札幌市東区で2022年10月、自宅アパートで小樽市の当時22歳の女子大学生に頼まれ、首を両腕で絞めて殺害し、遺体の左わきの部分を刃物で切りつけたとして、嘱託殺人と死体損壊などの罪で起訴された無職・小野勇被告(54)。

法廷での小野被告(8月31日の初公判)
法廷での小野被告(8月31日の初公判)
この記事の画像(6枚)

9月4日、札幌地裁で行われた論告求刑公判で、被害者の両親が意見陳述を行った。

父親の意見陳述「20歳になり寿司屋で一緒に酒を飲んだ」

被害者の父親:
私は被害者の父です。娘は私たちにとって最初に生まれた子供です。とてもかわいがり、一度も手を上げたことがないです。そんな子に、よくもあんなことができたなと怒りが込み上げます

法廷の様子(8月31日の初公判)
法廷の様子(8月31日の初公判)

父親:
娘は長女でした。頭もよくて自慢の娘でした。10月2日に就活で行った千葉県から帰ってきて「就職してほしい」と言われたという報告を受けて「やっと就職するんだ」とうれしい気持ちになりました。

事件は、被害者の就職が決まった直後のことだった。

父親:
10月3日「手稲で人に会う」と急遽出かけ、それ以来娘は帰ってきませんでした。娘の将来を無茶苦茶にされて本当に悔しいです

父親「娘は快楽のために殺されたとしか思えない」

小野勇被告の犯行について語る。

父親:
娘は犯人の快楽のために殺されたとしか思えない。(犯人は)レストランなども娘と一緒に行ったのに、死にたい理由を聞いていない。恨みを持っていない人を殺すなんて、おかしい

小野被告
小野被告

父親:
「痛いこと、苦しいことはしない」「楽に死ねる」と娘と約束したのに、首を絞めて殺された。「抵抗しなかった」と言っているが、男性に首を絞められて薬の影響もあって、抵抗できたとは思わない。娘がなくなった今、言ったもん勝ちになっていると思います

さらに初公判の際の小野被告の態度についても指摘。

父親:
犯人は初公判の際12回も笑いました。何がおかしいのか

父親:
娘は服を脱がされ、体に傷をつけられた。今回の事件でもう、めちゃくちゃになりました。狭い町でよくも私たちを有名にさせてくれたなと思います

法廷での小野被告(8月31日の初公判)
法廷での小野被告(8月31日の初公判)

怒りを募らせ、声を震わせる。

父親:
犯人はネットで「人の役に立てた」と書きました。勘違いも甚だしいです

父親:
娘に「死にたい」と言われても止めるべきだった。まだ娘が生きてたら、悪いなりにもうまくやってたと思います。娘を返してほしかった

父親:
犯人は、娘の仏壇の前に手をついて謝ってほしいです。「殺したい」と思うほど怒りでいっぱいです

母親の意見陳述「命さえ奪わなければやり直せた」「厳罰に処してほしい」

そして、被害者の母親も代理人を通じて意見陳述を行った。

母親:
娘は優しい子でした。変わったところもあったけれど、絶対に人を傷つけない子でした。成績がよく、希望の大学に行けた娘を自慢に思っていました。大学1年生の時に友達と上手くいかなかったときもあり、泣きながら私に電話した時もありましたが、その時も授業を投げだしませんでした

勉強に励み、希望の大学進学後も努力を続けていたという被害者。

母親:
娘が「死にたい」と思ったのは、一時の気の迷いだと思います。娘は、事件直前まで歯科医院に通っていました。「死にたい」と本当に思っていれば、歯科医院にも通わないはずです。「死にたい」は誰もが一回は思うことがあるはずです

小野被告
小野被告

小野被告の事件当時の様子に対し、疑問を投げかける。

母親:
「自分はアスペルガーだから、思ったことを全部話してしまうんだ」と娘は言っていました。犯人は、娘は死にたい理由を何も話していなかったと言っていました。娘が何も話していないなんて、ありえません。死にたい理由を聞いていないなんてうそだと思います。理由を聞かずに殺すなんてありえません

母親は怒りを募らせる。

母親:
娘を生かしておいてほしかった。年長者なら「とりあえず生きなさい」と言ってほしかった。犯人は人を殺したかったのでは?知人に娘を殺したことを話すのは、自慢しているように思えた

そして、事件後の生活について語る。

母親:
事件後、私たちの生活は一変しました。ネットには娘が「ヤングケアラーだ、大学でいじめられていただ」あることないことを書かれました。私たちは、噂に反論できず、耐えるしかありません

母親:
私たち家族は、犯人にめちゃくちゃにされました。命さえ奪わなければ、やり直せた。嘱託殺人は軽い罪だから、と思われていては許せない。厳罰に処してほしい

小野被告は表情を変えることなく、伏し目がちに両親の意見陳述を聞いていた。

検察「全ての可能性を奪ったのは悪質で非難に値する」

検察は小野被告の犯行について下記のように指摘した。

・小野被告は犯行当時、抑うつ状態であった可能性は否定できないとしても、うつ病を発症するには至っておらず、被害女性に飲ませる睡眠薬などの効果を強くさせるために事前に酒を購入するなど合理的かつ計画的な犯行であり、完全責任能力を有していた。

・小野被告はSNS上であたかも殺人の経験があるかのように装い、被害者の嘱託殺人の意思を強めさせ、自殺を思いとどまらせることができたのに、理由を確認せず犯行におよび、全ての可能性を奪ったのは悪質で非難に値する。

検察 懲役9年を求刑…弁護人「執行猶予付きの判決を」

検察は小野被告に対し懲役9年を求刑した。

一方、弁護人は小野被告は犯行当時、心神耗弱の状態で計画的なものではなく、被害者女性の強い思いに流されて犯行に及んだとし、執行猶予付きの判決を求めた。

小野被告の最終陳述は…

公判の最後に裁判長から促された最終陳述で小野被告は…

「家族の皆さん、このタイミングで申し訳ありません。大切な娘さんを奪うことになり申し訳ございません。今後何年か分かりませんが墓前に行って頭を下げるつもりです」と被害者に向かって頭を下げた。

判決は9月22日に言い渡される予定だ。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
北海道文化放送

北海道の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。