「出雲駅伝は駒澤、中央、そして青山学院の3校が優勝争い」
そう語ったのは全日本大学駅伝、箱根駅伝へと続く「学生三大駅伝」の開幕戦・出雲駅伝を直前に控えた青山学院大学の原晋監督だ。
「目標は学生三大駅伝優勝。まずは出雲駅伝で5年ぶり5度目の優勝を目指します」
10月9日(月・祝)に開催される出雲駅伝。そして続く大会への自信をのぞかせる原監督だが、今シーズン、青山学院の前評判は決して高くはなかった。
「箱根メンバー」卒業…原監督の危機感
今年の箱根駅伝で総合3位に入ったものの、メンバーの10人中7人が今春卒業。

新メンバーで臨んだ上半期のトラックシーズンでは、一定の成績は収めたが、ライバルの駒澤大学や中央大学と比べると、物足りない結果に終わっていた。
「このままだと今年のチームは箱根駅伝のシードも取れないよ」

上半期のチームミーティングでは原監督が学生たちに厳しい声をかけることもあった。
転機となったのが、7月末から始まった夏合宿。
異例の長期合宿から生まれた”強さと絆”
長距離ブロックの選手全員が参加して行われた一次合宿。
猛暑の影響もありスケジュールを前倒したことで、合宿としては異例の3週間にも及んだ。
しかし、その長期合宿が良い方向に進んだ。

原監督曰く「ポテンシャルが高く、速い選手は多いが、強い選手が少ない」という4年生が、練習で前を引っ張り、速さに強さが加わった。
さらに、合宿中はミーティングを重ね、今のチームに足りないものを学年関係なく、ぶつけ合ったという。
1年生で唯一出雲駅伝のエントリーメンバーに入った鳥井健太も本音を話した1人だ。

「選手層が薄いから絶対に走ってもらわないといけない選手がいる、という話になって、でもその人が走れなくなった時に負けを認めてしまうのが、すごく嫌なので『その人がいなくても勝てるくらいの実力を皆でつけていきたい』と話しました」
学年の壁を越え、夏合宿で生まれたチームの強さと結束力は、さっそく結果として表れた。

先月24日に行われた5000mの記録会で、青山学院の6選手が学生トップクラスとなる13分30秒台の好記録をマーク。
出雲駅伝のエントリーメンバー上位6名のチーム平均タイムでは、中央大学の13分34秒、駒澤大学の13分35秒に次ぐ13分36秒となり、一躍優勝候補へと名乗りをあげた。
この好成績を受けて、原監督が恒例の「作戦名」を発表した。

「今年の出雲駅伝の作戦名は『イット!大作戦』。 “一等”を目指して頑張ります」
自身が出演する番組とかけて2022年の箱根駅伝以来となる、学生三大駅伝での優勝を誓った。
”史上初”を狙う王者・駒澤
そんな青山学院大学に立ちはだかる最大のライバルが、昨季の学生三大駅伝で史上5校目の三冠を達成した駒澤大学だ。

世界の舞台で活躍する大エースの田澤廉は卒業したが、10000mで日本人学生歴代3位の記録を持つ主将の鈴木芽吹(4年)を中心に、ユニバーシティゲームズ5000m銀メダリストの安原太陽(4年)や、ハーフマラソン日本人学生歴代1位の篠原倖太朗(3年)、アジア大会5000m日本代表の佐藤圭汰(2年)など戦力は充実している。

今シーズンは達成すれば史上初となる『2年連続三冠』に挑戦する。
主将の鈴木芽吹は「出雲駅伝は大事な初戦。三冠を達成するには絶対に勝たないといけない」と偉業達成へ大会連覇を誓う。
中央大 選手強化の成果は
王者・駒澤大学を出雲メンバー上位6名のチーム平均タイムで5000mと10000mともに上回っているのが中央大学。

箱根駅伝が100回大会を迎える今年度に狙いを定め、選手を強化してきた。
チームのエースは学生三大駅伝で4大会連続区間賞獲得中の吉居大和(4年)。去年の出雲では1区を走り、2位に9秒差をつける圧巻の走りで区間賞を獲得した。

また弟の吉居駿恭(2年)が先月30日に行われたレースで、日本学生歴代10位の好記録をマーク。悲願の「出雲路初制覇」へ準備は整った。
全国のチームに「三冠」への挑戦権
出雲駅伝は、今年の箱根駅伝でシードを獲得した上位10校に加え、各地区の選考レースを勝ち抜いた7校、そしてアメリカ・IVYリーグ選抜など、選抜4チームを加えた計21チームが参加する。

全国のチームに箱根駅伝予選会の出場のチャンスが与えられ、全国のチームに三冠への挑戦権がある今季の学生三大駅伝。
9日(月・祝)午後1時5分の号砲とともに、戦いの幕が上がる。
「第35回出雲全日本大学選抜駅伝競走」
10月9日(月・祝)午後1時~フジテレビ系にて生中継