「3年間テレビで観るだけだったので嬉しいです。区間賞でチームに貢献したい」

そう抱負を話したのは、明日9日(月・祝)に行われる、学生三大駅伝の開幕戦、「出雲全日本大学選抜駅伝競走(以下、出雲駅伝)」に5年ぶりに出場する城西大学のエース・山本唯翔(ゆいと)選手(4年)だ。

山本選手にとっては「最初で最後の出雲路」となる。

寮の自室でくつろぐ 城西大4年 山本唯翔選手
寮の自室でくつろぐ 城西大4年 山本唯翔選手
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山本選手が注目を集めたのが、今年の箱根駅伝。名物の往路「山登り」の5区で4人抜きの快走をみせ、区間新記録を樹立した。

チームの5年ぶりのシード権獲得に大きく貢献し、箱根駅伝シード校に与えられる出雲駅伝の出場権も手にした。

箱根駅伝で「山の妖精」と話題

山登りの走りもさることながら、さらに注目を集めたのが山本選手のキャッチフレーズだ。

これまで箱根駅伝の5区で大活躍をみせた山登りのスペシャリストは今井正人さん(順天堂大)、柏原竜二さん(東洋大)、神野大地さん(青山学院大)の3人。

彼らは“山の神”と呼ばれたが、山本選手は“山の妖精”と呼ばれて話題になった。

そんな話題となるきっかけとなったのが城西大学男子駅伝部監督の櫛部静二監督のエピソード。

箱根駅伝のレース中に、選手の後ろを走る監督車から「“山の神”にならなくていいから、“山の妖精”になろう」とゲキを飛ばしたのが始まりだという。櫛部監督は語る。

レースになると「スイッチ」が入る
レースになると「スイッチ」が入る

「彼は今までの人生で愚痴とか不満を言ったことがあるのかな、というくらい優しいタイプ。もともと選手の中でも“妖精”って言われていたみたいで。ただ、レースが始まるとスイッチが入って結果を残せる勝負強い選手です」

上半期のトラックレースでも、その勝負強さをみせつけた。4月の日本学生個人選手権10000mで優勝を果たすと、「学生の五輪」と言われるユニバーシティゲームズに日本代表として出場し、10000mで銅メダルを獲得した。

“標高3000m”の環境で1日12時間生活

山本選手の強さの秘密が、城西大学が力を入れている「低酸素トレーニング」だ。

駅伝部専用の低酸素室でトレーニング
駅伝部専用の低酸素室でトレーニング

櫛部監督も「国内の実業団や大学チームの中では一番環境が整っているのではないか」という男子駅伝部専用の低酸素室で、標高約3000mの環境を作り、ここで日々トレーニングを行っている。

心拍数モニターを見ながら体の状態もチェック
心拍数モニターを見ながら体の状態もチェック

低酸素の環境では、身体がより多くの酸素を取り込もうと最大酸素摂取量が増え、持久力の強化につながると言われている。

それだけでなく、山本選手は寮でも一部屋だけある低酸素部屋で生活しているという。

入口のプレートに「唯翔」と貼ってある寮の低酸素部屋
入口のプレートに「唯翔」と貼ってある寮の低酸素部屋

1日の半分、約12時間を富士山の七合目にあたる約3000mの環境で過ごし、「(レース中)凄くきつい場面でも粘れるようになった」とその効果を実感している。

学生ラストシーズンは「妖精から神」へ

4年生となり、さらに進化をとげる山本選手の大学最後の駅伝シーズンが、まもなく幕を上げる。

「箱根駅伝では、まだ何区を走るかわからないですけど、エース区間の2区を走ってみたいという気持ちもありますし、もし5区を走るのならば、今度は“山の神”になりたいです」

低酸素室でも駅伝の映像を見ながらトレーニング
低酸素室でも駅伝の映像を見ながらトレーニング

「そして出雲駅伝では、チーム目標は8位入賞ですが、もっと上を目指せると思っていますし、個人的には区間賞をとってチームに貢献したいです」

と、今までの“妖精”らしからぬ自信をのぞかせる。

9日(月・祝)午後1時5分に号砲を迎える出雲駅伝。

“山の妖精”が“山の神”の称号を目指すラストシーズンが出雲からスタートする。

「第35回出雲全日本大学選抜駅伝競走」
10月9日(月・祝)午後1時~フジテレビ系にて生中継