静岡県議会は10月13日に9月定例会の最終日を迎え、川勝知事が提出していた給与減額に関する条例案などが午前中の内に可決され閉会するはずだった。だが、本会議が終わったのは午後7時。一体なにがあったのか。

給与減額条例案 可決の公算大から一転

川勝知事をめぐっては2021年、選挙応援で御殿場市について「あちらにはコシヒカリしかない」などと発言したことが発端となり県議会から辞職を勧告された。

すべての始まりはコシヒカリ発言(2021年10月)
すべての始まりはコシヒカリ発言(2021年10月)
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この時「年末の手当・ボーナスとか12月の俸給は全額、県民に返す」と公言しながらも実行していないことが問題視され、川勝知事は9月定例会に給与やボーナスを減額する条例案を提出している。

条例案の審議を付託された県議会 総務委員会では「給与減額は知事による発案であること」や「給与を減額しても2021年の辞職勧告に何ら影響を及ぼさないこと」など5項目を盛り込んだ“知事に猛省を促す”附帯決議を付けた上で、条例案を「原案通り可決すべき」との報告がまとめられた。

総務委員会に召致された川勝知事(10月4日)
総務委員会に召致された川勝知事(10月4日)

議会の過半数を握る最大会派・自民改革会議も条例案に賛成する方針を固めたため、9月定例会最終日はスムーズに進行されるはずだった…当日の朝までは。

新聞報道めぐり議会が空転

10月13日。複数の新聞社が、前日に行われた経済界との面談の中で川勝知事が現在開催中の文化事業・東アジア文化都市2023に関連し「三島市に継承拠点を作りたい」「土地を物色している」という旨の発言をしたと報道。

だが、継承拠点に関する事業については予算化されていないどころか、その構想自体が地元県議や所管する県議会の常任委員会に報告すらされていない。

知事肝いりの事業・東アジア文化都市(2023年5月)
知事肝いりの事業・東アジア文化都市(2023年5月)

一方で、川勝知事は給与減額条例案の提出にあたり、これまでの自民改革会議との軋轢を念頭に「議員とのコミュニケーションを十分に図りながら、公人・知事としての職責を果たすとの思いで県政運営に取り組む」と議場で述べたばかり。

このため自民改革会議の議員総会で川勝知事の発言や姿勢に対する異論が噴出し、本会議は午前10時半の開会直後に休憩を求める声があがった。

発言の真意は?逃げ切りは失敗か…

約5時間半の中断を経て再開された本会議。知事の発言に対する緊急質問が行われ、自民改革会議の河原崎聖 政調会長が「議会軽視の姿勢があからさまになったと受け止めざるを得ないが知事の認識は」と質すと、川勝知事は「東アジア文化都市の取り組みを一過性に終わらせることがないよう、そのレガシー創出に向けた私の思いを語ったもの。1つのアイデアに過ぎず何も決まっていないのが現状」と返した。

緊急質問した自民改革会議・河原崎聖 政調会長(10月13日)
緊急質問した自民改革会議・河原崎聖 政調会長(10月13日)

河原崎政調会長は、知事の答弁に対して「発言の重みを十分にわかっていない」と指摘した上で「現在進行形の事業で評価はまだ定まっていないものに対してレガシーと言うこと自体が時期尚早」と苦言を呈した。さらに「今回の発言は不穏当ではないという認識か」と畳みかけたが「不穏当なものであるとは思っていない」と川勝知事が逃げ切ったかのように思えた。

ところが直後に新たな問題が露見する。12日の経済界との面談を取材したテレビ局が音声データを放送。そこにははっきりと、川勝知事が「いま土地を物色している」「国の土地を譲ってもらおうと、いま詰めの段階に入っている」「買わないで定期借地で借りる」などと述べている様子が記録されていた。

次に不適切発言あれば辞めると言うが…

自民改革会議は川勝知事に対して睨みを利かせるため全会派が一致して附帯決議を可決することを優先し、改めて給与減額条例案などに賛成する方針を決めたが、本会議で行われた議案への賛成討論では勝俣昇 議員が緊急質問での川勝知事の答弁について「虚偽答弁と言わざるを得ない」と指摘し、「議会との信頼関係を取り戻すことは程遠い話」と突きつけた。

9月定例会はすべての議案や決議案について可決・同意して閉会したが、“議会軽視”発言に関しては総務委員会で閉会中審査することが決まった。

議場がある静岡県庁 本館
議場がある静岡県庁 本館

ここのところ「再び不適切な発言や出来事があれば辞職する」とたびたび口にしてきた川勝知事。

今回の発言について県議会は今後どういう判断をしていくのか。知事と対峙してきた自民改革会議だけでなく、知事を支えてきた第2会派・ふじのくに県民クラブの姿勢も県民は見ている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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