富山県の私鉄、富山地方鉄道の複数の路線が乗り入れる富山市の南富山駅。道路や土地の形状、周辺の交通事情から、朝の時間帯の駅前は多くの人と車が行き交い、大変な混雑となる状態が長年続き、駅周辺の利用者も危険を感じている。

車と人がすれすれ…混雑する朝の駅前

通勤、通学のため、多くの人が利用する朝の南富山駅。平日は午前7時ごろから利用者が増え始め、混雑は7時半ごろにピークを迎える。

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通勤・通学ラッシュの南富山駅前には電車を待つ人で長い列ができている。列は道路まではみ出しそうな勢いだ。

朝の駅前は電車を利用する学生に加え、子どもを駅まで送り届ける車、また、国道41号線など大通りへの近道として道路を通り抜ける車が入り乱れる状態。

駅前一帯の混雑について利用者はどう感じているのか。通学で利用している高校生に話を聞いた。

通学路として利用している高校生:
車通りが多いところなので危険だな思う

取材中、何度もあったのが、車が電車を待つ列の横すれすれを通るシーン。他にも車の間を縫うようにして通る自転車や、車同士があわや接触しそうになる瞬間も。

この状況についてドライバーは「車と歩行者がどうしても交差してしまう場所なので、自分が運転するときは他の道路よりも、より注意するようにしている。決まりみたいなものが少ないから、みんなもうやりたいように…」と話した。

道路と“一体化”している駅前広場

ドライバーがそう感じるのも無理はない。駅前の広場は、道路との仕切りがなく一体化している。

車線の表示もなければ、駐停車スペースやロータリーが整備されているわけでもなく、車や歩行者、自転車がそれぞれどこを通ればいいかよくわからない状態となっている。

これについて南富山駅を管理する富山地方鉄道総務課・稲場大地さんは「瞬間的に市内電車を待つ人の列が延びて、道路と近いところまで列が延びてしまい、少し危ない状況になっているのかなという認識はある」と話した。

効果的な整備は難しい現状…

では、なぜ富山地鉄は駅前の土地を整備しないのだろうか?

富山地方鉄道総務課・稲場大地さん:
敷地が限られている。地鉄だけが路面電車の乗り場を人が余裕をもって待てるくらいに広げても、その分道が狭くなるとか、送迎スペースをどうするのかという話は当然出てくる

区切りのない駅前のスペース、実は線路側が富山地鉄、反対側は富山市が管理している。富山地鉄の所有する細長い敷地だけでは、効果的な整備は難しいのが現状だ。

富山地方鉄道総務課・稲場大地さん:
駅は街の機能の一つ。市道を管理する富山市や地域の人の考えも聞いたり、全体として良い駅を作っていきたい

一方の富山市も周辺の交通事情を把握していて、9月の市議会での答弁でも「課題がある」とした。

富山市活力都市創造部・深山隆部長:
歩行空間や駐停車スペースが明確となっていないことによる、交通面での安全性の確保に課題がある。課題の洗い出しを行い、交通管理者、警察などと共有していくことが必要であると考えている

富山市は2023年度、地域住民を中心に、地鉄などと協議会を設置。交通課題の解決を含めた南富山のまちづくりのビジョン策定に乗り出している。

地元の有志でつくる「南富山まちづくりを考える会」は、地元の案をまとめ、11月の協議会で示すため、大詰めの段階を迎えている。

南富山まちづくりを考える会・松山朋朗会長:
90%以上が通過交通。通過交通を減らすような仕組みを我々で提案するために、ビジョンを語り合っている。交通量を減らすためには道の形を変えるとか、街路樹を増やすとかいろんな方法は取れると思う。市の道路なので、我々でどうこうできることではない。協議会で合意を得て進めていければいいなと

「無法地帯」と話す人も…

よくこの道を通るというドライバーの中には、朝の時間帯は無法地帯だと話す人もいた。「決まりがない」とか「無法地帯だ」とドライバーが感じる原因は何なのか。

改めて整理をすると、1つ目は、駅の敷地と車道に区切りがないこと。

列はどこまで延びていいのか電車を待つ人はわかりづらい上に、送迎の車もどこまで車で入っていいのかよくわからない状態だ。駅の敷地に車が入ってしまえば、自然と人と車が交錯する形になる。

車線表示がないため、直進の車が2台横に並ぶというあり得ない光景も…
車線表示がないため、直進の車が2台横に並ぶというあり得ない光景も…

2つ目の原因は「車線の表示がないこと」。10月3日朝の様子では、直進車線と右折車線を示す表示がないので、車はいろんな角度から縫うように行きたい方向に行く。

その結果、行く先の道は1台しか通れないのに、直進の車が2台横に並ぶという普通ではありえないことが起こったりする。

一刻も早く待たれる危険な状態の改善

このような状態になったのはいつごろからなのか…。

富山市内を走る路面電車(富山駅)
富山市内を走る路面電車(富山駅)

南富山駅は富山市内を走る路面電車が発着する他、富山地方鉄道の不二越・上滝線が止まる駅で以前から混雑しやすい状況になっていたが、特に混雑がひどくなったのは、2020年3月に富山駅で分断されていた南北の路面電車が接続されて直通化し利用者が増えたからと言われている。

一刻も早い危険な状態の改善が待たれるが、市は、まだ街づくりのビジョン策定の段階なので、時間がかかる見込み。

今後、土地や道路の整備、車線や標識の設置などが行われることになると思われるが、それまではこの状態が続くため、警察でも南富山駅近くで白バイが交通違反を見張るなど対策をとっている。

南富山駅を通勤、通学で利用している人は通り慣れている人が多いからか、これまでに大きな交通事故は起きていないのかもしれないが、車を運転しているドライバーには危ない所だという意識を持ちながら、心にゆとりを持った運転が必要な状況が続く。

(富山テレビ)

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