客が暴言をはいたり、理不尽なクレームをつける「カスタマーハラスメント」。「おもてなし」を大切にする旅館やホテル業界は長年、対応に悩まされてきたが、こうした迷惑な客の宿泊を拒否できる法律が12月から施行される。ではどんな行為がカスハラにあたるのだろうか?関西屈指の観光地・有馬温泉を取材した。

理不尽なクレームに悩む宿泊業界

江戸時代から続く老舗旅館にとって、葉の色づくこれからが最も魅力高まる季節だ。

ねぎや陵楓閣 増田友客室管理部長:
有馬の「金泉」と呼ばれる温泉なんですけれども、その上にもみじの木があります。比較的近いところに自然があります。

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もみじを間近に眺めながら有馬の湯に浸かれると好評だが、時には苦情を受けることもある。

ねぎや陵楓閣増田友客室管理部長:
落ち葉が入っちゃったり、どうしても虫が入ってきたら、うまくお客様の気持ちを収められないということも、過去にはありました。

掃除や害虫駆除に力を入れているが、防ぎきれないこともある。

そのような時、稀に執拗なほど叱責する客がいて、「誠意を見せろ」と迫られる事態もあったという。

それでも…「私どもは誠心誠意ご接待するだけなので」と話す。

“宿泊拒否”が可能に

「客のひどい暴言には耐え続けるしかない」と、いわゆるカスタマーハラスメントに悩んでいた全国の宿泊施設の声を受け、厚生労働省が法改正に動いた。

2023年12月から、カスタマーハラスメント、“カスハラ”が繰り返された場合に、旅館やホテルが迷惑客の宿泊を拒否できるようになるのだ。

先週の検討会では、カスハラになる事例が示された。

例えば、「従業員に土下座での謝罪を求める」「契約にない送迎を求める」など、他の客へのサービスができなくなるおそれのある要求を“繰り返す”ことが対象となる。

「不当な宿泊料の割引を繰り返し要求」される事態は、この旅館でも全国旅行支援をめぐって起きていた。

ねぎや陵楓閣増田友客室管理部長:
免許証などの本人確認が必要だったんですけれども、お忘れになられた方には割引ができないことをお伝えすると、すごく怒られて「融通が利かない」「取りに帰れっていうんか」って。(紙を)投げられたりして、すごく悲しかったです。

今後、このような時には宿泊を拒否できるものとみられる。

ねぎや陵楓閣 増田友客室管理部長:
何かあった時の後ろ盾という形にはなるかな…と思います。

旅館にとって安心材料となるかもしれない今回の法改正だが、一方で宿泊客からの声は様々だ。

宿泊客:
日本本来の旅館の“あれ”としては逆な方にいくのかなと思いますけれども。昔だったらどんなお客様に対しても低姿勢で。

宿泊客:
私は必要だと思います。無理難題をされると、ホテルや旅館の持っているもの自体が壊されていく。それはあってはいけないと思いますね。

宿泊客:
突っぱねる(宿泊拒否する)とホテル・旅館の評判が下がるんじゃないかとか。いま書き込みで色々とあるので。経営する方にしたらかわいそうだと思いますよね。

また、ねぎや陵楓閣の増田さんは「受け止めるべきお客様のお言葉のどこからが“カスハラ”なのか、線引きも宿泊の断り方もすごく難しい」と話している。

旅館の方もまだ手探りという感じだが、利用客側も協力して、お互いが気持ちよく付き合っていける関係になることが求められているようだ。

(関西テレビ「newsランナー」2023年10月18日放送)

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