通行量の多い歩道をものすごいスピードで通過する自転車。こうした自転車による歩道の走行が視覚障害者に大きな危険を及ぼしていることが、「イット!」の取材で浮かび上がってきた。
点字ブロックの上を自転車が走行
「ほんの秒単位の話なので、自転車は気をつけている(市原さん)」
「点字ブロックは安全なはずなのに、自転車は恐怖がありますよね(武井さん)」
視覚障害を持つ、市原寛一さんと豊島区盲人福祉協会の武井悦子会長、2人がそろって口にしたのは、自転車に対する恐怖心だ。
この記事の画像(8枚)武井さんは、8月16日に自転車と接触する事故に遭った。仕事の帰り道にJR高田馬場駅に向かい通りを歩いていた武井さんは、自転車と接触し、白杖(はくじょう)が折れてしまったという。武井さんは「正面の方から自転車が来て、私のつえを挟んで、つえを持っていってしまって、つえを折られてしまった」と当時の状況を説明した。
その後、ぶつかった男性は謝罪し、テープと定規で白杖を修復して、駅まで送り届けてくれたという。武井さんは「点字ブロックは安全なはずなのに、そのブロックの上を自転車が走って、つえをられてしまったので、やっぱり自転車は恐怖がありますよね。だから、今でもやっぱり自転車が来ると、つえを持ち上げたり、ちょっと避けますね」と話す。
自転車が白杖を“巻き込み”
岩手県立大学などが視覚障害者を対象に行った調査によると、1年以内に走行する自転車と衝突した回数は、1回以上ぶつかった人が約4割に及んでいた。
さらに、2回と答えた人は15%と最も多く、6回以上という人も5%に上る。
視覚障害者の市原寛一さんもその1人だ。市原さんは、8月28日、池袋駅前の歩道で自転車と接触事故に遭った。
市原さんは、「歩道からポツポツの警告ブロックに乗ったので、次は直線の誘導用ブロックに乗り換えようと思って白杖を大きく振って乗ろうとした瞬間に、つえを自転車で持っていかれました」と事故当時の状況を説明する。
交差点などでは誘導ブロックを探す際に白杖を左右に大きく振るため、その瞬間に自転車の前輪に巻き込まれたという。
この事故で白杖の先端部分は曲がり、地面に接する「チップ」という部分が取れてなくなってしまった。
市原さんは、「(音を)感知できるのが1m、2mくらい前。ぶつかったり、ギリギリの脇を通られたりするのがほんの秒単位の話なので、自転車は気をつけている」と話す。
市原さんは自転車のかごに接触し、左腕を挫傷。病院で全治7日間の診断を受けた。
「自転車は車道が原則」ルールの再認識を
こうした事故を防ぐため、専門家はルールの再認識が重要だと指摘する。
岩手県立大学の元田良孝名誉教授は、「自転車が歩道走るようになったのは、昭和45年からなんです。(その後)方針を変えて自転車は車道が原則というようになった。いまの状況を見てみると、ほとんどの人がそれを理解していない。(世界でも自転車が歩道を走るのは)日本だけです。欧米諸国、どこでもこんなことをやってるとこはない」と述べた。
交通弱者に迫る“シワ寄せ”。市原さんは自転車用道路の整備も必要だと訴えている。
(「イット!」9月26日放送より)