7月、佐賀県を襲った大雨は山間部の農家にも甚大な被害をもたらした。道路や農業設備も破壊され復旧は困難を極めている。こうした中、復旧資金を調達しようと2年前に移住してきた女性が活動を始めている。

農業用ハウスが全て浸水

それはあっという間の出来事だった。7月に佐賀県を襲った大雨は、局地的に甚大な被害をもたらした。

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特に山あいの唐津市の七山地区では、流れ込んだ土砂が道路を寸断するなど交通インフラが破壊されたほか、農家の作物だけでなく、農業用ハウスをはじめとする設備にも影響がでた。

トマトを栽培する石川農園では、10日に付近で土砂崩れが発生。一時農業用ハウスが全て浸水した。トマトは11月ごろまで収穫が続く予定だが、まだ年間の収穫量の1割程度しかとれていない。根の状態もわからない中、腐らないようにするため復旧作業を続けるしかない。

また、トマトに与えていた川の水も濁って使えず、井戸水をくむポンプを数十万円かけて購入。農園の石川さんは「土砂をすべて撤去してもらわないと今後ここで農業はできない」と話す。

地面の陥没や道路の崩落も

佐賀のオリジナルアジサイを開発、出荷する富岡園芸も大雨の被害にあった。

富岡園芸・富岡和彦さん:
(10日)朝5時くらいに集落の人たちが慌てて外をバタバタしていたので外を見たらですね、道の方が川の状態になっていて、これは大ごとだと思った。

山沿いに建てられた富岡さんの農業用ハウスには山から大量の雨が流れ込んだ。

富岡園芸・富岡和彦さん:
(10日)昼から確認にきたらあちこち崩れたり、土砂崩れとかで川の方に流れたりしていました。

花への被害は無かったものの、周囲では複数の場所で地面の陥没や道路の崩落が発生。陥没した地面は業者でないと直せない状況で、復旧には時間がかかる。

富岡園芸・富岡和彦さん:
ほかの農家がハウスごと流されたりとか、田んぼが崩れたりとか、農作物にはすごい被害があった。

“クラファン”で復興資金調達へ

被害からの復旧を早めようと立ち上がった人がいる。七山地区に住む地域おこし協力隊員で福岡県出身の野田早百理さんだ。

夫と3人の子どもがいて、子育てに適した移住先を探していた野田さんは、地場産品の開発やPR活動などを担いながら定住する「地域おこし協力隊員」として2年前に家族でこの地区に来た。

地域おこし協力隊員 野田早百理さん:
場所とわたしたちが合っていたというのもあって、来て半年後くらいにはすごく気を許せる友達も何人もできた。今回のことはみんなが正直めちゃくちゃ落ち込んだんですよ。

「これまでお世話になった七山に恩返しをしたい」と大きな被害に居てもたってもいられなくなった野田さんは、七山の現状を発信する動画を作成、公開し、それを見た人たちからクラウドファンディングで復興資金を調達することを決めた。

地域おこし協力隊員 野田早百理さん:
きょうは桑原地区の加茂健さん・裕子さんご夫妻の畑に伺わせていただいています。今回大雨で被害を受けた畑を見せていただけますか?

この日撮影で訪れた加茂健さん・裕子さん夫妻のトウモロコシ畑では、大雨の影響で3,000本ものトウモロコシに被害があった。畑の入り口にあった柵も土砂で壊れ、そこからアライグマやイノシシが出入りするようになり、トウモロコシを食い荒らす被害も出ている。

加茂さん:
おいしい野菜ができたと手ごたえを感じていたときにこれだったので…。

地域おこし協力隊員 野田早百理さん:
クラウドファンディングをやらせていただいているけど、本当に加茂ご夫妻にはお世話になっているから、本当に少しでもいいから…。

地域おこし協力隊員 野田早百理さん:
野菜を作るのが上手、フルーツを作るのが上手という方が今その作業ができない。お仕事ができずに修復をしたり、土砂をすくったりされているということが、外から見ていて悔しくて…。

今後も続く復興への活動

立ち上げから半月たち、支援総額はすでに300万円を超えた。支援金は8月15日まで受け付け、被災した七山の農家支援に充てられる。少しずつ広がっていく支援や関心の輪が復興への大きなうねりへとつながっていくように、野田さんの活動はこれからも続く。

地域おこし協力隊員 野田早百理さん:
わたしが最大限できることを力として発揮したら、みんなの役に立つんじゃないかと信じていて、みんなの喜ぶ顔が見たいからやっている。

(サガテレビ)

サガテレビ
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