イスラエルによるハマスへの報復が続く中、近く大規模な地上侵攻を始めるとの観測もあり、緊張が高まっている。

10月10日放送の「イット!」では、現地の様子を中継で、詳細が明らかになってきた音楽フェス襲撃事件についてスタジオで解説した。

対ハマスで団結する市民たち

イスラエル・テルアビブで取材するFNNイスタンブール支局・加藤崇支局長が、中継で現地の様子をお伝えする。

ミサイル攻撃によって大きく破損した建物
ミサイル攻撃によって大きく破損した建物
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後ろの建物をご覧いただくと、ロケット弾の直撃により、上の部分が大きく破損している。中にいた人は、警報を聞いてシェルターに隠れたので助かったということで、今回被害者はなかったという。

イスラエルにはアイアンドームという防空システムがあるが、100%迎撃できるわけではない。そのため、ロケット弾が来る前には必ず空襲警報が流れ、新しい家や建物にはそれぞれの建物の下に地下にシェルターがあり、そこに隠れることで被害を最小限に抑えている。

市民の方に話を伺うと、「警報がある中での生活はかなりストレスがある」ということで、今回ハマスの攻撃があった関係で、ロケット弾のほか、テロリストが襲ってくるのではないかという、さらにストレスを抱えた生活をしているという。

普段は通勤中の人が多い午前10時前の町の様子は、がらんとしている。戦争が起きてから町に出ない人が増え、お店も休業が多くなっている。

その代わり、イスラエルの市民は団結していた。9日に取材した公園では、イスラエルの連帯を呼びかける文字、そして犠牲者を追悼する文字が書かれている周りに、ろうそくで火を灯していた。公園では軍に支援物資を届けようと呼びかけがあったが、一度に多くの人々が集まり、その結果支援物資が多く集まった。

また、病院が献血を呼びかけたところ、数時間待ちの列になって必要な量が1日で確保できていた。

さらに軍のスポークスマンによると、30万人の予備役を招集したところ、通常では約8割の集まりだと言うが、今回は約100%がすぐに集まり、既に前線で戦っている方もいるということだ。

現在、テレビとラジオは24時間このニュースを伝える特別放送をしていて、CMも入っていない。例えばロケット弾が飛んできた、隠れているハマスの戦闘員がいた、といった話があると、すぐにその放送で家に隠れることを呼びかけたり、シェルターに行くよう呼びかけたりしている状況だ。

市民の話を聞くと、攻撃のひどさに恐怖を覚える一方、団結して少しでも役に立ちたい、軍の役に立ちたい、そして勝つんだという気持ちを感じた。

音楽フェス参加者が人質に

スタジオでは、フジテレビ・立石修取材センター室長が解説する。

ハマス側は、予告がない空爆の場合は空爆のたびにイスラエル側の人質を殺害すると宣言している。つまり「人間の盾」として人質を利用し始めている。

こうしたハマスの攻撃の冷酷さを物語るのが、260人が殺害されたとされる「スーパーノヴァ」という野外音楽フェスの襲撃事件だ。

これに関して世界中の注目を集めている映像がある。映像には、この音楽祭に客として訪れていたイスラエル人女性ノア・アルガマーニさん(25)が映っていたが、ハマス側とみられる男たちに拘束され、バイクで連れ去られてしまう。

一緒にいた恋人も男らに拘束されて連行されていった。ノアさんは、連れ去られる瞬間に恋人男性に助けを求め、何か叫んでいる様子だ。

ニューヨークタイムズによると、ノアさんと恋人は、捕まる前に武装勢力から隠れて友人らに位置情報を共有し、イスラエル軍に助けを求めていたという。

ノアさんの家族は「iphoneを探す」機能でノアさんたちがガザ地区まで運ばれたことは確認したが、その後の消息がわからなくなっているという。

ハマス側はどんな理由で音楽祭を狙ったのか。この音楽祭はレイブパーティーと言われるタイプのもので、刺激の強いダンスミュージックが流れ、一晩中お酒も飲んで盛り上がる欧米で流行っているスタイル。ハマスのようなイスラム過激派から見ると、忌み嫌う対象でもあった。

ガザの近くで行われたこともあって、偶然攻撃したのではなく、狙いを定めていたのではないかとみられる。

音楽祭は、ハマスが実効支配するパレスチナのガザ地区との境界線から約6kmの農村部で開催されていた。ガザ地区と音楽祭は、極めて近い位置関係にあると言える。

そして、襲撃の詳細も分かってきた。海外メディアによると、まずハマスの武装勢力が一部、パラグライダーなども使って現地周辺に到着すると、武装したトラック4台が会場の出入り口を囲み身動きが取れない状態にしてしまった。

そして、出入り口を塞いだ状態で会場内で襲撃が行われた。

襲撃は朝から6時間続き、少なくとも260人が亡くなった。武装勢力は50人ほどだったという証言もある。若者が好きな音楽祭ということもあり、参加者は30歳未満が多かった。

こうした人質の解放に向けて、アラブの国々、そしてアメリカがどう動くのか、注目が集まっている。
(「イット!」 10月10日放送より)

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