない”という注文をいただいたので、生産量、掘り上げ量としては、むしろ例年より多いくらいだった。例年に比べて弊社の場合、平均値で言うと販売価格は1.5倍程度」と話す。

生産するネギは関東産よりも価格が安く、これまで取り引きが無かった場所からも注文が入ったことで収益が伸びているそう。

平年より高い状況はしばらく…
ふぁーむ・わたなべの渡辺さんは「ネギの生育具合も、これから回復していくと思う。あとはどれだけ暑さに負けなかったネギが残るかってところになってくると思う。弊社は様子を見ながらうまい具合に捌いていく」と話した。

農林水産省によると「ネギ」については11月も出荷数が少ない状況が続き、価格は平年より高く推移しそうだという。
(福島テレビ)