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肉や魚、野菜の保存、そして小物などを収納したり、持ち運んだりする際に活躍するのがジップロック(R)だ。

ジップロック(R)にはバッグタイプのものと容器タイプのものが2種類ある。特にバッグタイプのものは使用後、捨ててしまっている人が多いだろう。

そんなジップロック(R)が「傘」へと生まれ変わるサステナブルな取り組みが行われているという。どのような流れで傘へと生まれ変わるのだろうか。

リサイクル傘に生まれ変わる!?

バッグタイプのジップロック(R)
バッグタイプのジップロック(R)

サランラップ(R)やジップロック(R)などの開発・販売会社として知られる旭化成ホームプロダクツ株式会社。同社の製品は、食品の保存などを助け、食品ロス(フードロス)を削減し、環境負荷の軽減に貢献してきた。

そんな同社の循環型社会を目指す取り組みとして2020年に開始したのが「Ziploc RECYCLE PROGRAM(ジップロックリサイクルプログラム)」。

今回は、主に小学生を対象に行われた第3弾、ジップロック(R)をリサイクルした素材を使って「傘」を作る「Ziploc RECYCLE PROGRAM × SORAKASA KIT(ソラカサキット)ワークショップ」だ。

2023年8月21日に東京・狛江市役所防災センターで行われたワークショップ。

参加した小学生たちに配られたのは「傘作りキット=SORAKASA KIT」。

このキットの中身は、ジップロック(R)のリサイクル素材からできた「傘のシート部品」と、プラスチック製の骨組みなどで、再生シートは100%ジップロック(R)でできているという。

これを組み合わせて世界に一つだけのオリジナル傘を作っていく。

これがジップロック(R)だったの?

「SORAKASA KIT」を提供する株式会社サエラの西山雄馬さんのレクチャーを受けながら、子どもたちが親とともに傘を組み立てる。

誰もが一から傘を作るのは初めての経験だ。

特に参加者が「これがもともとジップロックだったの?」と驚いていたのが、傘のシート部品。多くの子どもたちが興味津々の様子で、100%ジップロック(R)でつくられた傘のシートを触っていた。

傘の作り方は、骨組みを組み立て、その後に傘のシートを張りつけていく。金属が一切使われていないため、壊れても分解して作り直すことができ、長く使い続けることができる。

こうして傘が完成し、それを手にした子どもたちはうれしそうな表情を見せていた。

最後は、自分の好きなシールを思いのままに貼っていくとオリジナルの傘が完成。

参加した子どもたちは「ジップロックから傘ができるなんて、びっくりした」「(世界に一つだけの傘を作ってみて)すごく楽しかった」と、このワークショップを通してリサイクルを“体感”していた。

子どもたちの傘作りを見守っていた親たちは、

「リサイクルというと、一般には我慢して行うというイメージがありますが、このプログラムを通じて『楽しいリサイクル』があるんだなと感じました」

「普段、ジップロックは最終的に生ゴミを入れて、ゴミ処理袋として捨てていたのですが、今回、ジップロックが回収できることを初めて知りました。これからはしっかり回収に出していきます」

と、保護者も一体となって新たなリサイクルの観点が見出されたようだった。

モノを大切にする感性を育みたい

株式会社サエラ 西山雄馬さん(左)旭化成ホームプロダクツ・マーケティング部 上田悦子さん(右)
株式会社サエラ 西山雄馬さん(左)旭化成ホームプロダクツ・マーケティング部 上田悦子さん(右)

ワークショップ内では、旭化成ホームプロダクツ・マーケティング部の上田悦子さんから、プラスチックゴミ削減に関わる取り組みの説明も行われた。

「私たちは、食べ物の保存など、料理の場面で役に立てるようにと製品開発や便利な使い方の提案などを頑張ってきました。しかし、食べられるはずの食品が捨てられてムダになってしまったり、街中に捨てられたプラスチックを魚や亀が食べてしまったりといった問題が起きています。これらの問題を解決するためにできることは何かと考え、始めたことの一つが『Ziploc RECYCLE PROGRAM』です。それは、おうちで使い終わったジップロック(R)を集めて、違う製品に作り替えることで、プラスチックのゴミを減らす取り組みです」 

