7月の大雨で甚大な被害が出た佐賀・唐津市の山間部。崩落した道路は応急処置のみで放置状態。土砂で農業用水路がふさがれ井戸水で生産を続けている農家もある。進まない復旧に、住民には不安と焦りが募っている。
道路の崩落は“応急処置”のみ
9月18日の唐津市七山。

車道沿いの土砂や流木の高さは2メートルを超えている。
唐津市の山間部・七山では大雨による通行止めはほとんど解除され、電気や水道などのインフラ整備もほぼ完了した。

一方、崩落した箇所はいまだ応急処置のみ。2カ月以上たっても土砂は崩れたままで被害の大きさを物語る。
唐津市七山 池原地区・諸熊道晴区長:
2カ月半で進んだことはほぼないね

7月に九州北部で発生した大雨。斜面や道路の崩落など、県内の被害額は約360億円に上っている。
土砂でふさがれた農業用水路
七山のトマト農家・石川農園は、7月の大雨でハウス内の全てのトマトが雨水に浸かった。「もうやっぱり水は怖いね。しょうがないね。自然災害だから。こればかりはね」と肩を落とす。

流れ込んだ土砂が水路をふさぎ、水を逃がすことも、くむこともできなくなり、現在は井戸水をくみ上げながら生産を続け無事に出荷ができるようになった。

石川農園:
水がはけないところはやっぱり調子が悪い。どうにか持ちこたえた。水は欲しい、やらなければいけない悪循環。収量は少ないかな、今年は
水路の復旧はこれからで、ようやく土砂の撤去に向けた計測が始まる予定だ。一方、浸水被害はハウスだけではなく自宅にも。

石川農園:
収穫はしないといけない。家は片づけないといけない。稼がなければいけない時に災害があって、えっという感じ。皆さんに助けて頂いて、ボランティアさんたちに本当感謝ですね。人間の手って優しいね。もう感謝、感謝

「そこから土砂が流れこんできて、ここらへんまで泥がいっぱいありましたもんね」と語るのは、夫婦で農園を営みスモモなどを生産する鶴田堅市さん。この農園も大雨で大きな被害を受けた。

幸いにも収穫が終わった直後だったが、大雨で土砂が流れ込み、スモモのハウスは何カ所も柱が折れた。大雨から2カ月後、9月11日にボランティアの力を借りてようやく土砂を撤去した。

七山では農作物や関連施設の被害は180件にのぼった。そうした中、被災した農家を支援しようと地域おこし協力隊員が中心となり行われたのが、約1カ月間のクラウドファンディング。
集まった432万円は、申請のあった農家に均等に配る予定で、9月20日時点で14件の申し込みがあった。
復旧工事は来年以降の見通し
政府はこの大雨災害を激甚災害に指定。国の補助率を引き上げ、道路や農地の早期復旧を目指しているが、現場からは長期化への懸念の声が上がる。
唐津市七山 池原地区・諸熊道晴区長:
市からは完全復旧にはおおむね2年は待ってくれと言われている。1年で終わらないよ、工事の量が多いしね

10月から被害箇所の審査が始まり、工事は2024年以降になる見込みだ。
唐津市七山 池原地区・諸熊道晴区長:
審査が通るのか通らないのか早く通告してほしい
「見捨てられないか心配」
審査では山と隣接した農地に土砂が滑り込んだ場合、補助金が出ない可能性が高く、自力で再建する必要がある。審査も始まっていない中では来年の見通しが立たず、住民には不安や焦りが募っている。

唐津市七山 池原地区・諸熊道晴区長:
あまりにも災害の数が多すぎて、市とか県とか優先順位があるだろうから、見捨てられないか心配
災害から2カ月以上がたつが、農家の復旧はこれからで、長期化する見通しだ。現場には多くの課題が残っている。
(サガテレビ)