山形・庄内町の団体が今、町の施設を活用して魚の養殖に取り組み、ブランド化を目指している。釣り好きな若者たちが始めた取り組みで、町の自然の恵みを生かしたおいしさが大きな売りと胸を張っている。

「いつかは養殖をやってみたいなと…」

庄内町立谷沢にある町の「淡水魚養殖施設」。

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10月5日、2023年に本格デビューした山形県のご当地サーモン「ニジサクラ」の水揚げが行われていた。町内で理容業を営む長南佳佑さん(36)たちのグループが、県の許可を得て養殖している。

月山鱒の会・長南佳佑さん:
「ニジサクラ」は、ニジマスとサクラマスを交配させて県が作り出したサーモン。いつかは養殖をやってみたいなと思いながら、そこにちょうど舞い込んできたのがこの話。一瞬で食いついた

釣りが大好きで、これまでも仲間たちとともに、SNSに釣り関連の動画の投稿などをしていた長南さん。養殖施設の指定管理者が撤退したと聞き付け、地元の同世代の仲間たちと「月山鱒の会」を立ち上げ、自ら管理者になったのが3年前の10月だった。

県の技術指導などを受け、養殖が軌道に乗り始める中、ニジサクラのほかにもう一種類、力を入れている魚がある。

“川臭さ”がない! その名も…

月山鱒の会・長南佳佑さん:
ガッサーモン、月山の「がっ」とサーモンを合わせた

赤い縦じまが鮮やかなニジマス「ガッサーモン」。施設では今、ニジサクラの5倍の約1万匹を養殖していて、「ご当地サーモン」としてブランド化を目指している。

エサにこだわり、魚に臭いが移らないよう臭みの少ないものを厳選し、「コメ油」も独自に混ぜて米どころならではの特色も。加えて養殖に使う「水」は、国の「平成の名水100選」にも選ばれた清流・立谷沢川のかけ流しだ。

月山鱒の会・長南佳佑さん:
良い水が常にあるのが庄内町の良い所なのでは

また、厳しい冬の寒さで成長が遅くなる一方、身の締まりは良くなるそうで、町の自然が生み出すその味も特徴的だ。

月山鱒の会・長南佳佑さん:
淡水魚となると川臭いイメージが強いが、それが皆無。油がギトギトしていない。おいしいおいしいってパクパク食べられる

養殖した魚をスーパーで販売

塩焼きを祭りで販売しおいしさをPRしたり、子ども向けのつかみ取り体験などを企画したりし、知名度も少しずつ上がってきている。

町内の若者が施設を引き継いでくれたことを応援し、町はプロジェクトを立ち上げ、2022年はふるさと納税で取水施設の整備費用を募り、寄付金は約5カ月で目標額に到達した。

庄内町 商工観光課・武田一人さん:
次世代の人たちが引き継いでくれるのはありがたい。今後の活躍、活動に大変期待している

販売されるスーパーを見学しに来た「鱒の会」のメンバー
販売されるスーパーを見学しに来た「鱒の会」のメンバー

養殖した2種類の魚は、町内のスーパーなどで販売されている。10月8日は養殖した「ニジサクラ」が初めて店頭に並ぶ日。長南さんたち「鱒の会」のメンバーも見学に来ていた。

実際にさばいてみると、切り身は鮮やかなオレンジ色で、目利きのプロでもある店のバイヤーもその味には太鼓判を押す。

ヤマザワ鮮魚バイヤー・加藤宏治さん:
ニジサクラとしてはそこまで大きい魚体ではないが、小さい割に脂乗りが良く、おいしく食べた

スーパーの特設コーナー
スーパーの特設コーナー

活動を応援すべく、店の一角には特設コーナーも設けられた。ニジサクラの刺し身のほか、ガッサーモンの塩焼き、アラを使ったアラ煮などいずれもその風味を楽しめる商品が並び、開店すると、利用客が足を止めて買い求めていた。

月山鱒の会・長南佳佑さん:
これからは量も作れるように、一般の方々に広く食べていただけるよう数も出していけるように、よりおいしく試行錯誤して魚を作っていけたら

釣り好きな若者たちの夢は、庄内町の自然の恵みを武器に小さな養魚施設から始まっている。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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