子どもたちに向けてわかりやすく解説する上田さんは、このワークショップの開催意義を「資源を大切に使う、モノを大切に使う感性を育み、そして環境にやさしい社会とは何なのかを一緒に考えていけたらと思っています」と伝えた。

ジップロック(R)のリサイクルは身近なもの

「Ziploc RECYCLE PROGRAM」はHPから申し込むことで参加ができる。
https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/recycle/

参加できるのは小学生だけではなく大人も可能で、仲間内での回収場所を職場や学校に指定することで、同僚や友達と一緒に気軽に参加できる。

使用済みジップロック(R)が再生シートに生まれ変わる流れはいくつか段階がある。

回収→集荷→選別→細かく砕き汚れを落とす→乾燥→他の製品に作り替えられる原料の状態(=ペレット)に→傘の生地に相当するシートへ作り替わる。

ジップロック(R)のリサイクル傘は、傘のシェアリングサービス「アイカサ」のスポットにも置かれ、すでにレンタルをすることができるが、今後もより広範な実用化が待たれている。

「Ziploc RECYCLE PROGRAM」の今後の展望

大盛況だった「Ziploc RECYCLE PROGRAM」の第3弾。

このプログラムが生まれた経緯や目的について、旭化成ホームプロダクツ・マーケティング部の山下卓也さんに、フジ・メディア・ホールディングス サステナビリティ推進室の木幡美子が話を聞いた。

旭化成ホームプロダクツ・マーケティング部の山下卓也さん
旭化成ホームプロダクツ・マーケティング部の山下卓也さん

―――「Ziploc RECYCLE PROGRAM」の目的について、改めて教えてください。

「循環型社会の実現」は気候変動対策に必須です。その社会課題に対する私たちのアプローチの一つが「Ziploc RECYCLE PROGRAM」になります。その目的は、まさに参加者のご感想にもあったとおり、ワクワクしながら楽しくリサイクルするという価値の提供です。本プログラムの第1弾では、ジップロック(R)の再利用によって、傘のシェアリングサービスで用いられる傘用のシートを製作。第2弾では、ジップロック(R)をゴミ拾い用トングのグリップに作り替え、それを使って海浜清掃団体などに寄付しました。そしてこのたび実施したのが第3弾の「Ziploc RECYCLE PROGRAM × SORAKASA KIT」です。

―――このアクションが生まれた経緯は何だったのでしょうか。

ジップロック(R)の素材、「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」は汎用性の高い樹脂であるため、何か他の製品に生まれ変わらせることができないかと着想したのがきっかけでこの活動が生まれました。

上田の話にもありましたが、私たちはこのプログラムを通して、人々に「環境について考える」きっかけを提供できればと考えています。

―――最後に、「Ziploc RECYCLE PROGRAM」の今後の展望を教えてください。

ジップロック(R)を再利用したトングでゴミ拾いをするプログラム第2弾の参加者
ジップロック(R)を再利用したトングでゴミ拾いをするプログラム第2弾の参加者

プログラムが始まってまだ3年です。いま、「ジップロック(R)がこういうもの(=傘やゴミ拾いトングのグリップ等)にリサイクルできる」ことがわかってきました。また、その再利用を皆さまに好意的に受け取っていただけることもわかりました。ただし、まだまだ私たちの活動は小さいものです。当然この先は、アクションを大きく広げていきたい。

今回の再生シートは100%ジップロック(R)で作成することができますが、ジップロック(R)はまだ(容器包装)リサイクル法の回収対象にもなっていません。これを求めようとすると、あたり前の話ですが、私たちだけの力だけでは達成できません。ですので、そういった回収の仲間であったり行政の協力者、リサイクルに関わる人たちを一人一人、一社一社つなぎ、その連帯を広げていくことで、社会を変えていくことが大切かなと思っております。

私たちがこれまで培ってきた暮らしの技術を、今日のため、明日のため、その先の未来のために活かしていきたい。それによって未来の子どもたちの笑顔を守るというところを大切にしたサステナブルアクションにしていきたいと考えています。

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