突然の贈り物などで他者を喜ばせようとする、いわゆる「サプライズ」。

この「サプライズ」の影響を調べるため、上智大学の研究者が実験を行った。実験を行ったのは、上智大学総合人間科学部心理学科の山本晶友特別研究員と樋口匡貴教授。

「『その恩恵がなかったら』と想像することで、感謝の度合いは高くなる」という仮説を2つの実験を通じて検討し、その結果を公開した。

「サプライズ」は、「『その恩恵がなかったら』と想像することで、感謝の度合いは高くなる」という仮説が正しいことが前提となる。しかし、今回の研究で、過去の文献レビューを行った結果、この仮説に対する厳密な検証は、まだ行われていないことが示された。

事前の期待によって感謝の度合いは左右されない

そこで研究チームは、「その恩恵がなかったら」という、受益者(=利益を受ける人)による想像が引き起こされる2つの実験を日本の大学に通う学生を対象として行った。

1つ目の実験では、「恩恵を受けると事前に予期していた場合よりも、恩恵を受けないと、事前に予期していた場合の方が、より強い感謝の念を抱く」という仮説を検証した。

具体的には、大学のサークルに入ったばかりの「あなた」に対して、プレゼントが用意されていると予期できるシナリオか、用意されていないと予期できるシナリオのいずれか一方を読むように群分けをして、実際にプレゼントがもらえた想定で、どの程度、感謝の気持ちを抱くかを回答してもらった。

その結果、事前の期待によって、感謝の度合いは左右されないという結果が示唆された。

2つ目の実験では、『恩恵を受けた事後に、恩恵を受けなかったケースを想像した場合の方が、実際に恩恵を受けた状況を再び想像した場合よりも、より強い感謝の念を抱く』という仮説を検証した。

具体的には、図書館に行こうと思っていた時に、今日は閉館日であることを同級生から教えてもらい、無駄足を免れた状況と、欠席した授業で配布されたプリントを同級生がもらっておいてくれた状況を想定し、「その恩恵がもしなかったら」という反実的なシミュレーションを行ってもらった。

結果は、1つ目の実験と同様、事後の反実的なシミュレーションによっても、感謝の度合いは影響を受けなかった。

今回の結果について、「『恩恵をもし受けなかったら』という想像をすることで、感謝の度合いが高まることはないという結果が示唆された」としている。

今回の研究結果は、要するに、プレゼントのサプライズはあまり意味がないということなのか?
プレゼントで感謝の度合いを高めるためには、サプライズの代わりに、どのようなことをすればいいのか?

上智大学総合人間科学部心理学科の山本晶友特別研究員に聞いた。

「サプライズに意味がないとは思いません」

――今回の研究結果、どのように受け止めている?

この研究では、親切にしてもらう前の「もらえないだろうな」という予想と、親切にしてもらった後の「もし、もらえなかったら」という想像が、感謝に及ぼす影響を調べました。

実験の結果、これらの“予想や想像だけ”が感謝に及ぼす影響は、どうやらあまり見られなかった、と受け止めています。

現実には、「もらえないだろうな」という予想にも、「もし、もらえなかったら」という想像にも、他のいろんな要素が絡み合うので、それらが感謝の強さを左右する可能性はあります。


――今回の調査対象は日本人だが、海外の人を対象にしたら、結果は変わってくる?

いかなる研究であっても、その可能性は常にあると考えています。

イメージ(サプライズ)
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――今回の研究結果は、要するに、プレゼントのサプライズはあまり意味がないということ?

サプライズに意味がないとは思いません。なぜなら、現実における多くのサプライズのプレゼントは、受け手に喜んでもらいたい一心で、計画段階から手間暇をかけて、施されるからです。

サプライズにかけられた「手間暇」から、「受け手に喜んでもらいたい」という送り手の気持ちを感じとることができれば、プレゼントの受け手は感謝を感じると思います。


――プレゼントで感謝の度合いを高めるためには、サプライズの代わりに、どのようなことをすればいい?

「この人に喜んでもらうにはどうすれば良いだろう」とよく考えることと、それが伝わるプレゼントを贈ることが大事だと思います。これは、「自分を喜ばせようとしてくれているんだ」と、受け手が感じとれる時に感謝の気持ちが強くなることが、多くの研究で示されているためです。

したがって、サプライズプレゼントであっても、「喜んでもらおう」という贈り手の気持ちが伴うのなら、それは受け手の感謝の度合いを高める可能性があると思います。

逆に、「自分がサプライズしてみたいだけ」「目立ちたいだけ」などの自分本位なサプライズであったら、たとえ、サプライズが成功しても、感謝は強くならない可能性があります。

イメージ(プレゼント)
イメージ(プレゼント)

相手を喜ばせようと思って行う「サプライズ」だが、相手の感謝の度合いが高まらない可能性があることは覚えておきたい。

これからプレゼントを渡すときには、相手の感謝の気持ちが高まらない可能性がある“自分本位なサプライズ”はひとまず避け、相手が喜ぶのはどんな渡し方なのか、よく考えてみてほしい。

<記事で紹介した論文名および著者>
Yamamoto, A., & Higuchi, M. (2023). The effect of simulating the absence of benefits on gratitude: Prior expectations and posterior counterfactual thinking. Japanese Psychological Research
https://doi.org/10.1111/jpr.12463

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。