薩摩の刀工“波平行安(なみのひらゆきやす)”の名が刻まれ、国の重要文化財にも指定されている日本刀が鹿児島市で展示された。多くの観覧者でにぎわう背景には意外な理由があった。
名刀が22年ぶりの“地元展示”
鹿児島市の県歴史・美術センター黎明館で9月29日から11月5日まで開催の企画展「南北朝の動乱と南九州の武士たち」。争乱が相次いだ激動の南北朝時代、南九州の武士たちはどう戦い抜いたのか、貴重な資料をもとに読み解く。
その中で、期間限定で特別展示された日本刀がある。
この記事の画像(6枚)薩摩の刀工“波平行安”が鎌倉時代初期に手がけたとされるもので、きめ細やかな肌と反りの深さが特徴。“波平”が刻まれた最古の刀で、その名は「笹貫」。
「笹貫」の名は、鹿児島市電の電停やその周辺の地名として今も残っている。この「笹貫」は国の重要文化財として京都国立博物館が所蔵しているが、22年ぶりに地元・鹿児島で展示とされた。
目を凝らすと、刀身には切れ込みが。実戦での使用をうかがわせる。
人気の秘密は“擬人化”
この刀を一目見ようと、開館直後から訪れていたのは多くの女性たち。じっくりと「笹貫」を鑑賞していた。なぜ彼女たちはこんなにも「笹貫」に夢中になっているのか。
観覧に訪れた人:
ゲームの影響で見に来ました
観覧に訪れた人:
ゲーム関連で本物も見てみたいと思って3人で来た
日本刀を擬人化した人気のオンラインゲーム「刀剣乱舞」に、この刀をモチーフとしたキャラクターが登場していて、そのファンたちが訪れていたのだ。
観覧に訪れた人:
きれいすぎて言葉が出ない。360度で見られるのがまたとない機会で楽しかった
観覧に訪れた人:
地元の刀が地元に来てくれたのがすごくうれしい。きめ細やかな感じで傷もあって使われた感じがある。実際に見られてすごくよかった
中には、中国から訪れたファンもいた。「笹貫」をモチーフとしたキャラクターのぬいぐるみを持参する熱狂ぶり。「中国から来た。薩摩の歴史と日本刀『笹貫』が好き。初めて日本刀を見た。とても美しい」と感激した様子だった。
「笹貫」が“イケメンキャラ”として国内外の女性ファンに愛される時代が来ようとは、今ごろ波平行安も、さぞ驚いているに違いない。
(鹿児島テレビ)