人手不足に頭を悩ませる警備業界。こうした中、“AI”が交通誘導を行うシステムを静岡県内でも導入しようと沼津市でデモンストレーションが行われ、工事関係者からも期待の声があがった。

交通誘導の常識が変わる!?

AIによる交通誘導の精度や安全性の高さを体感してもらおうと、静岡県沼津市にある自動車学校で警備に関わるデモンストレーションが行われた。

想定は路面等の工事に伴い片側交互通行の規制がかけられた現場。反対車線に滞留していた車の通行が止まると、AIの判断によって、もう一方の車線の案内看板が“自動”で「進んで」へと変わる。

AIの判断で表示を切り替える
AIの判断で表示を切り替える
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これは山梨県の警備会社・KB-eyeが開発したシステムで、規制区間の両端に置かれたカメラが車両や人を検知し、通行する台数や渋滞状況によってAIが看板の信号を切り替えるタイミングを判断する。秋山一也 社長は「映像解析を得意とするAIを使い、どんな車両がいるのか、何台いるのか等を参考に、自動で交通を誘導するシステム」と説明した上で「学習させたデータをもとに実際の警備員と同じような、時として警備員を超えるような判断をし始めている」と胸を張る。

システムについて説明を受ける関係者
システムについて説明を受ける関係者

人手不足に悩む警備業界

今回のデモンストレーションを企画したのは沼津市に本社を置く警備会社・トーセイコーポレーション。県内で初めてこのシステムの実用化を目指していて、この日は警察や行政の関係者も招かれた。

デモンストレーションを視察する関係者
デモンストレーションを視察する関係者

導入を目指す背景には警備業界が抱える悩みがあり、杉山喜乃 社長は「本当に人材が不足している。AIの力を借りなければ、なかなか人だけでは現場をこなしていけない現実がある」と切実な思いを吐露する。静岡労働局によると2023年7月時点の警備・保安の職業の有効求人倍率は7.9倍。全職種の中で最も高い値を記録している。

人手不足に悩む警備業界
人手不足に悩む警備業界

警備業務を発注する工事関係者も慢性的な人手不足を肌で感じていて、加和太建設の天野謙一郎 土木部長は「何人も配置しなければならない時は大変。1社だけでは賄えない場合もある」と話す。

AI警備の導入で省人化が可能に

今回のデモンストレーションでは通常4人ほどの警備員が必要な片側交互通行の誘導を、警備員1人で対応する様子が紹介された。警備員を省人化することによって、有人でしか対応できない複雑な交通警備が必要な現場に警備員を振り分けることが可能になるという。

デモンストレーションの様子
デモンストレーションの様子

視察した通信線や電力線などインフラ設備の構築を担う東栄の岩城法明 社長は「こんなに進んでいるとは夢にも思わなかった」と驚きを隠せない様子で「人出不足の中、いいタイミングでこういうシステムが出てきた。認可され『大丈夫ですよ』とお墨付きがあれば、ぜひお願いしたい。好感触」と述べ、人材派遣やIT支援などを手掛けるシーキューブトータルサービスの杉山幸児 社長も「早く普及して、我々の現場に導入できれば」と前向きな表情をのぞかせた。

既に使用の認可が下りている県も

このシステムは既に山梨県や三重県など4県で導入が始まっていて、土砂崩れなど緊急性が高い災害現場でも稼働している。

山梨県では既に実用化が進む
山梨県では既に実用化が進む

県内で導入するためには警察に道路使用許可を得る必要などがあり、実用化を目指すトーセイコーポレーションの杉山社長も「47都道府県の中でまだ4件のみの認可の段階なので簡単なことではない」と覚悟はしているが、今後も同様のデモンストレーションを実施し「地道に安全性を証明していくことが認可につながっていくのではないか」と話す。

高齢化などにより深刻な人手不足が続く警備業界。人が必要とされる場所で警備員が活躍するためにも、AIの力を活かした新たなシステムに期待が寄せられている。

(テレビ静岡)

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