各地で相次ぐ、高齢ドライバーの 「ブレーキ」と「アクセル」の踏み間違い事故。
ドライバー自身は踏み間違いを認識しているケースも多く、意識がハッキリとした状態で起きてしまう理由は何か。

人体の構造に詳しい杏林大学 理学療法学専攻の松村将司理学療法士に原因と、自宅で日々できる股関節のストレッチを聞いた。

股関節“可動域”は90度が理想

ーー年を重ねると股関節は硬くなる?

加齢によって股関節も膝関節も、関節全体が硬くなっていく傾向があります。

杏林大学 理学療法学専攻の松村将司理学療法士
杏林大学 理学療法学専攻の松村将司理学療法士
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股関節の理想的な可動域は、左右それぞれ45度、あわせて90度と言われています。

若年者でもこの領域を満たしていない人はいますが、少なくとも片側25度ぐらいは開いているので、それぐらいは目標とするところです。

ーー硬さはどうやって調べる?

股関節の硬さを調べる方法はいくつかありますが、簡単にできる方法の1つとしては、椅子に座った状態で股関節の可動域を調べる方法です。

(イメージ)
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椅子に座った状態で骨盤や上半身、さらに太ももを動かさないようにしたまま、膝から下を外に開いたり、内側に閉じたりする動きで、股関節の「内旋」という動きや「外旋」という動きを測定します。

この時、骨盤や上半身が動きやすくなりますが、手で腰を抑えるとしっかり止まるので、股関節の可動域が測定できます。

この動きは運転中にバックする時などに関係してくる動きです。

(イメージ)
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ーー計測時の注意点は?

測定する時は、頭や体が傾いてしまったり、骨盤が左右に動いたり、膝が浮いたり、太ももが外に開いたり内側に閉じてしまわないよう注意が必要です。

座ったり、寝た状態でのストレッチ

年を重ねるにつれ狭くなる股関節の可動域。

高齢ドライバーの事故では、右後ろを見ながらバックする際に、股が閉じきらず、ブレーキを踏もうとしているのにアクセルを誤って踏んでしまうケースが多発している。

では、どうしたら股関節の可動域を広げることができるのか。

椅子に座った状態でできるストレッチ(片方の足を膝にのせて前屈)
椅子に座った状態でできるストレッチ(片方の足を膝にのせて前屈)

ーー股関節の可動域を広げるために普段からできることは?

1つは座った状態で、片方の足を膝に乗せて上半身を前に倒す運動です。

または、座った状態でも寝た状態でも良いので、両膝を揃えて左右に動かすストレッチです。

両膝を揃えて左右に動かす
両膝を揃えて左右に動かす

寝た状態で膝を立てて足を左右に倒すような運動は、運転中にバックする時の姿勢と似ているので、良いかもしれません。

可動域を上げるためにしっかりとストレッチして動かすことが大事です。

(イメージ)
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ーー可動域に男女の差はある?

男性は、股関節の構造上、女性よりも「あぐら」ができる方が多いです。
一方、女性の股関節は「割座(いわゆる女の子座り」が男性よりもできます。

女性は内股の人が多いことからもわかるように、外側に振れても内側に行きにくい人が多いです。

(イメージ)
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バックする姿勢を確認するためには、足を固定して膝を動かさず、どれだけ体をひねって後ろが見えるかを測定することも大事です。

振り向いた時に膝が一緒について行ってしまうのはダメな例です。
膝が固定できていれば、股関節に可動域があると判断できます。