10月20日の「リサイクルの日」に合わせ、銀座のH&Mでワークショップが開催された。
ファストファッションによる服の大量廃棄を問題視し、3つの体験を通して服の再利用を考えることが目的だ。専門家は、循環型ビジネスへの転換と、消費者の積極的な参加が求められると指摘している。

服の再利用を考えるイベント

10月20日の「リサイクルの日」に合わせ、銀座のH&Mで19日から開催されているワークショップ、「H&M Sustainability LAB」。

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「REWEAR(再着用)」「RECYCLE(リサイクル)」「REUSE(再利用)」の3つの体験が用意されている。

「REWEAR(再着用)」では、着なくなった服に、数種類の中から選んだ文字を塗布することで、一点物にリメイク。
「RECYCLE(リサイクル)」では、納品で使用した段ボールを使った小物製作。
「REUSE(再利用)」では、服の端材やドレスのパールなどを使った、アクセサリー作りが体験できる。

参加者:
子どもにプレゼントしようかなと思って作った。“お譲り会”というのを色んな児童館でやっていて、自分(の子ども)が着なくなっていく小さい服を、次の子に渡す

参加者:
(持ち込んだ服は)物足りなさがあって、今回やってもらうことでメイン級にあがってくる

“服の再利用”を考える目的で開催された、このイベント。背景にあるのは、ファストファッションの台頭により問題視される、服の大量廃棄だ。

世界では毎年、約9200万tにのぼる服が廃棄されていて、ユニクロや無印などアパレル業界全体で、古着のリユースやリサイクルに取り組む動きが加速。
H&Mでも10年前から、古着の回収ボックスを設置するなど、環境に配慮した対応を進めている。

H&M PRプロジェクトマネージャー・田中都さん:
できるだけ長く、そのままの状態で使うことが一番環境負荷が低い。回収した後の仕分け・リサイクルの技術も、これからどんどん進んでいくと思うので、捨てるではなく持ち込むという選択肢をしてもらえたらいい

体験を通じ、服の新たな価値を学ぶワークショップは、21日まで開催されている。

日本のリサイクル率は低い

「Live News α」では、コミュニティデザイナーで、studio-L代表の山崎亮さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
H&Mによる、循環の輪を広げようという試み、山崎さんはどうご覧になりますか?

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
日本においては、着なくなった服のリサイクルがまだまだ普及していない。その意識を高める方法として、新しくアップサイクルを体験できるワークショップを開催することは、意義深い。
このイベントを通じて、服のリサイクル率の低さを多くの人に知ってもらうとともに、アップサイクルなど、資源を再活用することの愉しさを知ってもらえると良いだろう

堤 礼実 キャスター:
こういった取り組みが広がることで、循環型の経済へと移っていけるといいですね

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
いま、多くの先進諸国ではサーキュラーエコノミーを標榜している。
製品を作るときから、それがまた製品へと生まれ変わるような、循環を意識したものづくりへの転換を進めようとしている。その中には、服を購入して所有するのではなく、サブスクで一定期間使い、使わなくなったら返却するというサービスもある。
こうした取り組みによって、どれだけ売れるか分からないから多めに作っておこう、という製造業ではなく、サブスクの状況を見ながら製造量を調整したり、古くなった衣類を循環させたりすることができる

消費者の意識改革が重要

堤 礼実 キャスター:
ビジネスの在り方や、その展開の仕方も変わることが求められているようですね

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
大量生産・大量消費、そして大量廃棄から転換して、循環型の新たなビジネスモデルが実現しつつあるが、そこには企業だけではなく、消費者も参加することが求められている。メーカーが変わるだけではなく、消費者もまた物を大切にしたり、リサイクルなどに参加していく必要がある。
今回、H&Mがやろうとしていることは、意欲的な取り組みとして見ることができる一方、そもそも服を作り過ぎていないか、その服がどうなっていくのか、企業として向き合うことが求められている。「もったいない」を減らせるように、消費者が参加する形で、循環型のビジネスにどのように展開していくのか、その取り組みに注視していきたい

堤 礼実 キャスター:
実際に、再利用によって新しいものに生まれ変わらせるという循環を体験することで、意識改革にも繋がっていくのではないでしょうか。物を手放す時に、「捨てる」以外にも「再活用する」という選択肢が、更に広がっていくといいですね。
(「Live News α」10月19日放送分より)

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