富山・魚津市の遊園地、ミラージュランドの大観覧車が、10月10日から塗装工事のため運転休止となる。“お色直し”を前に、観覧車のある風景を通して魚津の魅力を発信しようと写真を撮り続ける男性の思いを取材した。

観覧車を撮り続ける魚津市のカメラマン

高さ66メートルの大観覧車の中に響く、富山を代表する越中おわら節の哀調帯びた胡弓(こきゅう)の音色。

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カメラを向けるのは、魚津市の黒崎宇伸さん(55)。2019年からミラージュランドの観覧車をテーマに写真を撮り続けている。

黒崎さんの本業は、約90年続く銭湯の3代目だ。若い頃、田舎が嫌で富山を飛び出した黒崎さんは、父親の死をきっかけに富山へUターン。バイクの事故で負ったケガのリハビリで近所を歩き、身近な風景を撮り始めたのをきっかけに、これまで見えなかったふるさとの魅力にのめり込んでいった。

黒崎さんの作品は、世界最大級の天体写真コンテストで2度入賞。2023年も、日本人でただ一人、入賞を果たした。

天体写真コンテストで入賞した黒崎さんの作品
天体写真コンテストで入賞した黒崎さんの作品

受賞したのは、月のかさと観覧車を捉えた作品。

フォトアーティスト・黒崎宇伸さん:
観覧車自体は変わらずそこに立ってるが、季節は変わるし、人もどんどん変わっていく。その対比が面白いと思って表現している

2019年に初めて撮影した夜の観覧車。ステテコ姿で涼む男性は、かつてミラージュランドの誘致に尽力した1人だという。

春と秋にしか撮れない夕日と観覧車の絶妙な構図や、超望遠レンズで切り取った雪の剱岳と観覧車のゴンドラなど、季節感にこだわり、そこでしか撮れない一枚を追い続けている。

フォトアーティスト・黒崎宇伸さん:
魚津市は海から山が近いので、海を入れた風景と山を入れた風景、人の生活がすぐそこにあるから、色んな表情を撮ることができるので、僕にとっては面白い被写体

観覧車との“夢のコラボ”を写真に

32年にわたり地域のシンボルとして親しまれている観覧車は、海沿いにあるため潮風で劣化しやすく、10月から運転を取りやめ塗装工事に入る。

大規模な“お色直し”を前に、黒崎さんがいま取り組むのが、観覧車と人をテーマにした作品だ。

この日、待ち合わせたのは八尾町諏訪町の胡弓の名手。おわら風の盆での撮影をきっかけに、観覧車での演奏をお願いすることになった。

2人が乗り込んだゴールドのゴンドラは、シャンデリアが飾られた遊び心のある内装。観覧車が一周する15分間の演奏会が始まった。

フォトアーティスト・黒崎宇伸さん:
ぜいたくな時間

八尾町諏訪町おわら保存会・山田誠会長:
初めての経験だから、周りの景色をゆっくり見る余裕はなかったけど、高い所で弾くのも変わってて面白く、楽しい

黒崎さんによって撮影された、侘び寂びを感じる“夜のおわら”の一枚と…。

金色の茶室をイメージしたという観覧車での一枚。オンとオフの対比に面白さがあるという。

黒崎さんの呼びかけに、富山市出身の朝乃山関も応じてくれた。巡業で訪れたこの夏、ふるさとのPRに一役買おうと、東京後援会を通し、夢の撮影が実現したのだ。

地元の小学生で、カエルの生態を研究し魚津水族館でも発表している「かえるクン」と呼ばれる少年と朝乃山関が、観覧車を前にトントン相撲。

「かえるクン」とトントン相撲をする朝乃山関
「かえるクン」とトントン相撲をする朝乃山関

朝乃山関:
いくよ、のこったのこった

国内・国外に観覧車の魅力を発信

9月24日に開催されたイベントにも黒崎さんの姿があった。世界のウイスキーを楽しむ初めてのイベントは、多くの人でにぎわった。

フォトアーティスト・黒崎宇伸さん:
この場所を、きょうみたいに大人が楽しめる面白い場所だと思っているので、県内の人だけじゃなく国内・海外から色んな人が来て楽しんでもらえたらいい。観覧車を世界に発信していきたい

観覧車の写真を通して、ふるさとの魅力を伝える黒崎さん。ここでしか表現できない作品作りにこだわり続ける。

大観覧車は10月から塗装工事に入り、新しい観覧車は2024年春にお披露目される予定だ。

黒崎さんは今後も写真を撮り続け、自身のSNSの他、いずれは個展を開いてその魅力を多くの人に発信したいという。

(富山テレビ)

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